煌の家に泊まるようになって三日が経った。 奏は家に帰らない私を心配して、毎日のようにメールや電話がかかってくる。どれも受け答えしていないが、諦め悪くかけてくる。 「ブロックしろ」 煌はそう言うが、どうしてもそれが出来なかった。 「俺がやってやる。貸せ」 「い、いいわよ!もしブロックして会社まで来られたら厄介だもの」 「その時は俺が追い返してやる」 スマホを奪われそうになり、慌てて背に隠した。 「とにかく、大丈夫だから」とカバンにしまうと、不貞腐れたように眉間を寄せていた。 「あ、そう言えば、今日少し遅くなる」 「了解。ご飯作っておこうか?」 「ああ、頼む。気を付けて帰れよ?」 「煌もね」 二人、見つめ合っていると煌が「ふっ」と照れたように小さく笑みをこぼした。 「なに?」 不思議に思って問いかけてみると、そっと私の椅子の背に手を置き顔が近づいてくる。 「今の会話、夫婦みたいだなって」 「──なッ!」 耳元で囁くように言われ、カッと全身が熱くなった。 言われてみれば確かに、そう思えなくもない会話だった。 「ち、違うわよ!そんな深い意味じゃなくて、えっと……」 「あははは!分かってるよ。ちょっと揶揄っただけだ」 慌てて否定するが、煌は笑いながら頭を撫でるだけ撫でて仕事に戻って行った。 「もお」と怒ったような態度を取るが、大きな手で撫でられた感触が残っていて、体の熱が冷めない。 「ねえねえ、高瀬さんって神谷と付き合ってるの?」 「えぇ!?」 面白そうな話題の匂
最終更新日 : 2025-11-05 続きを読む