躊躇ったのはほんの二秒。すぐに博之の視線が彼女に深く注がれ、熱さに目を逸らせなかった。「君は……」博之は真っ直ぐに見つめてきた。「文月、説明してくれないか?あの男と付き合っているのか?」「私のこと、覚えてないんじゃなかったの?どうしてそんなに気にするのよ。まさか、私のことが好きなの?」文月は冗談のつもりで言ったのだが、博之は少しも動揺する様子を見せず、ただじっと見つめ返すだけだった。逆に文月の方が緊張してしまった。たまらず彼の目を見つめ返して尋ねた。「もしかして……思い出したの?」「記憶を失う前、僕は君のことが好きだったのか?」博之の視線があまりに真っ直ぐで、思わず目を逸らしたくなった。窓の外に視線を逃がしながら答える。「さあね……私にはあなたの心の中なんてわからないわ。でも一つ確かなのは、あなたは厄介事を背負い込んだってことよ」蒼介のことか、それとも自分自身のことか。どちらにせよ、博之を厄介な状況に巻き込んでしまったのは事実だ。「何も言わないの?」数秒待っても博之が口を開かないので、文月はじれったくなって尋ねた。「博之、わざわざ助けに来てくれたの?私のことが心配だった?」「そこまで心配していたわけじゃない。ただ、君があの男と一緒に行きたがっていないように見えたから」あの時の光景を思い出し、博之の心はまだ完全には落ち着いていなかった。どうにも胸のざわつきが収まらず、あの場面を何度も反芻し、一晩中考えた末に、自ら迎えに行くことを決めたのだ。今、再び文月に会い、彼女が自分に向けて手を伸ばしてくれた瞬間、博之の中で答えが出た。文月を信じたい。彼女が何を言おうと、自分の心が望む結末を信じようと思った。「鋭いわね。確かにそう思っていたわ」文月は彼に微笑みかけた。「じゃあ、家に帰りましょうか?記憶を失う前、私たちは一緒に住んでいたのよ」博之がそばにいることで、ようやく心の欠けた部分が埋まっていくのを感じた。誤魔化すことなく、心からの笑顔を彼に向けた。博之はそんな彼女を見つめ、その瞳には隠しきれない感情が揺らめいていた。やはり自分の感覚は間違っていなかった。目の前の女性が好きだ。まるで、初めて会ったあの瞬間に恋に落ちたかのように。家に着く前、文月のスマホに蒼介から狂ったような着信があった。二秒
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