翌朝。私は足首の痛みで目を覚ました。体中も熱を持っているようで、暑くてたまらない。「──…っ、?」ぼんやりとした視界のまま、天井をぼうっと見つめていると、すぐ側に人の気配がした。「加納さん?大丈夫か…?」「──、滝、川さ…けほけほっ」「顔が赤い…凄い熱じゃないか!待っててくれ、すぐに看護師を呼ぶ!」滝川さんは、私の様子がおかしい事に気づき、すぐに枕元のナースコールを押してくれた。熱を測るために、滝川さんが額に乗せてくれた手のひらが冷たくて気持ちよく、私は瞼の重さに耐えきれずにそのまま目を閉じた。どうして、こんな早朝に滝川さんがまだ部屋にいるのかも分からず、私の意識は混濁してしまった。俺がナースコールを押して少し。慌てて看護師や医者がバタバタと慌ただしく部屋にやってきた。「滝川さん…!」「先生。加納さんは高熱を出しているみたいです」「骨折しているからね…高熱を出すとは思っていました。点滴に解熱剤を入れておきます」「よろしくお願いします」医者や看護師が、テキパキと処置をするのを俺はただ部屋の隅で邪魔にならないように見守る。結局、昨日加納さんが気を失うように意識を手放した後も俺は加納さんの婚約者が来るのではないか、とこの個室の隅に備えられている別室で待っていたが、いくら待っても彼女の婚約者は現れなかった。加納さんが婚約者に連絡をしたのは知っている。それにも関わらず、婚約者は全く来る気配がない事に、俺は驚いた。普通、自分の婚約者が事故に巻き込まれただけでも急いで病院に来るもんじゃないのか?それどころか、加納さんは婚約者との間の子を失っている。婚約者にとっても、大事な我が子だろう。信じられない。加納さんの婚約者、清水 瞬の噂はある程度俺たちのような経営者の中で回っている。婚約者がいながら、他の女性にうつつを抜かし、婚約者を蔑ろにしている、とひっそりと言われている。清水瞬の会社は大企業で、業界でもある程度の権力を持っている。そのため、表立って話す者はいない。だが、今回のような事が表に出れば清水家の株はガタ落ちするだろう。(……加納さんも、清水に関わってしまったから)俺はベッドで眠る加納さんにそっと視線を向けた。熱によって額にびっしょりと汗をかき、苦しそうな顔で眠っている彼女が不
Last Updated : 2025-10-04 Read more