私が声も出せずにいると、そのまま無理やり押し込まれ、ドアを閉められてしまう。 「ちょっ、麗奈──!」 私は慌ててドアを開けて出ようとしたけど、私が乗った側のドアはロックがかかっているようで、中からは鍵が開けられなかった。 そうこうしている間に、麗奈が運転席の方に回り込み、車に乗車する。 「麗奈!」 「ああ、もううるさい。少し黙っててよ」 麗奈はぴしゃりと言い放つと、そのままエンジンをかけて車を出してしまう。 私は慌てて背後を振り返る。 私が乗っていた車椅子は、この車が停まっていた場所に放置されている。 そして、持田さんの車は──。 そこで、持田さんの車が先程まで私がいた場所に止まり、慌てた持田さんが運転席から降りてくるのが見えた。 けど、見えたのはそこまでで、麗奈が運転するこの車は、方向転換をして出入口に向かってしまった──。 ◇ 持田の顔は、さあっと真っ青になった。 その場で周辺を確認し、離れた所にぽつんと車椅子だけが残されているのを見て、持田すぐにポケットからスマホを取り出した。 目的の人物──滝川の名前を表示し、すぐにかける。 すると、数コールも呼び出さない内にコール音が止み、電話が繋がった。 「滝川社長、大変申し訳ございません!!」 電話が繋がるなり、持田の焦った声が滝川の耳に届き、滝川は「どうした?」と聞く言葉を止めてすぐに言葉を返した。 「駐車場、です!地下駐車場です!」 言葉少なに電話が切れ、持田はだらりと腕を下ろした。 「加納さん…私の不注意だ…油断した…。清水瞬が社長に会いに来た、と報告を受けていたのに…っ」 持田は自分の顔を両手で覆う。 心が使っていた車椅子を回収し、大人しく地下駐車場の入口で待っていると、駆ける足音が聞こえてきて、持田はぱっと顔を上げた。 通路を走ってきている滝川の姿が見え、その大分後ろに遅れて間宮が着いて来ている。 滝川は持田の姿を見るなり、口を開く。 「持田さん!清水瞬はまだ会社にいる!加納さんを連れ去ったのは恐らく柳麗奈だ!」 「…!ならば、加納さんの住んでいたマンションでしょうか!?」 「恐らく。柳麗奈は滞在していたホテルをチェッ
Last Updated : 2025-10-27 Read more