見物していた近所の人たちは、ひと通り騒いだあと、その場を離れていった。庭には、再びひっそりと静けさを取り戻す。由奈は祐一の腕を振りほどき、久美子のそばへ歩み寄った。「もうみんな帰ったわ。これ以上、演技する必要もないでしょう。祐一、ここはあなたが来るべき場所じゃない、もう帰って」祐一は視線を落とし、指先に残る由奈の体温を確かめるように、しばらく黙り込んでいた。やがて低く口を開く。「俺が帰ってもいいが、彼も一緒だ」彰はその言葉に、ただ薄く笑うだけで、答えなかった。「彰さんは、うちの客人よ。あなたの指示に従う義理はない」「由奈――」祐一は彼女を見据え、名だけを呼んだ。だが、その先の言葉は続かなかった。久美子が一歩前に出て、由奈をかばうように立つ。「祐一さん。彰くんは、私が招いたんです」その声には、疲労と悲しみ、そして消しきれない憤りが滲んでいた。「主人の葬儀の間、ずっと力を貸してくれました。そのお礼に、食事に誘っただけです。由奈の父親は、もういません。どうか彼に免じて、池上家を見逃していただけませんか。この家には、もう私しか残っていないんです……それでも、私まで目障りで、始末しなければ気が済まないのですか?」祐一の胸に、重たいものが沈み込む。表情を強張らせたまま、しばらく沈黙が落ちた。やがて、眉間の力がわずかに緩む。「……お義母さん。お義父さんの件については、申し訳なく思っています。必ず、真相は突き止めます」「――どうぞ、ご自由に」久美子はそれだけ言い残し、家の中へ入っていった。由奈も後に続く。振り返ることは、最後までなかった。彰は祐一の横を通り過ぎる際、ちらりと視線を向け、挑発するように微笑んだ。祐一の目に、冷たい光が宿る。……家の中では、久美子がキッチンに立ち、料理の支度をしていた。由奈も隣に立って手伝う。「そのうち、浩輔を転院させましょう」久美子は包丁を動かしながら、不安そうに言った。「前はね……お母さんが軽率だった。あの人の提案を受け入れて、浩輔を預けてしまった」声が震え、目元が赤くなる。久美子は慌てて顔を背け、涙を拭った。「今は、すごく怖いの。あの人が、浩輔に何かするんじゃないかって……」滝沢家相手に、池上家など到底太刀打ちできない。さっき庭先で言った強い言葉も、必死に自
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