正午過ぎ、真由美は娘の奈々美を連れ、華沢私立病院を訪れていた。ここは滝沢家が経営する病院であり、滝沢家の令嬢である奈々美の顔を知らない職員はほとんどいない。「真由美様、奈々美様」受付の看護師がすぐ二人に気づき、にこやかに応対する。「本日はどうなさいましたか?」奈々美は顎をわずかに上げ、当然という顔で答えた。「母と一緒に、中道さんとお母様にご挨拶に来たの」看護師は一瞬言葉に詰まり、気まずそうに視線を泳がせた。「それが……中道様とお母様が、ちょうどお出かけになられまして」「は?」奈々美の表情が一気に曇る。母親のほうを振り向き、不満を隠そうともしない。「お母さん、ひどくない?私、今日来るってちゃんと伝えてたのに。もしかして、避けられてる?」智宏と初めて会った瞬間から、彼女は心を奪われていた。彼以外と結婚するつもりはない。それに父も、中道家との縁談には前向きだ。まだ正式な返事はないとはいえ、智宏にふさわしい女性など、自分以外にいるはずがないと、奈々美は疑っていなかった。真由美は眉をひそめ、娘をたしなめる。「奈々美……滝沢家の娘なんだから、もう少し落ち着きなさい」実の娘だ。性格など、分かりきっている。この気の強さは、普通の男性でも持て余す。ましてや中道家のような名家の御曹司なら、なおさらだ。「だって私、滝沢家の娘よ?」奈々美は母の言葉をまったく気にしていなかった。「私以外に、彼に釣り合う人なんていないんじゃないの?」生まれたときから、欲しいものはすべて手に入ってきた。今さら我慢など、できるはずがない。真由美は小さくため息をつき、看護師に微笑みかける。「ちなみに、どちらへお出かけになったか、聞いてないかしら?」「いえ……」看護師は首を横に振り、ふと思い出したように続けた。「ただ、お二人だけではなく、女性がご一緒でした。中道さんの秘書が、その方を『池上さん』と呼んでいるのが聞こえました」その瞬間、奈々美の顔色が一気に沈む。――池上?自分が狙っている男に手を伸ばすほど、生意気な女がいるものだ。一方その頃、由奈は智宏と恭子とともに、病院併設の商業施設にいた。二階までは通常営業だが、三階と四階はすべて貸し切り。人混みを嫌う恭子を気遣い、智宏が手配したのだった。由奈は首元を覆う薄手のハイネックのシフォンブラウスを着ている。昨
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