由奈と紬、澪の三人は同じテントに入った。中は広く、あと二人くらいなら余裕で眠れそうな広さだ。やがて澪が寝息を立て始めると、起きているのは由奈と紬だけになる。紬はふいに寝返りを打ち、小声で囁いた。「由奈お義姉ちゃん」由奈も顔を向ける。「なに?」紬は少し迷うようにしてから言う。「もし――あくまで、もしもの話だけど。祐一兄ちゃんと仲直りしなかったら……白石さんと付き合ったりしてた?」「……どうしてそのことを?」由奈は首を傾けた。「最近、白石先生の名前よく出てきますね」「そ、そうなの?」紬はごまかすように体の向きを戻し、テントの外を見た。「別にそんなことはないと思うけど」由奈は微笑むだけで追及しない。「たとえ祐一と仲直りできなかったとしても、白石先生と付き合うことはないかな」「どうして?」紬は素直に首をかしげる。「いい人なのに」由奈は静かに答えた。「『いい人』の意味って、人によって違うでしょ。私にとって白石先生は大切な友達に近い存在であって、恋愛とは少し違うんです。もしいい人だから付き合うっていう理屈なら、私に親切にしてくれる人はみんな候補になっちゃいますよね」紬は言葉に詰まり、小さく口を尖らせた。「……そこまでは考えてなかったな」由奈は逆に問い返す。「じゃあ紬さんはどう思うんですか?白石先生のこと」「え?私は……まあ……いい人だとは思いますよ」由奈は意味ありげに笑った。その笑みに紬は慌てる。「なに、その顔」「応援してるよ」由奈はそう言って頭元の小さなライトを消した。「私はもう寝ますね。おやすみなさい」その直後――紬のスマホに一通のメッセージが届く。【コート、いつ返してくれるんですか?】画面を見た瞬間、紬の心臓が跳ねた。どう返せばいいのか分からない。深呼吸して気持ちを整え、しばらく悩んだ末にようやく返信する。【明日返す】それ以上返信は来ることがなく、紬はそのまま眠りに落ちていった。……翌朝、一行はキャンプ地をきれいに片づけ、ゴミもすべて回収してから、それぞれ車で帰路についた。由奈と智宏が青ヶ丘の家へ戻ると、玄関の前で智宏が足を止めた。振り返って由奈を見る。「キャンプの件、滝沢社長に説明しなくていいのか?」由奈は一瞬きょとんとしたあと頷く。「後でちゃんと話しますから、大丈夫です」智宏は
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