All Chapters of 徒に過ごした六年間――去り際に君の愛を知る: Chapter 721 - Chapter 722

722 Chapters

第721話

浩輔は何が起きたのか理解できないまま立ち尽くしていた。だが次の瞬間、ラウラが由奈のコートの襟元を乱暴につかみ上げる。その力は凄まじく、由奈の体が大きくよろめいた。「姉さんを離せ!」我に返った浩輔は叫びながら駆け寄った。しかしラウラは躊躇なく警棒を振るう。鈍い音とともに警棒が浩輔の胸を直撃し、彼は数歩後ろへたたらを踏んだ。そのときだった。駆け込んできた卓巳が浩輔の体を支えると、すぐ安全な場所へ押しやる。そして靴箱の上に置かれていた傘をつかみ上げ、そのまま鋭く振り抜いた。警棒がラウラの手から弾き飛ばされる。「っ……!」ラウラは苦痛に顔を歪めた。由奈を拘束している余裕などなく、慌てて手を離して距離を取る。「姉さん!」浩輔はすぐに由奈のもとへ駆け寄り、その腕を引き寄せた。「大丈夫か?」「う、うん……」由奈はまだ動悸が収まらないまま頷き、卓巳とラウラへ視線を向ける。一方のラウラも、自分が厄介な相手に当たったことを理解したらしい。痛む手首をさすりながら苦笑した。「へえ。なかなかやるじゃない」「お前が弱すぎるだけだ」卓巳は鼻で笑う。「その程度の腕で乗り込んでくるとか、送り込んだやつも相当なおめでた頭だな」ラウラは意味を理解した途端、顔をしかめた。そして不満げに叫ぶ。「あなた――!この国の人間はみんな卑怯だって聞いてたけど、本当だったのね!」「おっと、負けそうになったら今度はそれか?」卓巳は呆れたように肩をすくめた。「便利な言い訳だね」そう言うと、今度は浩輔へ向き直る。「少しは懲りたか?知らない人間を簡単に家へ入れるなってことだよ。特にこういう、人を騙すのが得意そうな女はな。僕が怪しいと思って見張ってなかったら、今ごろどうなってたか分からないぞ」浩輔は言葉を詰まらせた。「ご、ごめんなさい……姉さんの友達だって言ってたから……」そこまで言うと、深く俯く。「ごめん、姉さん。俺のせいで危ない目に遭わせるところだった」「大丈夫よ」由奈は首を横に振った。「次から気をつければいいから」そう言ってから、卓巳の隣へ歩み寄る。そしてラウラを真っ直ぐ見据えた。「誰の差し金ですか?」「それは言えないね。別に私も、あなたを傷つけるつもりはなかったけど?」ラウラは首を傾げ、口元には人を食ったような笑みが浮かんでいた。「ただ、
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第722話

影山グループ――祐一と沙耶子は対峙し続けていた。やがて祐一のスマホ画面が点灯する。届いたメッセージを確認した瞬間、それまで張り詰めていた空気がわずかに緩んだ。「ここまで話を聞いてきましたが、私に影山家への訴訟を取り下げて欲しい。それがあなたの望みですよね?」沙耶子はその質問を正面から答えなかった。「あの事故はね、たとえ私たちが関わらなくても、滝沢将吾が何かしら細工をしていた。私たちはただ、あの人の望みを後押しして、欲しい結果を手に入れさせてやっただけだ」「なるほど」祐一は低く笑った。「つまり、自分たちには罪がない、と?」そう言いながら姿勢を正し、組んだ両手をテーブルの上に置く。その顔から笑みがすっと消えた。「私はそうは思いません」沙耶子の表情が険しくなる。「どうしても影山家に責任を取らせるつもりなら、覚悟をしておくことだ。何せ、滝沢家も無傷では済まされないからね」「私を脅かしても無駄ですよ。さっき言いましたよね」祐一の声は氷のように冷たかった。「この件に関わった人間は――一人残らず責任を取らせると」「滝沢祐一!ふざけるのも大概にしなさい!」激怒した沙耶子は、テーブルの上のティーカップを薙ぎ払った。甲高い破砕音が室内に響く。だが祐一は眉一つ動かさない。ゆっくりとジャケットの襟を整え、静かに立ち上がった。「どうしても私とやり合うつもりなら、お好きにどうぞ。たとえ取り返しのつかないことになっても、私は祖父を見送った時と同じように――あなた方二人の最期も、きちんと看取らせてもらいますから」沙耶子の拳が震えた。胸が激しく上下し、怒りで顔色が変わっている。祐一はそんな彼女を一瞥することもなく、麗子を連れて会議室を後にした。――交渉は完全に決裂した。……祐一たちが去って間もなく、ラウラが戻ってきた。服も髪も乱れ、どこか狼狽えた様子だ。険しい表情の沙耶子を見て、それから出口で見かけた高級車を思い出し、状況を察したらしい。彼女は頭を下げた。「申し訳ありません、お母さん。計画が失敗しました」その言葉を聞き、沙耶子はようやく先ほどの祐一の余裕の理由を理解した。そして苦々しく息を吐く。「失敗したなら仕方がない。私があの人を甘く見ていたよ」……その後数日、和恵の事故について警察側の捜査が続いていた。関連の
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