淳平が女子寮を訪ねたのは初めてではなかった。彼の姿が見えれば、誰もが「心愛に会いに来たのだ」とわかるほどだった。エミーは、そんな心愛に少なからず嫉妬していた。自分が必死に手を伸ばしても手に入らないものを、彼女は苦もなく手にしてしまう。そのくせ、誰にも媚びようとせず、いつも気高く、近寄りがたい。――だからこそ、癪に障る。周囲の迷惑も考え、心愛は仕方なく寮を出て、会いたくもない相手の前へ向かった。淳平は彼女の姿を見るなり、開口一番に問いただす。「ライブ配信を始めたって本当か?」心愛は表情ひとつ変えずに答えた。「そうだとしても、あなたには関係ないでしょ」「関係あるに決まってるだろ!」淳平の声が一段高くなる。「お前は俺が見込んだ女だ。金が必要なら俺に言えばいいだろ。なんでわざわざ配信なんかするんだ?配信者なんてネット乞食と同じだ。顔を売って金を稼ぐくらいなら、いっそ俺と付き合えばいいじゃないか」その場へエミーが割って入り、心愛の腕をそっと引き寄せながら、甘えた声で場を取りなした。「まあまあ、松本さん、そんなに怒らないでください。心愛にも心愛なりの考えがあるんですから」そう言ってから、わざとらしく心愛へ向き直る。「でも心愛、本当にお金に困ってるなら、家を貸し出す必要なんてなかったじゃない。松本さんに相談すれば済んだ話でしょう?」「……何?」淳平が鋭く心愛を見た。「家を人に貸したのか?」心愛は思わずエミーを見つめた。まさか彼女が、淳平に家のことを話すとは思ってもいなかった。彼女はエミーの腕を振りほどき、淳平を真っ直ぐ見据える。「松本さん。自分の手でお金を稼ぐことは、恥ずかしいことだなんて、私は思っていません。たとえネット乞食だと言われても、あなたと付き合うくらいなら、今の方がずっといいです」言い切ると、そのまま踵を返して寮へ戻っていった。人前で顔を潰された淳平の表情は、見るからに険しくなる。その様子を見たエミーは、すぐさま彼の隣へ寄り添い、甘えるような声で慰めた。心愛が去っていった方向をちらりと見やると、その目には一瞬だけ得意げな光が宿り、すぐに柔らかな声で淳平を慰め続けた。「松本さん、あまり気にしないでください。心愛は昔から意地っ張りなんです。まだあなたの気持ちに気づいていないだけです
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