「違うわ」明里が言った。「私、離婚するつもりなの。離婚協議書ももう準備してあるのよ。お正月が明けたら、すぐに手続きするから」「本当に?」明里は頷いた。「本当よ」「私と隼人は契約結婚なのよ」陽菜が不意に切り出した。「形だけの夫婦よ。彼は私に一度も触れていないわ。私が潤さんを好きだと知っているから、触れることなんてできないの」明里は眉をひそめた。――そういうことだったのか。「潤さんは私との婚約を許してくれなかったけど、彼の傍にいたくて……他に方法がなかったの」と陽菜は続けた。明里はかすかに笑みを浮かべた。「潤さんはいつだって私を大切にしてくれるわ。私が何をしても、全部許してくれるの」明里はもう、これ以上聞きたくなかった。「そういう話は、私には関係ないことよ。私のことだけ、秘密にしてくれればいいわ」「別に自慢したくて言ってるんじゃないのよ。あなたは自慢に聞こえるかもしれないけど、潤さんが私に優しくしてくれるなんて、私にとっては当たり前のことなのよ。ただ一つ、わかっておいてほしいの。二宮家の長男の奥様という肩書以外、あなたには私が羨むようなものなんて何一つないってこと、それだけは」「安心して。この肩書、すぐにあなたに返すから」「それならいいわ」陽菜は再び明里の腹に視線を落とした。「約束は守ってね。早く中絶して、早く離婚すること。それから、病院に行く時は私も一緒に行くわ」信用されていないのだろう、と明里は思った。明里は頷いた。「ええ」中絶すると言ったのは、陽菜に信じさせるための嘘だ。離婚さえすれば、すぐにここを離れる。そうすれば陽菜も、中絶したかどうかなど追及してこないはずだ。陽菜に妊娠を知られたのは、想定外だった。明里はこれ以上、想定外のことが起きてほしくなかった。けれど時には、どうしようもない偶然というものが訪れる。その夜、料亭から豪華なお正月料理が届けられ、湊の音頭で一家は和やかな雰囲気に包まれた。ただ、最近の明里は体調が優れず、腹が満たされるとすぐに眠気に襲われてしまう。他の皆がテレビを見たり電話をしたりしている間、明里は二階へ上がって休むことにした。ベッドに入ると、まず年長者や友人たちに新年の挨拶メッセージを送り、それからしばらくニュースに目を通すうち、自然と眠気が忍
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