「おい!どういうつもりだよ?勝手に帰るなよ」追いかけてきた啓太が、背中に声を浴びせる。「買い物に行く」潤は短く答えた。「こんな時間に何を買うんだよ。店なんてとっくに閉まってるぞ!」潤の足が止まった。「……閉まってる?」「決まってんだろ。この時間に開いてんのは、せいぜい、いかがわしい店くらいだろ」啓太は隣に並ぶと、呆れたように訊ねた。「で、何が買いたいんだ?」「明里に、プレゼントを」「お前ってやつは、本当に……」啓太は深く、重い溜息をついた。「……いつものブランドの担当に電話して、店を開けさせる」「そんなこと、できるのか?」「俺はあそこのVIP客だからな。俺が行くと言えば、シャッターを下ろした後でも喜んで迎えてくれるんだよ」歴代の彼女たちに貢いできたおかげで、啓太はハイブランドの扱いを熟知している。何も知らない潤とは比べるまでもない。啓太は手早く連絡を済ませ、スマホをポケットにねじ込んだ。「お前、彼女の好みも知らないんだろ?だったら高いものを選んどけ。女ってのはな、目の前に宝石やバッグを積まれれば、コロッといちころな生き物なんだよ」深夜にもかかわらず、男二人はブランドショップへ足を踏み入れた。店長とスタッフたちが、恭しく二人を出迎えた。急な呼び出しにも嫌な顔ひとつせず、二人のためだけに店を開けたのだ。金さえ積めば、たいていの無理は通る。明里が借金の返済に頭を悩ませているその裏で、夫は彼女のために湯水のように金を浪費しようとしていた。潤は何も分かっていなかった。啓太のほうがよほど女心を心得ており、今シーズンの新作の中から、潤が気に入り、かつ明里に似合いそうな品を次々と見繕っては、店員に包ませていく。「うちの母親クラスのVIPになるとさ、新作が出るたびにブランド側が直接自宅に届けてくれるんだぜ」啓太が得意げに言う。潤も、それは名案だと思った。「ていうかお前、今まで本当に気にしてなかったんだな。誕生日とか、結婚記念日とか……プレゼント贈ったことないのか?」啓太の問いに、潤は絶句した。その反応を見て、啓太は呆気にとられたように目を見開いた。「まさか、全部スルーしてたのか?」図星だった。潤は本当に、何も知らなかったのだ。「お前なぁ……」啓太は呆れ果てて言葉を失った。「口では好きだなんだと
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