明里は車を降り、足早に歩み寄ってきた裕之に軽く挨拶をしてから、朱美の腕をそっと引き寄せた。「富永さん、お母さんのこと、よろしくお願いします」「ああ、任せてくれ」裕之はほんの少しだけ表情を和らげた。「明日は休みだから」朱美が横目で彼をちらりと睨んだ。明里も少し驚いたように目を丸くした。「それは珍しいですね。じゃあ、ゆっくり休んでください。それと富永さん、お母さんが……お話があるそうです」明里を見送った後、裕之は朱美の肩を抱き寄せるようにして、建物の中へと促した。「寒くないか?そんな薄着で」「こんなに着込んでいるのに。布団にでもくるまって歩けって言うの?」「どこが厚着なんだ」裕之の大きな手が、朱美の腰のあたりにそっと添えられた。「こんなに薄い布きれ一枚で」本当のところ、朱美は少しも寒くなどなかった。けれど裕之はまるでお節介な小姑のように、いつも彼女の服に口を出し、タイツを穿いていないと本気で怒るのだ。朱美は呆れて苦笑いするしかない。部屋に入るなり、裕之はソファに腰を下ろした彼女の前にしゃがみ込み、ズボンの裾を少しだけめくり上げた。「タイツはどうした?」「地下の駐車場から車に乗って、ここまで数歩歩いただけよ。全然寒くないわ」朱美は苦り切った顔で言った。「足首が冷えるだろう」朱美は手を伸ばし、彼の体を引っ張り上げた。「もういいから、あなたもちゃんと座って」裕之は言われるまま彼女の隣に腰を下ろすと、今度は彼女の足を持ち上げて自分の膝の上に乗せ、両手で足首をすっぽりと包み込んだ。温もりがじんわりと広がってきた。朱美は首を傾け、彼の横顔を見つめた。「来てよかったでしょう?」裕之は滅多に感情を表に出さない男だが、この瞬間ばかりは隠し切れていなかった。彼はこくりと一つ頷いた。「君が来なくても、明日は俺から会いに行くつもりだったんだ」「会えないって言ったはずだけど」「押しかければ会えるだろう」「厚かましいにもほどがあるわよ」朱美は小さく笑った。「子どもたちに笑われるわよ」「俺が惚れた女を追いかけて、何が悪い。それに、アキだって笑ったりしないさ」「口だけは達者なんだから」「それより」裕之は真剣な眼差しで彼女を見つめ返した。「どうして急に来たんだ。アキが、何か話があると言っていたが」「裕之……」朱美
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