心から心配してくれる鹿耶の顔を見て、水琴は困ったように微笑み、辛抱強く説明するしかない。「鹿耶。私が離婚を選んだってことは、もう鷹司臣のことは吹っ切れたってことよ。一生一人でいるつもりはないけど……でも、今の私には、また誰かを好きになれるような……そんな気持ちにさせてくれる相手は、まだいないの」「そっか……」その言葉に、鹿耶はひとまず安堵のため息をついた。……でも、と彼女は思う。あの神レベルのイケメン、高遠灼也ですらミコトの心には響かないっていうのに。だったら尚更、昔のミコトがどうして鷹司のあのクズを好きになったのか、本気で謎だわ。……翌日は朝から出勤のため、昨夜、鹿耶はあまり長居はしなかった。片付けを手伝うと、すぐに帰っていった。翌朝、水琴は早くに目を覚ます。臣と結婚していた数年間、鷹司家の人間からは「家にいて良妻賢母として夫と舅姑に尽くすのが務めだ」と言われ続けてきた。今、こうして再び自分の仕事を持てたことに、心が弾むのを抑えきれない。借りたマンションから大学までは、そう遠くない。気持ちの良い朝の空気の中を歩いて大学の正門までたどり着き、いよいよ始まる久しぶりのキャンパスライフに胸を躍らせた、その時だった。甲高い、ヒステリックな声が、突然背後から突き刺さる。「水琴!?あんた、なんでこんな所にいるのよ!」振り返ると、案の定、そこには驚きと侮蔑に満ちた鷹司雅の顔があった。水琴は小さく眉をひそめ、相手にせずそのまま通り過ぎようとする。しかし、雅が彼女を見逃すはずもなかった。ずかずかと大股で歩み寄ると、水琴の行く手を塞ぐように立ちはだかった。「聞こえないフリしてんじゃないわよ!聞いてんの!なんであんたがここにいるわけ!?A大学があんたみたいなのが入れる場所だとでも思ってんの!?」雅にとって、水琴を見下すのは当たり前のことだった。臣と水琴が離婚する前も、そして離婚した今も、その関係性は変わらないと信じきっている。ただ、今の水琴は、もはや彼女の相手をしてやる気など微塵もなかった。「どいて」水琴は肩にかけたバッグのストラップを握り直し、温度のない、平坦な声で言い放つ。その態度に、雅の顔が怒りで引きつった。まさか、あの水琴が、自分にこんな口答えをするなんて!昔は、犬のように従順だったくせに。「水琴、いい気になっ
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