この一件は瞬く間に学内を駆け巡り、噂は尾ひれをつけて一人歩きを始めた……噂に名高いあの高遠灼也が、まさかA大学のキャンパスに現れるなんて。しかも、あの静沢先生と知り合いで、先生の潔白を証明するためにわざわざ駆けつけたと囁かれているのだ。冷静に考えてみれば、もし本当にただの友人関係だったら、超多忙なあの人が自ら出向いてくるだろうか。秘書の一人でもよこせば、簡単に片付く話のはずだ。ということは、やはり二人の関係はただならぬものなのだろう。それにしても、静沢先生と高遠灼也が並んで歩く姿は、ため息が出るほどお似合いだった。あの二人がもし本当に結ばれたら、生まれてくる子供は一体どんな神がかった美貌になるんだろう……!?学内掲示板から、水琴に関する誹謗中傷のスレッドは跡形もなく削除されていた。それに取って代わったのは、水琴と灼也が並んで歩く一枚の写真。穏やかな時間がそこだけ切り取られたかのような光景だった。コメント欄は、早くも二人をカップルとして推す声で溢れ始めている。もっとも、当の本人たちがそんな状況を知る由もなかった。その頃、ある教室では──佳乃が大学に乗り込んできて水琴を陥れようとした一件は、すっかり学生たちの知るところとなっていた。数人が、雅へあてつけるようにわざとらしく視線を交わし、ひそひそと囁き合う。「ほんっと、呆れちゃうよね。自分の息子が不倫したくせに、元のお嫁さんを悪者扱いするなんて。慰謝料と家を取り返したいだけでしょ。あんな姑、誰が当たっても不幸になるだけじゃん」「ほんとそれ。あんな姑がいるくらいなら、身寄りのない人と結婚した方がよっぽどマシだって。静沢先生もとんだ災難よねぇ」「出回ってる動画、見た?マジであり得なくない?やっぱり金持ちってセコいんだね。たった三年の青春の対価で、家とお金を渡すのなんて当然なのに……」「あんたたちに何がわかるっていうのよっ!」ついに堪忍袋の緒が切れ、雅は勢いよく立ち上がった。バンッ!と教科書を机に叩きつけ、噂話に興じていた学生たちを憎々しげに睨みつける。あのクソ女……!胸のうちで毒づく。いったいどんな手を使って世論の風向きを変えたというのか。お母様が直々に出向いても効果がないどころか、逆に自分たちに世間の矛先が向いてしまった。このことがお兄様の耳に入ったら、きっと怒られてしまうわ……
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