会場は一時、収拾のつかない騒然とした空気に包まれた。つい先刻まで眩いほどに輝いていた栄誉は、たった一瞬にして足元から音を立てて崩れ去った。香凛は気性が激しく、一度切り捨てると決めた相手には微塵の容赦も持ち合わせていない。紬はその喧騒の中心に立ち、眼前に広がる光景をただ静かに見つめていた。まるで深い霧が晴れていくように、視界が澄み渡っていく。長年、胸の奥底で澱のように溜まっていた重苦しい感情が、この瞬間、少しずつ溶けていくのを感じていた。これほど公の場で事実が白日の下に晒された以上、次の一手を確実に打てるはずだ。少なくとも、かつて母の顔に塗られた理不尽な「汚点」を、これから少しずつ拭い去っていくことができるのだ。そして咲が支払う代償は、今日の生き恥だけで終わるはずがない。この先、彼女はもっと巨大で残酷な現実と向き合わされることになる。どっと押し寄せる疲労感を感じながら、紬はふと振り返った。すると視界の端に、波立つ人だかりの向こうで背筋を伸ばして立つ慎の姿が映り込んだ。不意に視線が交錯する。紬は拳の力をふっと抜き、口元に静かな嘲りの笑みを浮かべた。あの絶対的な権力を持つ彼でさえ、今回の事態は力ずくでねじ伏せられなかったのだ。さぞかし苦慮していることだろう。彼女はすぐさま踵を返し、笑美の待つ方へと歩み去っていった。慎はそこでようやく視線を外した。傍らに控えていた陸が、未だに信じられないという顔でしばらく思案したのち、おもむろに口を開いた。「表立って動くのは、控えるべきだったのでは?こういう話は裏に回って穏便に処理できたはずなのに、今この場で堂々と園部さんの側に立ってしまっては……」世間からどんな非難を浴びるか知れたものではない。取り乱す寧音をその場で安心させる以外に、一体なんのメリットがあるというのか。昔であれば小さな問題で済んだかもしれないが、今は状況が違うのだ。「先に戻ろう。寧音を送っていく」慎は陸の肩を軽く叩き、弁明の類いは一切口にしなかった。陸は無意識のうちに、後ろに立つ仁志を振り返った。「慎が、あんなにも……情に絆されるようになったのは一体いつからだ?」慎は本来、完全に血の通っていない冷血な人間だった。その手腕は常に容赦がなく、幼い頃からずっとそうやって生きてきたのだ。そ
Read more