ここは忍びの里、影虎の里。大和の国と言われる中でもその場所は誰にもわからない。住んでいる我々すらも理解していない。 私の名は‘ヒバリ’。全体的に地味なので主な役割は諜報活動でも屋根裏などで耳を澄ますこと。 私には妹がいる。‘スズメ’。彼女は見た目から妖艶で目立つので諜報活動は私のようにコソコソとしたものではなく、堂々と夜会などに出席しその場で情報を得る。時には男性にその体を…ということもあるらしい。詳しいことは聞いたことがないが。 私にはできないことを彼女がしている。 里にはもう、女性が私達姉妹2人しかいないので私は次期族長の婚約者という立場にいる。私のような地味な女が婚約者で申し訳ない気でいる。 私とスズメと次期族長コトラは幼馴染で、よく3人で遊んだり、修行をしたりしていた。スズメは昔確かに、「大きくなったら、コトラと結婚するんだー」と、言っていた。私は微笑ましくその光景を見ていたのだが。でも―――。 ある日突然、長に呼び出された。「次期族長と婚約破棄をするように。次期族長の婚約者には貴殿の妹が決まっている。貴殿の妹は次期族長の子供を妊娠していることがわかった。貴殿は貴殿の妹の補佐に回るように」 そのように長から言われた。里の長からの言われた、というか命令だ。 ―――妹が私の婚約者の子供を妊娠している?私はその妹の補佐を? 私は何のためにこの里にいるのだろう? これまでさんざんこの里のためと思い働いてきた。 里の皆ともよい関係を築いていたと思う。 ここに来て、次期族長と妹の裏切り? そのうえ、次期族長の子供だからとその妹を補佐しないといけないの? 私は夜の闇に紛れて‘里抜け’をした。 抜け忍となり、命を狙われようともその方が生きている感じがする。 翌朝、影虎の里ではちょっと騒ぎとなった。 『ヒバリが抜け忍となった』と。「嫌だ。‘ヒバリ’ってばすぐ感傷的になって、悲劇のヒロイン?里抜けなんかしてすぐに刺客に殺されちゃうわよ。私だったら、その方が嫌だなぁ」 妹の言葉も実はすぐ傍で聞いていた。 私が誰のせいでいなくなったのか、全く考えもしない発言に私は流石にもうどうでもよくなった。 このまま本当に里を出ていこう―――。
Last Updated : 2025-10-01 Read more