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All Chapters of Cyberlimit: Chapter 11 - Chapter 13

13 Chapters

11話 闇の作った道を誘導する幻狼

ミーシャのコレクションとして保管されているユメはカプセルの中で存在保っている。この姿を銘刀に見せる訳にはいかない。ゾンビ化の進行を遅らせる為に複数の薬を投与し、観察をしている。研究者の一人、塹壕はユメに対しての権限を一任されている。彼女は菜園として行動を示したユメに鎮静剤《ちんせいざい》を打つと銘刀へとある人物を使者として派遣する。 用心棒でもあり、協力者でもある。沢山の立場を含みながら邪魔する人間を排除する要因として使っている幻狼《げんろう》だった。真っ黒な制服に身を投じている幻狼は、スーツに着替えるとなるべく真面目そうに取繕う。話をしたら全てが台無しになる事を見越して、標準語を話すように指導を受けている。 「俺にこんなしゃべりを求めるん、無理やで」 「無理か無駄になるかは幻狼、貴方次第よ。最悪の場合、話さない」 「……へいへい」 菜園の外見があんな状態になっていなかったら、ユメを行かせただろう。異変に気づかれる可能性は低く、彼女の言葉なら銘刀は安心して言う事を聞いてくれる。彼の近くには皆川刑事がいる。皆川刑事の妹と銘刀が付き合うようになって家族ぐるみの関係性を築き上げてきた過去がある。ある研究を進めていく事で彼女を失うなんて、誰も想像しなかっただろう。 「皆川風間……凄く邪魔ね」 ポツリと呟く言葉を捉えた幻狼はニヤリと微笑みながら、新しいおもちゃを手に入れるチャンスが舞い込んでくる予感を感じていた。銘刀に興味があるのはミーシャだけ。その身近で傍観者として存在している風間に興味を示していく。 「あんたは俺に任せたらええ。邪魔なもんは全て消すだけや」 口ではそう言っているが、本心は違う。その事に彼女は気づいている。指摘も反応もせずに流れるままに委ねていく。時間が限られているから
last updateLast Updated : 2025-10-19
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12話 死した体と変化した魂

システムを起動しますーー 部屋中に機械音が流れると、警告音に切り替わっていく。何が起こっているのか把握しようとする銘刀は動けない。頭に装置を付けられているから真っ直ぐしか見る事が出来なかった。そんな彼を覗き込むミーシャは右手に持っているスイッチを押す。すると頭に大量の電流が流れ、電脳に負担を掛け始めた。強度には自信がある作りにはしているが、ここまで内部まで流されてしまうと、どうしようもない。 「貴方の記憶と記録は全て電脳のシステムに保存されているのよね。どんな仕組みで作ったのか知りたいわ……だけど残念、取り出せるものを取り出したら、電脳ごと破壊してあげるから。そうすれば貴方は自由になれるのよ」 ミーシャの瞳は邪な考えで満ちている。彼女が何を欲しがっているのか理解出来ない銘刀は反発しようとするがそのたびに電流が流されていく。体に繋がっている電脳が破壊されると言う事はその体は抜け型同然。今までのように生きる事も愚か、心も全て消えていく。もしミーシャがシステムを取り出す為にこのような行動に出たのなら、それは失敗に続く未来しか編み出せない。 痛みを感じる事はないはずなのに、この電流は普通のものとは違うらしい。電脳はまるで本物の脳みそのように震えながら、頭痛を引き起こしていく。この痛みは体と電脳の繋がりが弱体している証拠でもあった。 「それじゃあ、取り出しましょうか」 ふふふと喜びの感情を噛み締めながら、機械に付け加えられているボタンに手をかけた。ゆっくりと押すと視界も感覚も考える脳の存在も最初からなかったように、無の世界へと吸い込まれていく。最後に感じたのは痛みとは程遠い感覚だった。 ピクリとも動かなくなった銘刀を見下ろしながら経過を観察しているミーシャ。機械に備えられているボタンは電脳から記憶と記録を取り出す装置だった。これを起動させる事により、空っぽになった電脳は活動を止め、連動するように肉体も停止した。システムを特殊な構造で作られているパソコンに取り込まれたのを見ると、その中身を一つ一つクリックしていく。 沢山の数字と溢れかえる情報、そして銘刀として生きた証、彼の記憶が映画のように流れていく。ここまで完璧に取り込む事に成功したのは初めてだった。現実世界にそぐわない人間を選別し、牢獄と名付けた仮想空間の世界へ幽閉する。選ばれた人間達は溢れかえったゾンビを
last updateLast Updated : 2025-10-19
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最終話 2つの物語が混ざり合う時

過去の出来事は時間の経過と共に消えていく。なかった事にされた事実を知る者は中心人物として動いていた組織にしか分からない。一人の脳科学者ミーシャ・オン・レインが残した記録によると、元々は平和な世界だったらしい。その事に関して彼女個人の感想が書かれていた。他の人は資料を飛ばし飛ばし読んでいる為、見つける事が出来なかったのだろう。 他の資料にはきちんとした筆跡で書かれているのに、彼女の心情が描かれている所はミミズのような文字になっていて、読みにくい。何度も解読を試み、やっと一年の月日をかけて読み解く事に成功した。 「ゾンビ化って……映画じゃないんだからさ」 表現の仕方に対してツッコミをいれると、本当にミーシャと言う人物は脳科学者なのだろうかと疑問を抱くしか出来ない。もっと違う呼び方があったはずなのに、完結に簡略している。自分が彼女の立場ならもっと複雑な用語を使うし、作り出す。本人と話せる事はないのに、頭の中で彼女の妄想を膨らませていくと、笑うしかなかった。 「ほーら。皆集まって! そろそろ学校に戻るよー」 この資料館に引率として私達を束ねようとしている先生に同情する。素直に言う事なんて聞かないからだ。目の前に珍しいものが沢山あるのだから、そっちに興味を惹かれてしまう。気持ちは分かるが、話が聞こえない程没頭出来るのが少し羨ましく思えた。 「ほらほら、貴女も。資料を戻して」 「はーい」 自分は蚊帳の外だと感じていたが、そうそう気づかれてしまった。本当はもう少しこの公開資料を眺めたい気持ちがある。本来なら一般の人達がこの資料館を見る事は難しい。政府の許可が必要だからだ。規定なんてなかったら、家族に無理言って、また来るのに。それが出来ないから悔しい。 そんな私は資料を戻すとため息を
last updateLast Updated : 2025-10-21
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