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23話

مؤلف: 籘裏美馬
last update آخر تحديث: 2025-10-21 19:34:45

パタン、とドアが閉まる。

私は貼り付けていた笑顔をふっと消し、ドアに手を付きながらずるずる、とその場に蹲る。

良かった──。

何も、バレていない……。

この時ばかりは、御影さんが私に全く興味のない人で良かった、と感謝してしまう。

きっと、これが速水涼子だったら。涼子が相手だったら御影さんは違和感に気づいただろう。

けど、私が相手だから。

「──ふっ、皮肉なものね」

好かれたいのに。

御影さんに私を見て欲しいのに、今回ばかりは好かれていなくて、嫌われていて良かったと、思ってしまう。

私は自嘲気味に笑ったあと、その場にようやく立ち上がり部屋に戻っていく。

私は御影さんにバレたくない、とばかり考えていた。だから、御影さんが私の態度に訝しがっていた事も、私の部屋を出た御影さんが廊下を進んだところで足を止め、振り返ってじっと玄関を見つめていた事など、知る由もなかった。

翌朝。

私は虎おじさまのお屋敷に向かっていた。

パーティー会場では虎おじさまにご挨拶ができず、帰ってしまった。

失礼な事をしてしまったからこそ、すぐにお詫びをしに行かないといけない。

虎おじさまのお屋敷は、郊外にある。

限られた人間にしか知らされておらず、虎おじさまは国内に戻ってくると、必ずこの郊外のお屋敷で過ごすのだ。

私はアクセルを踏み込み、スピードを上げて進んだ。

「虎おじさま」

「茉莉花ちゃん。良く来たね」

「先日のパーティーは、大変失礼しました」

虎おじさまのお屋敷の玄関に入るなり、私は頭を下げる。

突然の私の行動に、虎おじさまはぎょっとして慌てて私に頭を上げるように言う。

「茉莉花ちゃんが頭を下げる必要はないよ。どうしてそんな事を」

「せっかく虎おじさまに招待していただいたのに……、私はご挨拶もせずに帰ってしまいました。こんな失礼な事をして……」

「そんな事、気にしなくていいんだよ。……パーティー会場で起きた事は、彼に聞いて知っているから」

「え……?彼……?」

虎おじさまの言葉に驚き、私は顔を上げる。

すると、玄関には見慣れない男物の革靴が1つ、きっちりと揃えて並べられていて──。

誰か、他のお客様?と私が考えていると、玄関から伸びる廊下がきしり、と音を立てた。

音のした方へ、無意識に視線を向ける。

そして、視線を向けた先には。

「藤堂さん。先日ぶりです」

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