あなたの「愛してる」なんてもういらない의 모든 챕터: 챕터 361 - 챕터 370

419 챕터

361話

「なら、お父様……。今回の事件が明るみに出る事を恐れて……速水家がまた何かをしてくる可能性が高いですよね?」 「……その可能性は否定できないな」 「今日の昼に、病院で谷島さんとお会いして、聞いた事があるんです。……速水家がそういった組織と繋がっているかは分からないけど……裏で、汚れ仕事を請け負う組織があるって。これから、速水家がそういった組織と関わりがあるかどうかを調べる、と言っていました」 「──っ、そう、か……谷島刑事が……」 お父様の反応に、私はお父様がそのような組織が存在している事を知っていたのだ、と分かった。 お父様は、藤堂家の当主だ。 お祖父様から引き継ぐ際に、色々とお話をされたのかもしれない。 私の話を聞いても、お父様の顔色は全く変わらず、そんな組織がある事を既に承知のようだった。 「藤堂家は、歴史が長いですものね……。お父様にしか分からない事が沢山あると思います。……ですが、私も将来、婿を取り、この家を継いで行く身です。お父様、全てとは言いません。今、必要な事を教えてください」 「──茉莉花」 お父様は、私の真剣な目を見て一瞬言葉を噤む。 逡巡していたようだけど、私の言葉を受け止め、真剣な表情に変わると口を開いた。 「……そうだな。今、藤堂の血を引いているのは私と茉莉花だけだ。私に何かあった時のために茉莉花にも藤堂の大事な歴史を伝えておく」 「お願いします……!」 そして、私とお父様は書斎で長い時間、話をした。 ◇ 翌朝。 私は自室のベッドで両頬を軽く叩くと、鏡に映る自分をじっと見つめた。 目の下には隈ができている。 昨夜は、書斎で遅くまでお父様とお話をしていた。 そのため、睡眠不足で血行が悪く、顔も青白い。 「……メイクで隠れる程度で良かった」 お父様との話し合いの結果、今日は私は会社に出社する。 私が会社で仕事を。 お父様は、今日は1日お母様の検査に付き添うために会社を休んだ。 病院なら、苓さんが手配してくれた護衛がいるし、お父様本人にもしっかりと護衛がついている。 お父様がお母様に付き添ってくれていれば、お母様もお父様も安全だ。 きっと、私はすぐには狙われないと思う。 苓さんが事故に巻き込まれたあと、私に送られてきたメール。 あれは、恐らく涼子だ。 涼子は、私の周りにいる人達を狙っ
더 보기

362話

出社の支度を終え、家を出る。 駐車場の車に乗り込み、門を出た所で見慣れた車が視界に入った。 「──嘘でしょう?」 私はうんざり、と声を漏らす。 その車は、御影さんが普段使用している車だ。 運転席にはやはり御影さんが居て、私の姿を見るなり笑みを向けてきた。 だけど、私は彼を無視して車を走らせる。 会社に向かう道中も、御影さんはずっと私の後を追ってきていて。 「まさか……会社にまで着いてくるつもりなの……?」 私が想像した通り、私の車が会社の駐車場に入ると、御影さんの車も後に続いたのがバックミラーで分かり、朝から頭が痛くなって来てしまった。 「最悪……早く社内に逃げ込まないと……」 私は急いで駐車場に車を停める。 だけど、焦っているせいか、普段より少しばかり時間がかかってしまって。 ようやく車を停め、私が急いで車外に出ると、背後からにゅっと太い腕が伸びてきた。 「──っ、」 「おはよう、茉莉花」 まるで、私の体を囲むように御影さんの両腕が車の車体に着き、私は檻に入れられてしまったように動けなくなってしまった。 「……っ、何の用ですか?話があるなら、アポを取ってもらってもいいですか?」 御影さんと顔を合わせず、私は冷たく言い放つ。 すると何が楽しいのか、御影さんはくつくつと喉奥で低い笑い声を発しながら、私の体に多い被るように身を屈め、近付いて来た。 あまりの近さに、私の背筋にぞっと悪寒が走る。 「──っ、離れてください」 「母親の意識が戻ったそうだな。おめでとう」 必死に顔を背け、私が何とか言葉を紡いだ時。 御影さんの口からお母様の事について言われ、私は目を見開いた。 「──どうしてそれを?」 「茉莉花に関わる事だ。俺が知っていて当然だろう?」 くつくつと笑いながら、御影さんは私の髪の毛に手を伸ばすとひと房救い上げ、私の髪の毛に唇を寄せた。 「──やめてください!」 髪の毛1本すら、御影さんには触られたくないのに。 あろう事か、御影さんは私の髪の毛にキスをしようとしたの──? ぞわぞわとした嫌悪感がせり上がってきて、私は慌てて自分の髪の毛を離させるため、御影さんの手を払った。 だけど──。 御影さんは、自分の手を払った私の手を掴み、あろう事か指を絡めて車のドアに押し付けた。 「──っ痛」 「茉莉花、
더 보기

363話

「──ひっ」 御影さんの唇が、私の手首に触れた。 その瞬間、私は悲鳴を上げてしまいそうになった。 嫌悪感が背筋に走り、御影さんの手から自分の腕を引き抜こうとしたけど、御影さんの力が強くて手を離してもらえない。 「よく考えろ、茉莉花。涼子は俺を慕っているから俺が危険な目に遭う事はない。それが分かっているなら、俺を傍に置いておいた方がいいだろう?」 「例えそうだとしても、私は御影さんに傍に居て欲しくないんですっ!」 「強情だな。自分の気持ちなんて後回しにしろ。今は涼子を捕まえる事が最優先だろう?御影の家の力を貸してやる、と言っているんだ」 「──っ、万が一……っ、万が一御影さんの力を借りたとしたら!?見返りに何を求めるつもりですか!?」 私は御影さんを強く睨み付ける。 私たちほどの権力を持つ家が、ただで誰かを助けるなんて有り得ない。 私と苓さんのようにお互い想いあっていて、利よりも気持ちを尊重し合っているなら話は別。 だけど、かつての私と御影さんの仲。 あれだって、結局は藤堂──私に利があったからこそ結ばれた婚約だ。 御影さんは、かつての恩を返すために嫌いな私との婚約を了承し。 過去の私は御影さんが好きだったから、恩を売った藤堂家が彼に婚約を強要した。 全ては、私を想ってくれていたお祖父様が整えてくれた婚約だった。 だけど、私を嫌っていた御影さんは、私に対してずっと冷たい態度を取り続けていたのに。 それなのに、今更──。 私が御影さんを真っ直ぐ睨み付けていると、御影さんはにやりと嫌な笑みを浮かべて答えた。 「そんな事分かっているだろう。以前、破談となった御影家と、藤堂家の婚約を再び結び直す。茉莉花は俺の婚約者になって、ゆくゆくは俺と結婚してもらう」 「──はっ、無理ですね」 御影さんの言葉を聞いた私は、吐き捨てるように答えた。 まさか即座に断られるとは思わなかったのだろう。 御影さんは不快感を顕に眉を顰めた。 「どうして無理だと言い張れる?」 「私は、藤堂家を継ぐんです。誰かの家に嫁入りする事はできません」 「──以前俺と婚約していた時は、嫁入りを承知していただろう。出来ないはずはない」 「そうですね、かつては。だけど、今はもう私は藤堂家を継ぐと覚悟を決めたんです。だから、誰かに嫁ぐ道はありません」 はっきりと
더 보기

364話

聞き覚えのある声。 その声が聞こえた瞬間、私を掴んでいた御影さんの手がふっと離れた。 「──!谷島さん!?」 「藤堂さん、無事ですか?」 まさか、刑事の谷島さんが会社の駐車場に居るなんて──。 私が驚いていると、突然登場した谷島さんに御影さんも驚いた様子だった。 「……谷島刑事、無粋な真似をしないでくれませんか?」 「無粋?いやいや、藤堂さんは嫌がっていたでしょう。嫌がる女性に無理やり迫るなんて、あってはならない事ですよ」 「──……茉莉花。先程の話を忘れるな。お前は俺を選んだ方が良い」 御影さんはそれだけを私に告げると、そのまま私たちから離れて自分の車に戻って行った。 車に乗り込むと、エンジンをかけてその場から走り去る。 御影さんの車が視界から消えて、ようやく私はほっと安心して肩から力を抜いた。 「大丈夫ですか、藤堂さん?」 「ありがとうございます、谷島刑事。とても助かりました」 私が苦笑い混じりに谷島さんに言うと、谷島さんは心配そうな顔を私に向ける。 「彼とは……確か、以前婚約をしていた、と仰っていましたね?」 「ええ……。彼にはお付き合いしている女性──涼子が居ましたから。随分前に婚約を解消したのですが、ここ最近になって何故か私に付きまとう事が多くなっているんです……」 「そうですか……。そう言えば、小鳥遊が手配した護衛は?常に帯同していると思っていたのですが……」 「──あ、今日はお父様とお母様の元に。涼子は多分、私の事は狙わないと思うんです。私の周囲に居る人から、順番に狙っていると思うので……だから、私より今は目覚めたばかりのお母様を守ってもらった方がいい、と思って……」 私の言葉を聞いた谷島さんは、険しい表情で口を開いた。 「速水容疑者が藤堂さんを執拗に狙っているのは、その通りなのでしょう……。だけど、ご自分の身を守る事は最優先事項ですよ。速水涼子が狙っていなくても、速水家があなたに手を出すかもしれません。護衛は必ず帯同させてください」 真剣な表情で、厳しい口調で言われた私は、素直に謝罪を口にした。 「そう、ですよね……申し訳ありません。この後、護衛の方に連絡をして、会社に来ていただく事にします」 「ええ、必ずそうしてくださいね。さあ、出勤されますよね?お部屋までお送りしますよ」 「本当に何から何まです
더 보기

365話

夜、定時後──。 私はお父様がお休みの分、捌かなければならない仕事を捌いていた。 役員達との会議に、お父様の代理で決裁対応。 新事業に関しての問い合わせや、対応。 それに加えて、通常業務の対応まである。時間が足りなくて足りなくて──。 「……会社に泊まろうかしら」 なんて、ぽそりと呟く。 家に持ち帰るのも社外秘の内容があるし、移動時間も勿体ない。 それに──。 「家に帰るのが怖い……。また、御影さんが待ち伏せていたらどうしよう……」 それが、1番怖くて嫌だ。 朝、谷島さんに護衛をつけた方がいいと言われたため、明日からはちゃんと今まで通り護衛の人が私の出社や退社に付き添ってくれる。 だけど、今日は。 お父様とお母様を守って欲しい、から。 今日いっぱい、私には護衛はつかない。 「谷島さんも昼前には帰ってしまったし……」 谷島さんは、チャリティー登山に参加した人達への聞き込みにやって来ていたらしい。 昼休憩が終わる頃、矢田主任がやって来て教えてくれた。 あの登山中の事故についても、調べ直してくれているのだ。 もし谷島さんがこの時間まで残っていたら、一緒に会社を出ようとしたけど、谷島さんはとっくに戻ってしまっている。 「……やっぱり、今日は会社に泊まろうかな」 お父様も、多分今日は病院に泊まっているだろう。 お母様の退院手続きに忙しくしているだろうから、御影さんの事を相談なんかして、煩わせたくない。 それに、御影さんの事は私が1人で解決しないといけない。 それくらい、自分で対応しないと。 そんな事を考えつつ、私は届いていたメールをチェックしていて。 届いた中にあるあるメールを見た瞬間、私は驚きに目を見開いた。 「──虎おじさまからのメールだわ!?」 まさか、虎おじさまからメールが来ているなんて、と私は急いでメール内容を確認する。 虎おじさまがパーティーの準備をしてくれているけど、パーティーまではまだまだ時間がある。 だから、それに関する相談とかだろうか。そう思った。 「虎おじさまにも、お母様が目を覚ました事をお伝えしないと……!」 もしかしたら、お父様が既にお伝えしているかもしれないけど、私も自分で虎おじさまにお伝えしたい。 そう、うきうきしながらメールを開いた私は、メールに書かれている文章を目にした瞬間
더 보기

366話

もし、涼子や──彼女の母・速水 朱美が全てを失う覚悟で今回の事件を起こしたのであれば。 全てを捨てるつもりで動いたのであれば。 「私たちも……覚悟をしないと……」 速水家と藤堂に、何があったのか。 昔の因縁とは、本当に何なのか。 藤堂の何が速水家の恨みを買ったのか。 それはまだ、全て調べきれていない。 「お父様に恋慕していた速水 朱美に、御影さんを手に入れようと動いていた涼子……どちらも動いているのは女性だわ。……やっぱり、異性絡みで昔何かあったのかしら」 色々考えてはみるけれど、私1人では考えも纏まらない。 これは、お父様に相談しないと。 そして、虎おじさままで本当に狙われたとしたなら。 私は、苓さんと距離を取らないと駄目だわ。 本当に、苓さんを失う事になってしまうかもしれない。 そうなったら、私はきっと耐えられない。 「例え、苓さんが私を思い出さなくても。一生思い出せず、他の誰かと一緒になったとしても。……私は苓さんが幸せならそれでいいわ」 藤堂の事情には、やっぱりこれ以上巻き込む事は出来ない。 私は、虎おじさまに謝罪のメールと、後日お見舞いに伺いたい旨を書いてメールの返信をした。 ◇ 夜、23時過ぎ。 ようやく仕事がひと段落ついた私は、会社の駐車場に降りて来ていた。 朝のように、御影さんの姿はないか。 御影さんの車はないか、慎重に周囲を見回す。 そうしている私の視界に、ある人物の姿が目に入り、私は目を見開いた。 「──どうして、ここに……」 「……っ、藤堂さん!?」 車に背を預け、俯いていた顔が私の声を聞いた瞬間に弾かれたようにぱっと上がる。 その人物──苓さんは、何かを耐えるような辛そうな顔で、私を見つめていた。 「どうしてここに、小鳥遊さんが……?」 「……谷島から聞きました。今朝、藤堂さんが御影専務に襲われた、と」 「お、襲……!?ち、違いますよ……!そんな大事じゃなくって……!」 私が慌てて両手を振ると、苓さんはじっと私の手を見つめて、口を開いた。 「手首を掴まれていた、と谷島から聞きました。怪我はありませんか?」 「──ええ、大丈夫ですよ。えっと、その事で……わざわざ来て下さったんですか?」 「……はい」 どうして──。 苓さんを諦めようとした途端に、こんな事をするのか。 私
더 보기

367話

車内には、妙な緊張感が流れていた。 時折苓さんから気遣わしげな視線を感じる事があったけど、私はそれに気づかない振りをして前を見続けた。 今までだったら、私から苓さんに仕事の話を振ったりしていた。 何とか苓さんと会話をしたくて。 私の事を思い出して欲しくて、苓さんとの会話を試みた。 だけど、苓さんが私の事を思い出すような気配は一切ない。 こうして、今回谷島さんから連絡を受けて私の所に来てくれたのも、苓さんの優しさゆえだろう。 元々、苓さんは凄く優しい人だ。 仕事仲間である私が危険な目に遭ったと知り、心配して来てくれただけに違いない。 (勘違いしたら駄目、苓さんは元々優しいから) 私は苓さんを見てしまわないよう、家に着くまでただひたすらにずっと前を向き続けた。 「──着きました」 苓さんの車が、滑らかに私の家の門前に停まる。 周囲には御影さんの車も見当たらず、私はほっとした。 「ありがとうございます、小鳥遊さん」 「いえ、大丈夫です。中までお送りします」 「いいえ、大丈夫です小鳥遊さん。小鳥遊さんもお仕事でお疲れでしょう?ここまでありがとうございました、戻って下さって大丈夫ですよ」 私は、柔らかく微笑みながら苓さんにそう告げると、ドアを開けて外に出る。 外は、さっきまでは降っていなかったのに、今はしとしとと小雨が降り始めていた。 「藤堂さ──」 「小鳥遊さん、ありがとうございました!雨が降っているので、ここで失礼しますね」 私は雨が降っている事を言い訳にして、足早に苓さんの車から離れる。 私が門に向かい、指紋認証をすると門は重たい音を響かせ、ゆっくりと開いた。 車の窓を開け、顔を出して私に何かを言おうとしている苓さん。 そんな苓さんを振り切るように、私はバッグを頭上に掲げて小走りで家の玄関に向かう。 屋根の下に到着した私は、門の方向に振り返った。 もう、苓さんの車はきっとそこにいないだろうと思って。 だけど。 「──えっ、まだ居てくれたの……?」 苓さんの車は、ここに着いた時と変わらずそこに停まったまま。 「もしかしたら苓さんは心配して、私が家に入るまで見てくれているのかもしれないわね……早く帰ってもらわないと……」 そう考えた私は、苓さんに向かって軽く頭を下げるとそのまま玄関扉を開けて中に入った。 私
더 보기

368話

「──ここ、歩いた気がする……」 日本庭園。 初めて見たはずなのに、ちっともそんな気がしない。 足元が暗くなる、夕方頃。 足元に気をつけて、と言いながら一緒に歩いた人は誰だったか、と思い出そうとする。 だけど、隣を歩いていた人の顔を思い出そうとすればするほど、頭の痛みが増してきて。 「──痛っ」 ガンガン、とまるで頭を殴られているような感覚。 だけど、この痛みを耐えて思い出そうとすれば、失った記憶を思い出せそうな気がした。 「何で俺は藤堂さんの事を忘れた……?」 痛む頭を片手で抑えつつ、俺は日本庭園を見つめ続ける。 「なんて、喋っていた……?何を、言っていた……?」 悲しそうな表情で語ってくれたのは、間違いなく藤堂さんだ。 その時の藤堂さんは、俺に何を話してくれた? 悲しそうなその顔だって、霞みがかっていてはっきりと思い出せない。 「──くそっ」 これ以上は、頭痛が酷くなるばかりで思い出せそうにない。 俺はハンドルに額を擦り付けて歯を食いしばった。 それ以降、俺は藤堂さんと仕事で会う機会がほとんどなくなり、彼女とのやり取りも全てメール対応で済むようになってしまった。 まさか、あの日を最後に1ヶ月以上もの間、藤堂さんと会えなくなるなんて思いもよらなかったんだ。 ◇ 苓さんに車で送ってもらってから、ひと月が過ぎた。 このひと月の間は、目が回る程の忙しさだった。 お母様の退院。 庭園カフェのオープンに向けて大詰め。 そして、虎おじさまが開催してくれるオープン記念のパーティー。 それに加えて、通常業務。 いったい、何度「自分がもう1人居たら良かったのに」と思ったか分からない。 だけど、その間に涼子から何かを仕掛けられる事も全く無かった。 谷島さんからの捜査状況に関しても、お祖父様を轢いた犯人は未だ捜索中の連絡があるだけ。 涼子に関しても、まだ行方不明。 涼子が何かを仕掛けてくるなら、きっと虎おじさまが開催してくれるオープン記念のパーティーだろう。 何となく、私はそう思った。 「茉莉花、最近働き過ぎじゃない?大丈夫なの?」 私が家に帰ってきてから自分の部屋で仕事をしていると、扉をノックした後、お母様が紅茶を手にやって来た。 「──お母様!」 私は椅子から立ち上がり、急いでお母様の元へ駆け寄ると、お母様
더 보기

369話

お母様の言葉に、私は何て言葉を返せば良いのか分からなくなった。 確かに、無理をして仕事に没頭している部分はある。 そうしないと、ふとした時に苓さんの事を考えてしまうから。 「そう、ですかね……?」 だから私は、お母様に対して曖昧に笑って言葉を返して見せた。 だけど、お母様の表情は芳しくない。 私が無理をしている事がお母様にバレてしまっているのだろう。 お母様は、私の手から紅茶の入ったカップを優しく取ると傍にあるテーブルに置いた。 「ねえ、茉莉花。私と一緒にお庭の散歩でもしない……?暫くあそこの庭園を歩いていないから……久しぶりに歩きたいの」 「庭園、ですか?」 お母様の言葉に、私は一瞬だけ迷ったけれどすぐに頷いた。 ◇ 庭園。 私はお母様と一緒に懐かしい思い出のある庭園にやって来ていた。 1番新しい思い出は、ここで苓さんと一緒に歩いた事。 1番古い思い出は、お母様と一緒に縁側から庭園を眺めた思い出。 「茉莉花、縁側で座ってお話をしましょうか?」 「──はい、お母様」 お母様もその頃の事を思い出していたのか、私に顔を向けるとにこりと微笑みを浮かべてそんな提案をしてくれた。 お母様の足は、まだ筋力が戻っていなくて覚束無い。 私はお母様を支えつつ日本家屋に向かい、玄関を開けて中に入る。 「お母様、私に掴まってください」 「ありがとう。ふふ、嫌ね……娘の手を借りないと少しの段差も上がれないなんて……」 「事故に遭ってからずっと寝たきりだったのですもの。しょうがないですよ、お母様。お医者様もおっしゃっておりましたが、お母様の回復はとても早いと。驚いておりましたよ?」 「あらあら、本当?それは嬉しいわ」 ふふふ、と上品に笑うお母様。 私はお母様の手を取って、一緒に縁側に向かった。 縁側に座り、他愛ない話をお母様として。 少し肌寒くなって来た頃。 これでは、お母様のお体が冷えてしまう。 体調を崩されたら大変。 だから、私はそろそろ中に戻りましょう、とお母様に提案するつもりでお母様に顔を向けた。 そうしたら、お母様も私を見ていて。 お母様の真っ直ぐ、芯の通った瞳が私を見つめていた。 「──お母様?」 お母様は私の手をそっと握ると、話そうか話さまいか一瞬悩んだ素振りを見せた。 だけど、覚悟を決めたようにお母様
더 보기

370話

「──っ」 まさか、お母様にそこまで聞かれていたとは、と私は驚いてしまった。 お母様の質問にすぐに答えられなかった。 それがもう、答えのような物だ。 その証拠に、お母様はとても悲しげに目を伏せた。 「どうして小鳥遊さんを諦める事になったのか、聞いてもいい?」 「……お母様も、苓さんの記憶がなくなってしまったのは……」 「ええ、聞いているわ。だけど、彼の記憶がもうすぐ戻るかもしれないでしょう?私も、長年目覚める事ができなかった。だけど、今は目が覚めて……そして家に帰ってくる事ができたわ。希望を捨てたら駄目よ、茉莉花」 「──ありがとうございます、お母様。お母様のお気持ちは嬉しいです。……だけど、虎おじさまが襲われた事は聞いていますか?」 「田村さんが──?」 お母様は、私の言葉に驚き目を見開いた。 虎おじさまが危ない目に遭った事は知らず、初耳のようだった。 だから、私はずっと考えて、そしてお父様と相談していた事をお母様にも伝える。 「……私が大切に思う人達が、次々と事故に遭っています。……例え苓さんの記憶が戻らなくても、私にとって苓さんはかけがえのない人です。これ以上、危険な目に遭って欲しくない……」 「だからと言って──!」 「ええ、だからと言って。私と苓さんが恋人じゃなくなったからと言って、苓さんに危険が及ばないとは確証が持てません。……だけど、私と恋人でいる方が確実に危険な目に遭います」 私の決意が固い事を、お母様は悟ったのだろう。 私は、頑固な所がお祖父様にとてもそっくりだ、と言われているから──。 1度、自分の中で「こうする」と決めた事は、曲げない。 私の目を見返していたお母様の目が、悲しそうに歪んだ。 「私は、苓さんが幸せでいてくれればいいんです。私の知らない所でもいい。危ない目に遭わずに、誰かと一緒になって……幸せになってくれればいいです」 「茉莉花……だからと言って……」 お母様は一旦言葉を切ると、苦しそうに俯いた。 そして、言葉を続ける。 「だからといって……、他の方とのお見合いをするなんて……!」 お母様の言葉に、私は苦笑いを浮かべて答える。 「……藤堂には、跡継ぎが必要ですから」 そうだ。 藤堂は、私が継いで行く。 以前は養子を取る可能性があったけど、今は私が家に帰ってきているから。
더 보기
이전
1
...
3536373839
...
42
앱에서 읽으려면 QR 코드를 스캔하세요.
DMCA.com Protection Status