◇ 「茉莉花、これが今茉莉花に届いているお見合いの釣書だ」 「──ありがとうございます、お父様」 ある日の夜。 私はお父様の書斎に呼び出され、お見合い予定の方達の釣書を受け取った。 私が釣書を受け取るのを、何とも言えない表情で見つめていたお父様が迷うように口をもにょり、と動かしたのが見えた。 「茉莉花、本当に──本当にお見合いを進めてもいいのか?」 「ええ。もう決めましたから」 「……茉莉花が見合いをした後、万が一苓くんの記憶が戻ったら……?そうしたら、どうするつもりだ?もしかしたら今日──、明日にでも苓くんの記憶が戻るかもしれない。記憶を取り戻した苓くんが、茉莉花がお見合いをしたと知ったら……ショックを受けるかもしれない」 お父様はそこで1度言葉を切ると、真っ直ぐ私を見返して続けた。 「だから、もう少し待ってみてはどうだ……?せめて、琥虎が企画してくれているオープン記念のパーティーが無事に終わるまで……」 「……確かに、今はまだカフェオープン前で仕事がバタついていますね。パーティーが終わり、少し仕事が落ち着いてからお見合いを進めます」 「──!ああ、その方が良いだろう。今お見合いをしても、茉莉花は忙しいだろう?体調だって崩してしまう可能性だってある。全部落ち着いてからにした方がいい」 「分かりました、お父様。それでは、先方にはそのようにお伝えいただいてもよろしいですか?」 「ああ。そこは私が責任を持って伝えておこう」 お父様がほっと、安堵したように表情を緩める。 何だか、苓さんとの事でお父様にも心配をかけてしまって申し訳ない。 私はお父様に頭を下げてから書斎を後にした。 ◇ 茉莉花が去った書斎の中。 馨熾は慌てたようにスマホを取り出し、急いで文章を打ち込む。 「不味い……、このままだと本当に茉莉花が他の男と結婚してしまう……!」 馨熾のメールの送り先は、谷島だ。 谷島は苓と友人だけあって仲は良い。 記憶を失っている苓は、今回の事件についてもうろ覚えだった。 だが、担当刑事が谷島と聞いて、それ以降は密に連絡を取り合っているらしい。 馨熾が谷島に連絡を入れると、すぐに谷島から返信が返ってきた。 苓にそれとなく話をしてみると返信が来て、馨熾はほっとした。 「記憶を取り戻さなくてもいい……。どうにか苓くんが茉莉花
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