あなたの「愛してる」なんてもういらない의 모든 챕터: 챕터 391 - 챕터 400

419 챕터

391話

◇ 和風庭園カフェのオープン記念のパーティーも、終盤。 参加者達もパラパラと帰宅する者も出始めている。 私は、屋久島さんとの会話が終わるとお父様や虎おじ様達と合流し、それからはずっとお父様達と一緒に居た。 途中、同じ戦略チームの矢田主任や志木チーム長達と合流し、少しばかり話をした。 慣れた人達との会話で、お酒がとても進んでしまって、少しばかり酔いが回ってしまったけど多少ふわふわとするだけ。 みんなとは気持ちの良い空気感で会話が出来て楽しかった。 「──お父様、虎おじ様、少し失礼しますね」 「うん?ああ、分かった。私たちはこの辺りにいるよ」 「はい。すぐに戻ります」 私たちの周りには参加者達が多く、色々な人と会話をしていた。 だけどパーティーが始まって数時間。 私はお手洗いのためにお父様や虎おじ様に一言告げてからその場を離れた。 お手洗いは、パーティー会場を出て廊下を歩いた先にある。 パーティーが始まったばかりの頃は、廊下にもちらほらと人が行き交う様子が見えたけど、今は参加者も帰宅する人が増え、ホテルのスタッフも食事を全て出し終えているからか、人数が減っている。 「人が少ない廊下は、少し肌寒いわね……」 ぶるり、と肩を震わせる。 ショールを持ってくれば良かった、と少し後悔しつつ私はお手洗いに向かった。 お手洗いから出て、廊下を歩いてパーティー会場に戻る。 軽くお化粧直しをしている間も、お手洗いには他の利用客はやって来なかった。 「もうそろそろお開きの時間かしら……?」 スマホを取り出して時間を確認する。 参加者の中には、そのままホテルに泊まる人も多い。 主催者の虎おじ様は、ホテルに遅くまで残るからここに泊まる予定だと言っていた。 お父様は、家でお母様が待っているから帰宅予定。 「私、は……どうしようかな……」 お酒も入っているし、正直家に帰るのが面倒な所がある。 週末だし、明日はお休みだし、このままホテルに泊まってもいいかもしれない。 私がそんな事を考えながら廊下を歩いていると、パーティー会場の入口でいきなり横から出て来た人に話しかけられた。 「──藤堂さん」 「──っ、相戸さん……っ、どうされましたか?」 急に話しかけられて、私はびっくりしてしまう。 だけど、それを表情には出さずに笑みを浮かべて相戸
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392話

「──ひっ」 このままでは、胸に触られる──! だけど、避けるにも今からじゃ上手く避けられない。 私は、最悪触られる事を覚悟して、目をぎゅっと瞑った。 「──……?」 だけど、衝撃に耐えるために待っていても、いつまで経っても自分の体に触れられるような感覚は訪れない。 あれ?と思い、恐る恐る目を開けると。 そこには──。 大きくて、頼もしい背中が私の目の前にあった。 「相戸さん、大分酔っていらっしゃいますね。スタッフを呼びますよ、お待ちください」 「──えっ、ぅあ……っ」 低くて、冷たい声。 だけどその声は聞きなれた声だ。 「え……。苓、さん……?」 私の口からは、ついつい昔の呼び名が零れてしまう。 すると、私の声に反応した苓さんの肩がぴくり、と反応して目の前の背中の持ち主が振り返った。 「……茉莉花さ……いえ、藤堂さん……。俺が相戸さんをお連れします。お父様か、田村さんの所に……」 「そ、そんな……っ、私もお手伝いします……!」 「だけど……」 私と苓さんが言葉を交わしていると、相戸さんは顔を真っ青にしたまま、慌てて口を開いた。 「いっ、いえ……!大丈夫です……!そのっ、帰宅しますので……っ」 「それでは、せめてお見送りを」 真っ青な相戸さんが首を横に振って慌ててパーティー会場の出口に向かっていく。 その後ろを、ゆったりと歩いて着いて行く苓さん。 さっきちらりと見えた相戸さんの襟元が、酷く乱れていたように見えた。 さっきまできっちりとしていたのに、どうして──。 私がそんな事を考えている間に、相戸さんと苓さんは出口に向かってしまっていて。 私は慌てて2人を追いかけた。 ◇ 「本日はありがとうございました」 パーティー会場がある階。 その階のエレベーターに乗り込む相戸さんを苓さんが見送っている。 相戸さんは必死に苓さんから顔を逸らしたままで、ボタンを何度も押しているのが見える。 私がエレベーターに着くまでに、エレベーターの扉は閉まってしまい、相戸さんのお見送りには、間に合わなかった。 今、私の目の前には苓さんの後ろ姿しか見えない。 声をかけようとしたけれど、何だか苓さんの後ろ姿がとても怒っているように見えて。 「あ、あの……小鳥遊、さん……」 「──っ、茉莉花さ……っ」 私の声に弾かれたよ
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393話

そんな彼に、私はぎょっとして駆け寄る。 「れっ、苓さん──っ!」 「──ぐっ」 痛みに低く呻く苓さん。 苓さんはその場に蹲った体勢のまま、手のひらを床に着いて痛みに耐えるように荒い息を吐く。 「だっ、誰か……、スタッフを呼んできます!待っていてください……っ!」 私は誰かを呼ぼうと、その場を駆け出そうとした。 だけど、そんな私を苓さんの弱々しい声が呼び止める。 「行かないで、……くださいっ」 「えっ」 「行かないで……っ、茉莉花さ……っ」 まるで、縋るような苓さんの声。 懇願するような、必死な声。 そんな苓さんの声を聞いて、私の足はぴたりとその場に縫い付けられたように動かなくなってしまった。 ゆっくりと苓さんの手が私に伸ばされる。 私は、苓さんの手を受け止めようとしたけれど、苓さんの頭痛が激しくなったのだろう。 再び呻くような声を漏らし、苓さんの手は自分の頭を抱えた。 「れっ、苓さん……っ、誰か……っ」 私は苓さんの傍に駆け寄り、倒れそうになっている彼の体を支える。 上手く支えになれたようで、苓さんの体が私にもたれかかってきて、ずっしりとした苓さんの体の重みを全身で感じる。 どうしよう、上手く支えられるか──。 このまま床に倒れてしまわないか、とハラハラしたけど、苓さんが床に着いていた手を離し、私をそのまま強く抱き寄せた。 「──っ!?だ、大丈夫ですか……っ!?」 「──ん、落ち着く……」 「そ、それは……良かった、です……」 苓さんの顔が、私の首筋に埋まっている。 すうっ、と息を深く吸い込むような音が聞こえてくる。 苓さんの行動に、私の頬はカッと熱を持つけど、苦しんでいる苓さんに恥ずかしがっている場合じゃない。 私は苓さんを支えながら、誰かが通りかかってくれないか、と必死に周囲を見回した。 そして、それから間もなくしてホテルのスタッフが私たちに気付き、慌てて苓さんを支えてくれた。 ◇ 「──はい、はい。……ええ、そうします。明日、お医者様に診ていただいて……それから私も家に帰りますね。……はい、今は眠っています」 ホテルの一室。 私は、パーティー会場を離れてしまったので、お父様に連絡をしていた。 あれから。 苓さんはホテルのスタッフに助けられた。 その時はまだ苓さんも辛うじて意識があったけ
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394話

◇ ──離れていかないでください。 どうして、俺以外の男と見合いなんて。 俺以外の男と結婚するって言うんですか。 それに、あの相戸って男──。 また茉莉花さんをいやらしい目で見ている。 酒に酔った振りをして、茉莉花さんの体に触れようとしている。 そんな事、絶対に許せない。 茉莉花さんは、俺の──。 ◇ 「──っ!?」 ばちり、と目を開ける。 だが、目の前は真っ暗で。 俺は、自分が置かれている状況が飲み込めず混乱した。 だが、次第に薄っすらとだが、はっきりとしてくる視界にここはホテルの一室だ、と理解する。 あれ程痛みを訴えていた頭痛も、今はもうすっかり無くなっている。 茉莉花さん、茉莉花さんは──。 もう、帰ってしまっただろうか。 薄暗い室内。 俺は、ゆっくりと首を動かした。 「──っ!」 すると、そこには。 俺が眠っているベッドに突っ伏している女性の頭が見える。 確認しなくても、分かる。 「俺が引き止めてしまったのか……」 俺はゆっくりベッドから起き上がると、足を下ろして眠っている茉莉花さんを抱き上げる。 俺が触れても起きそうにない。 それどころか、安心したように俺の胸元に擦り寄る茉莉花さんに、安心感やら幸福感が込み上げてくる。 「……待ってて、茉莉花さん。多分、寝て起きたら……」 このぼんやりと霞がかった思考が、次起きた時にははっきりとしているような気がするんだ。 妙な確信にもめいた、そんな感覚。 多分、もう殆ど思い出せているような気がする。 俺は茉莉花さんをベッドに寝かせると自分もベッドに横になる。 そして、少しも離れないように茉莉花さんを抱き寄せた。 すうっ、と息を吸い込む。 すると、懐かしい茉莉花さんの香りが鼻腔に広がり、愛おしさや懐かしさで目の前が滲んで来た。 「ごめん……。1人にして、ごめん茉莉花さん……」 きっと、いっぱい傷付けた。 沢山、泣かせた。 もう二度と、絶対に泣かせないから。 俺は自分の心に強く誓い直すと、茉莉花さんを離すものか、と強く強く抱き締めた。 甘やかに香る茉莉花さんの香りを胸いっぱいに吸い込み、目を閉じる。 頬に、何かが伝ったような気がしたけど、俺の意識はすうっと溶けてなくなるように落ちていった。 ◇ 「──ん、んん……?」 苦しい。 何
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395話

「──んん?」 「──っ!」 私がもぞもぞと動いてうるさかったのだろうか。 目の前にあった苓さんの眉間が、ぐっと寄る。 どうしよう。 苓さんは女性が苦手なのに。 同じベッドに私が眠っていたら、苓さんがショックを受けるんじゃあ。 だけど、苓さんの腕が緩まる気配がなくって。 私は、真っ青になりながら断罪を待つ人間のように固まっていた。 苓さんの長い睫毛が、ふるり、と震える。 陽の光を受けてキラキラと輝いていて、どこか幻想的。 眉を寄せていた苓さんの表情がふっ、と和らぎ、そしてゆっくりと瞳が開いて行く。 「──っ」 ドッドッド、と私の心臓はかつてないほどに騒がしく鼓動を刻んでいる。 まるで、その心音が苓さんにまで届いているんじゃないか──。 そんな心配をしてしまうほど、痛いほど心臓が脈打っている。 目を開いた苓さんのぼんやりとした瞳が、次第に焦点が合って行く。 目の前に居るのが私だ、ともう既に認識しているはずだ。 どうしよう、突き放されたら。 どうしよう、苓さんの顔が嫌そうに歪んだら──。 誠心誠意、心を込めて謝罪しないと──。 そんな事を考えている私に向かって、信じられない事に苓さんは甘やかな笑みを浮かべた。 「──茉莉花さんだ」 「──え」 「ん、おはようございます……」 「──んっぅ……!?」 とろん、と蕩けるように甘い苓さんの声と、笑顔。 低くて掠れた苓さんの声に名前を呼ばれて、そして──。 苓さんは私を優しく抱き寄せると、そのまま自然な動作で私の唇を塞いだ。 ──え!? どうして……!? 私が混乱している間にも、苓さんは甘やかに何度も何度も唇を重ねてくる。 どれだけの間、そうしていたのだろうか。 私が呆然としていると、苓さんの意識もはっきりとしてきたのだろうか。 苓さんはハッと目を見開くと、慌てて覆いかぶさっていた私の上から飛び退いた。 「す、すみません茉莉花さん……!俺っ、うわっ、寝惚けて……っ!」 意識がはっきりとした苓さん。 それでも、苓さんは私の事を「茉莉花」と名前で呼んでくれた。 それに、飛び退いたのも、私が嫌で飛び退いたんじゃなくて──。 苓さんは、赤く染まった頬を自分の腕で隠しつつ、窺うように私を見た。 「すみません、本当に。まずは、今までの事……茉莉花さんを忘れて
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396話

「──〜っ!」 「うわっ!?」 苓さんの言葉を聞いた瞬間、私は弾かれたように目の前にいる苓さんの胸に飛び込んだ。 驚いたように声を上げる苓さんだけど、しっかりと私を抱きとめてくれる。 その腕の力強さも、優しさも、私の頭のてっぺんに唇を落としてくれる癖も。 何も変わっていない。 「──苓、さ……っ!苓さん……っ!」 「うん……、うん。茉莉花さん」 「うっ、うぅ……っ、良かっ、良かった……っ!」 「ごめんなさい。本当に、苦しめてごめんなさい茉莉花さん……」 私は、子供のようにみっともなく声を上げて泣いてしまう。 それでも。 そんな私にも苓さんは優しく私を抱きしめてくれて。 どれだけ私が「馬鹿」とか「寂しかった」と責めても、苓さんは「ごめんなさい」と謝罪をしてくれた。 苓さんが悪い訳じゃないのに。 苓さんだって、忘れたくて忘れた訳じゃないのに。 「ごめんなさい、茉莉花さん。大好きなあなたを忘れた俺を一生責めてください」 「うっ、うぅっ、苓さんっ、苓さ……っ」 「俺はあなたの隣で一生をかけて許しを乞うよ」 「ちがっ、違うんですっ、責めたい訳じゃっ、苓さんだって辛かった、のに……っ」 「茉莉花さんの辛さに比べたら、俺の辛さなんて……」 「ううん……、でも、……思い出してくれた、から……っ、もう、それだけでっ、いい……っ」 泣きながら、しゃくり上げながら、それだけを返す。 もう、本当に思い出してくれただけで良い。それだけで、幸せ。 「もっと私の名前、呼んでくださいっ」 「ん。茉莉花さん、茉莉花さん……。茉莉花さんも俺の名前を呼んで?もう、二度と俺の事を小鳥遊さん、なんて呼ばないでください」 「ふっ、ふふ……っ。じゃあ、苓さんも私の事を二度と藤堂さん、なんて呼ばないで?」 「うん。絶対に呼びません。茉莉花さん、茉莉花……っ」 苓さんは感極まったように私の名前を呼ぶと、そのまま強い力で私を引き寄せ、唇を塞いでくれる。 寝起きのさっきのような優しいキスじゃなくて。 深くて、苓さんの気持ちを全てぶつけるような、激しいキス。 私も必死にそれに答える。 苓さんに求められる以上に、私だって苓さんが恋しかった。 「──んっ、んうぅ……っ」 「──はっ、茉莉花さ……、茉莉花……っ」 キスが深くなっていき、苓さんの手が明確な
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397話

◇ 「──うん、問題ないようですね。お体にはどこも異常は見当たりませんよ」 あれから。 私と苓さんは急いで着替えを終えた。 それからすぐに手配してもらった医者がやってきて、苓さんの診察をしてもらう。 「問題ない」と言われた事に、まずはホッとした。 だけど、それならどうして昨夜の苓さんはあれ程頭痛を、と不安になってしまう。 「あの、先生……。昨夜苓さんはとても頭の痛みを訴えていて……。記憶喪失の患者さん達は、こうした事がよくあるのですか?」 私が不安そうに聞くと、医者は私を安心させるように微笑んで答えた。 「ええ、良くある、とは言えません。ですが、過去の論文などでも記憶を失ってしまった患者さんには激しい頭痛を伴う事があるらしいです。小鳥遊さんは、ここ最近は頻繁に頭痛を感じていました。恐らく、記憶が戻る兆候だったのでは、と推測します」 「兆候……ですか」 「ええ、そうです。失った記憶を取り戻そうとすると、脳に負担がかかります。また、記憶を一気に取り戻すとなると、恐らくそれもまた脳に負担がかかり、痛みを伴うのでは、と。……後日詳しい検査をしてみましょう」 先生はそう言うと、持ってきた診察バッグを片付け、私たちに頭を下げて帰ってしまった。 先生を見送った私が部屋に戻ってくると、服を直していた苓さんが振り向く。 「茉莉花」 「──苓、さん。本当に、本当にもう大丈夫なんですか……?」 苓さんが柔らかな笑みを浮かべ、私の名前を甘やかに呼んでくれる。 それだけで自分の胸がきゅう、と締め付けられるように苦しくて。 「ええ、大丈夫です。昨夜感じていた痛みは……多分茉莉花の事を必死に思い出そうとしていたから……」 「──え」 驚く私を手招いた苓さん。 苓さんの傍に私が歩いて向かうと、ベッドに座っていた苓さんが軽く腕を広げた。 まるで「抱きしめさせて」と言っているようなその行動に、私は頬をぼっと赤く染めてしまう。 「──あ、う……」 「ほらほら、茉莉花。早く」 腕を軽く振り、私を急かす苓さん。 何だか久しぶり、だし。 さっきまでの事を思い出してしまって、私は尻込みしてしまう。 だけど、またこうやって苓さんに理由なく抱きつける事が出来るのは嬉しいし、苓さんから求めてもらえる事も、嬉しい。 じっと私を見あげて待っている苓さんの腕の中
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398話

「──もう、とっくに茉莉花の事を好きになっていたんです」 苓さんは、落ち着いた声でゆっくりと話し出した。 「記憶を失った当初は、茉莉花の事も何も分からなかった。だけど、茉莉花が帰ってしまった時に何だか寂しくて」 「え──、そう、だったんですか?」 「うん。だけど、最初はその違和感を見ないふりしていて。……だけど、俺はずっと茉莉花が好きだった、から。例え記憶を失っても、茉莉花への気持ちは胸に刻み込まれていたんだと思うんです。だから、あなたから距離を取られて……仕事でしか会う口実がなくて……」 その時を思い出しているのだろうか。 苓さんは寂しそうに、悲しそうに言葉を続けている。 「……御影専務に、何度も口説かれていたでしょう?」 「──!知って、いたんですか?」 苦笑いを浮かべる苓さんに、私は驚いてしまう。 「記憶を失っていても、あの人は何だか好きになれなくて、嫌いで。……茉莉花の事を諦めていないから、だからそう感じていたんだな、って今なら分かります」 ゆっくりと苓さんが私の髪の毛を優しく梳いてくれる。 その優しい手つきが、私の知っている苓さんと変わらなくて。 私は無意識に苓さんに自分の体を擦り寄せた。 「……、だから、あの慰労会の日。……茉莉花がお見合いをするって聞いて……。多分、あの日がきっかけです。あの日から、頭の痛みは増えていったから……」 苓さんは不安そうに瞳を揺らして私を見つめると、問う。 「もう、お見合いをするって先方に……?本当にお見合いをするんですか?」 そうだ。 苓さんは、私がお見合い予定の相手と話している所を今回のパーティーで見ているのだ。 私はゆっくり頭を横に振ると、答える。 「いえ……まだはっきりとは決まっていません。……昨夜会った屋久島さんとのお見合いの予定は、お断りさせて頂いたんです」 「──っ、本当ですか?」 「ええ。その……彼の素行の悪さが……」 「──ああ、なるほど」 私が言葉を濁して答えると、苓さんも納得したようで頷いた。 屋久島家は大きい。 力もあるが、その分権力で色々な揉め事を握りつぶして来た背景がある。 昨夜、お見合い候補の相手、屋久島 透さんも様々な揉め事を握りつぶしてきた人の1人だった。 沢山の女性と浮名を流していた。 それだけならまだいい。 どうせ愛のない結
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399話

こうして、苓さんと唇を重ねる事も。 苓さんの力強い腕に抱きしめられる事も。 いったい、いつぶりだろうか。 ぎゅうぎゅうと苦しいくらいに苓さんに抱きしめられ、甘やかなキスに酔いしれていると、不意に苓さんの舌が私の唇を割って入ってくる。 「──んっ」 優しく、だけど深く入り込んでくる苓さんの舌。 次第に激しさを増して行くキスに、私の息は乱れ、絶え絶えになっていく。 「や……っ、苓さ……っ、ちょっと、待って……!」 苦しさに堪らなくなって。 私はぺしぺし、と苓さんの腕を叩く。 すると苓さんはようやく唇を離してくれた。 だけど、少しでも顔を動かせば再び触れてしまいそうな程すぐ近くに苓さんの唇があって──。 「──ん、すみません茉莉花……。嬉しくて……我慢出来なかった……」 「それ、は……私もですけど……」 さっきまではとろんと甘く蕩けていた苓さんの瞳が、今はギラギラと輝いている。 まるで、捕食者を前にした非捕食者の気分になってしまう。 少しでも身動ぎすれば、たちまち喰らい付かれそうで。 私がそっと苓さんから視線を逸らすと、苓さんはそれを許さないと言うように私の顎を優しく掴んだ。 だけど、それを拒むように再び私の顔を正面に向き直される。 それがまるで「自分から目を逸らさないで」と言っているように思えて。 「──っ」 「ちゃんと俺を見てください……」 「あ……ぅ……」 「ふはっ、かわい」 私が真っ赤になって瞳を揺らすと、苓さんが破顔した。 そして、どろどろに甘い声でそう呟くと、かぷりと私の唇を塞いだ。 それからはもう、苓さんに翻弄されて行く一方で。 次第に深くなるキスに翻弄されていると、いつの間にか私の服は乱され、苓さんの熱い手のひらが素肌を這っていく。 ふつり、と胸の締め付けがなくなり「ああ下着を外されたんだ」と思うのと同時に体に快感が走った。 それからは、もう気持ちいいの連続で。 苓さんに乱され、気持ちいいしか考えなれなくなって。 私が苓さんから与えられる気持ちよさにうっとりしていると──。 ぐっ、と腰を持ち上げられた。 と、思った瞬間──。 「──ぅあっ!」 「……ぐっ」 苓さんが一息に自身を突き入れた──。 「茉莉花、茉莉花……っ」 「苓さ……苓さんっ」 お互い、名前を呼びあって求め合う。
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400話

◇ 遠くで電話が鳴っている──。 霞みがかっている思考で、そんな事を考えた。 「──ん、う……?」 電話……? なんで、電話が──。 そんな事をぼんやりと考えていると、次第に思考がクリアになっていく。 そこで、私ははっと目を覚ました。 「い、今何時……っ!?」 がばりと体を起こそうとしたけれど、私の体はびきり、と痛みを訴えて声にならない悲鳴を上げてしまう。 そのまま力なくベッドに逆戻りすると、私を受け止めてくれた腕が腰に回った。 「ん……茉莉花……?」 「──え、あっ、苓さん……」 眠そうな苓さんの声がすぐ側から聞こえてきて。 私はさっきまでの事を思い出し、顔を真っ赤に染めた。 そうだった。 さっきまで私と苓さんは、時間も忘れてお互いを求め合っていて。 最後は私が意識を飛ばしてしまったんだった。 それを思い出した私は、まだ微睡みの中にいる苓さんを起こそうと、私の腰に巻き付く苓さんの腕をぺしぺしと叩く。 「れ、苓さんっ、苓さん起きて……!」 「……んん?」 「か、帰らないと……!電話、きっとお父様です……!」 「──馨熾さん!?」 私がお父様の事を口にすると、苓さんの目がばちり、と開いた。 そしてその場に勢いよく起き上がる。 「きゃあっ!」 さっきまで、私たちはお互いを求め合っていた。 だから、苓さんも。私も。 何も衣服を身に付けていなくって。 勢い良くその場に起き上がった苓さんの体が、私の目の前に現れる。 均整の取れた体躯。 細いのに、しっかりと筋肉のついた苓さんの体。 それらが全て陽の光に晒されて、私は思わず自分の顔を手で覆った。 「ま、茉莉花……っ!じ、自分も体を隠して……っ!」 「えっ、あっ!ごめんなさい……っ!」 2人して半ばパニックになりながら、急いでシャワーを浴びに行き、着替えを行う。 私の体が上手く動かなくて痛みも感じていたから、シャワーは苓さんと一緒に浴びた。 その時にまた、その……。 甘い雰囲気になってしまいそうだったけど、これ以上遅くなってしまうとお父様がホテルに迎えに来てしまいそうだった。 私はお父様に苓さんと一緒に家に帰る事。 そして、苓さんも無事な事をメールで送ると急いでホテルを後にした。 ◇ 「た、ただ今戻りました……」 「お邪魔します」 私と苓さ
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