All Chapters of 愛よりもお金をとるのならどうぞご自由に、さようなら: Chapter 31 - Chapter 40

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33.新しい出逢い

佐奈side「佐奈ちゃん、おまたせ――――」家まで迎えに来てくれた蓮のポルシェのSUVに駆け寄って、助手席のドアを開けると、アクアマリンの爽やかな芳香剤の香りと、革張りの重厚感のあるシート、それにケーブルで繋がれたスマホから流れる最新のヒットソングが私を出迎えてくれた。「蓮さん、迎えてきてくれてありがとうございます。」「いいよ、気にしないで。今日は、遠くにドライブでも行こうと思っているんだけど、時間は大丈夫かな?」私が頷いて助手席のシートベルトをつけたのを確認してから、蓮は軽快にアクセルを踏んで首都高に乗るために走り出していく。背が高く栗色の明るい茶色の髪に緩くかかったパーマはおしゃれで、鼻が高く掘りの深い顔はサングラスをかけると海外のモデルのようでよく似合いかっこいい。ハンドルを握る蓮の横顔を見ながら、私は流れてくる曲を小さく口ずさんでいた。蓮は、私より三歳年上で父と行った財界のパーティーで知り合った。パーティーも含めると今日で会うのは五回目、二人きりだと三回目のデートになる。颯に一方的に別れを告げられてから二年半が経ち、実家に戻った私は何度も父に連れられて様々なパーティーに参加していた。時には、縁談をしたり、相手の男性と二人だけで出掛けることもあったが、会話のテンポや考え方などちょっとしたことで相手に興味を持てなくなり、一、二回会って終わりの人が多かった。五回も会うのは蓮が初めてだった。
last updateLast Updated : 2025-11-02
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34.蓮との進展

佐奈side葉山の街は、歩行者通路いっぱいに観光客がいて、外国人観光客も多く賑わっていて活気に溢れている。週末ということもあり、通りにはカフェや雑貨屋から美味しそうな匂いと明るい音楽が漏れ聞こえていた。蓮と歩いていると、ソフトクリームを持ったカップルが二人で写真を撮ろうと、一生懸命に腕を伸ばしている姿が見えた。しかし、なかなか上手くいかないようでクリームが溶けて手にかかり始めている。カップルの前を通り過ぎようとすると、中国語を話しているのが聞こえてきて、本当は誰かに写真を撮ってもらいたいが、頼めないで困り切っているようだった。「ごめんね、ちょっといい?」蓮はそのカップルに近づくと、流暢な中国語で「写真を撮りましょうか?」と話しかけている。途端にカップルたちは弾けるように明るい笑顔になり、蓮にスマートフォンを渡した。シャッターを押すために腕を伸ばしていた男性の手は、今度は女性の肩に置かれていて仲睦まじい様子がこちらにも伝わってくる。蓮は何度もアングルを変え、何枚か撮るとカップルたちは世転んで満面の笑みでお礼を言っている。蓮はなんてことはないという顔をして、「楽しんでね!いい旅を」と返して手を振り返していた。「中国語話せるんですね」「ああ、小さい頃から中国語と英語は習うように言われていてね。日常会話くらいなら出来るよ。佐奈ちゃんも話せるんだね」「ええ。私は中学・高
last updateLast Updated : 2025-11-02
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36.愛の告白

佐奈side葉山でランチを食べた私たちは、太陽の光に反射してキラキラと光る海を見ていた。昼下がりの海は波が穏やかで、癒されるような美しさだった。アスファルトから砂浜の道へ変わると、蓮はスッと手を差し出して私の足元を確認しながらエスコートしてくれた。砂浜についてからは、腕を曲げて私の方へ差し出してきたので、そっと手を添えて歩いていると、私の表情を伺うように顔を覗き込んできた。「佐奈、今日は夜まで大丈夫?ご飯だけど、この近くと家の方どっちがいいかな?」「大丈夫!お店が混んでいたら帰りも遅くなるし、夜ご飯は家の近くがいいな」(……夜までって蓮は何時頃を想像して言っているんだろう?)結婚を考えた相手もいたし、成人もしているから多少帰りが遅くなっても問題はない。だけど、父は蓮のことを知っていて、もし蓮が真剣に将来を考えてくれて誘ってくれているのなら、段階を踏んで真剣に付き合いたかったし、父の心象を悪くするのは今後の障害でしかない。どういうつもりで誘ったのか探りたいという気持ちもあり、家の近くと答えると蓮は嫌な顔も見せずに優しく微笑んだ。「そうだね、あまり遅くなるとご両親も心配する。早めに帰って都内でご飯にしようか。」ここで嫌な顔をするようなら次はないと思っていた。だけど、蓮は私
last updateLast Updated : 2025-11-03
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38.父の想い

38.父の想い佐奈side「佐奈、早かったね。良かったの?俺に気にすることないよ」「いいの。前の職場の人だけど挨拶だけで十分。蓮、さっきの交際の話だけど、私も前向きに考えてみるね」蓮の瞳を見つめながら真剣に答えると、蓮の表情は一気に柔らかくほぐれていく。「ありがとう。お互いの家のこともあるし、じっくり進めていこう。」私がいる環境や父のことを分かっている蓮は、変に気を遣うこともなく言うことも的確で、隣にいてくれて心強かった。蓮はじっくりと言っているが、私の気持ちが蓮に向けば、すぐにでも結婚へと進む予感がした。蓮もそのことが分かっていて、私に過度のプレッシャーをかけないように言ってくれたのだろう。その優しさにじんわりと心が温まる。蓮の腕を握る力をギュッと強めて静かに返事をする。颯にも話をしていない私の家庭環境。本当は、両親に紹介する時に颯にも全てを話すつもりだった。あの時は、私のことを色眼鏡で見ないで『木村佐奈』という一人の人間として私のことを想い好いてくれる人と一緒になりたいと思っていた。だが、颯に裏切られた今、家庭環境を知った上で交際を申し込んでくれた蓮がいる。
last updateLast Updated : 2025-11-04
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40.璃子の嘘

颯side人目につくのを避けるため、玲央と二人で夜のバーに入り、照明を落とした席に座ると、俺は玲央を真っ直ぐ見つめて核心に迫った。「単刀直入に伺います。金曜日、璃子はどんな用事であなたのところに来たのですか?あなたたちの関係は?」「……何度も言うように璃子は僕の婚約者です。璃子は、璃子の祖父であるあなたの会社の社長に命令されてあなたと婚約関係になりました。あなたと結婚しなくてはいけないことを泣いて悲しんで僕のところに来たんです。」玲央の言葉は、俺が先週社長から聞かされた情報と真っ向から対立していた。(社長の命令で俺と婚約?嘘だ、社長は璃子が俺を選んだと言っていた。それに金曜日も帰ってきてから、好きなのは、結婚したいのは俺だと璃子から言ってきた。だけど、玲央には無理矢理結婚させられると説明しているのか?)どちらかが嘘をついているか、あるいは璃子が両者に都合のいい真実を伝えているか、頭の中がぐちゃぐちゃになって混乱していた。「社長からは、璃子が俺を選んだと聞いています。無理矢理押し付けただなんて信じられません。」「それは、社長が自分の身を守りたくて言っているんじゃないですか?」「違います。それに、璃子は金曜日の夜に帰ってきてから、自分が結婚した
last updateLast Updated : 2025-11-05
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