颯side最終的に、俺は璃子を選んだ。それからすぐに社宅を退去し、社長が用意してくれた都心の一等地の高層マンションに住むことになった。来月からは璃子もこの部屋に来て、一緒に暮らすことになっている。一方の佐奈は、別れを告げた二週間後に退職を上司に伝え、約一か月の引継ぎを終えてから会社を去った。この二か月の間で、俺の周りの環境も、人間関係も、大きく変化していった。幸い、社内の人間で俺と佐奈が付き合っていたことを知る人はいない。俺が悪者になることはなく、社長の孫娘に選ばれた将来の婿として、むしろ一目を置かれるようになっていた。佐奈との過去が完全に消し去られたことに、俺は安堵と同時に言いようのない空虚感を抱いた。「――――颯、何か考え事?」仕事帰りに俺の部屋に寄った璃子が俺の顔を覗き込んで見ている。「ああ、別に。この高価な部屋にもまだ慣れなくて。それに、もうすぐ璃子と一緒に暮らすのかと思うと、なんだか現実感がないんだ。」「そんなこと気にしないで早く慣れて。颯は、これから先、私の隣で会社を引っ張っていく人になるんだから。」「ああ、そうだな……」佐奈を捨てた罪
最終更新日 : 2025-10-16 続きを読む