All Chapters of 夜明けと共に忘れるはずの恋だった: Chapter 41 - Chapter 50

142 Chapters

44.自由

美月side「涼真、お金を受け取っていたんだ……。陸に言われて悔しかったけれど、嘘じゃないかと疑ったり、私に確認しないんだ。少し迷ってから私のためと思ってお金を受け取って別れたんだ……」陸からの理不尽な扱いへの悲しみや怒りとは違う、涼真が、私との関係よりも金銭を選んだという事実への失望や虚しさを伴った怒りがこみ上げてくる。「少しは抵抗して欲しかったな……結婚も考えていたはずなのに、陸の言うことを聞いて私や友人からの連絡は一切無視して。涼真も辛かったかもしれないけど、しれないけど……でも、私って涼真にとって何だったの?」『顔だけの女』、『顔だけだから、顔よりお金を取ってお前は捨てられた』―――陸の言っていた言葉が、何回もこだまして私の胸を苦しめる。涼真との別れは、陸の策略によるものだったが、涼真自身も抵抗することなく、私との別れを選んだことで陸から言われたことがただの憎い言葉ではなく、現実味を帯びてくるのが悔しかった。身体の内側から震えが止まらなくなり、唇をギュッと噛みしめていないと涙が零れてきそうで、目の前のビールグラスを手に取って、勢いよく流し込むように飲んだ。「もうやめよう、それこそ自分が可哀想な女になってくる。自分のことを可哀想と思ったら、色んなことを悲観してしまいそう。私は、やっと自由になったんだ―――。もう誰かの都合に振り回されなくて良くなったんだ。私は、これから幸せになるんだ」
last updateLast Updated : 2025-11-09
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45.再会への希望

美月side世羅は、世界は世界でも、圧倒的な知性と家柄で異世界に住んでいそうなくらいに住む世界が違う人間だった。だけど、そんな人と偶然が重なって短期間で三回も会えたこと、そして会うたびに私に立ち向かう勇気と希望をくれたこと。世羅との出逢いを単なる偶然だとは思えなかった。世羅は、私の人生を動かすきっかけをくれた大きな原動力だった。そして、陸との関係を断ち切り、仕事でも成功を収めた今、もう一度、世羅に会いたくて仕方がなかった。例え世羅が、私と陸と三人のやり取りを覚えていなかったとしても、あの日私を助けようとしてくれたのに、世羅の優しさを振り払った理由を伝えたかった。その上で、「あなたのおかげで立ち向かう勇気をもらって、私は自由になりました」と報告したかった。今の自由と、会社の成功は、世羅との出逢いがあってこそだった。ビールを勢いよく飲んでほろ酔いになった私は、涼真との別れを受け止めるため涙を必死にこらえるために、顔をギュッと中央に寄せて怒っているような顔をしながら、必死で世羅のことをネットで探し始めた。「柳グループ、大阪のベンチャー企業と大学開発チームと提携」一番上に表示されたのは、三日前に更新されたばかりの業務提携のネット記事だった。記事によると、大学の研究室内で柳グループの研究チームと大阪のベンチャー企業の開発担当が共同で新薬の開発を行うというものだった。今月
last updateLast Updated : 2025-11-09
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46.世羅のいるキャンパス

美月side「次は終点、新大阪―、新大阪―」駅員のアナウンスが聞こえ、私は世羅がいるであろう新大阪へと到着をした。(世羅が、この場所にいるかもしれないんだ……)新幹線を降り、電車とタクシーを乗り継いで研究が行われているという大学へと足を運んだ。慣れない場所だが、家を出てからずっと、世羅に会えるかもしれないという淡い希望に胸が高鳴り、私の足取りは自然と軽やかだった。「あの……ネットの記事を拝見しまして。この研究所というのは、こちらにありますでしょうか?」受付に自分の会社の名刺を渡して場所を教えてもらった。時計の針はまもなく午後一時を指すところで、昼食を食べた人たちが食堂から各々の構内へ向かって歩いていて、人でごった返している。通路脇にある看板を見ながら、一番奥にある研究施設へと向かってひたすら歩いて行った。緑あふれるキャンパスは、楽しそうな大学生の声が入り混じり、こちらの気分まで明るくさせる。あの頃は、私の隣にはいつも涼真や友人がいて、ゼミや課題、就活など、目の前にあることへの憂鬱や愚痴を楽しく笑い飛ばしていた。就職は家を継ぐことが決まっていたが、大手を友人と受けたり、なんでも一緒だった。怖いものはなく、頑張れば報
last updateLast Updated : 2025-11-10
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48.拒絶

「なぜ、ここに……?」世羅は警戒したように、戸惑いがちに私の方を見ている。ここで引き下がっては、大阪まで来た意味がない。激しく動く胸の鼓動と少し震える手をギュッと握りながら、世羅の顔を真っ直ぐ見た。「突然ごめんなさい。ネット記事であなたのことを見つけて……私は、あなたのおかげで諦めかけていた人生や境遇と向き合うことができました。だから、直接お礼が言いたかったんです」「私のおかげ?人生と向き合う?話の内容が全く分かりませんが……」「私は、父の会社を守るために、好きでもない人と結婚しなくてはいけませんでした。相手は私のことを都合よく物のように扱って、愛情なんて全くなかった。だけど、それを指摘して守ってくれたのは、あなたでした」世羅の表情が、一瞬、何かを思い出したようにハッと目を見開いた。あの講演会、そして陸とのやり取りが頭の中で回想されているみたいだった。そして、彼はじっくりと私の心のうちまで見ようとするかのような深い視線で私を見つめている。その視線に、私の胸の鼓動が大きな音を立てて一段と早くなっている。「だから……」続きを話そうとする私を制して、世羅からかけられた言葉は冷静で冷たいものだった。「そうですか。……でも、私には関
last updateLast Updated : 2025-11-12
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49.新たなる闘志

美月side(当たり前だよ。私でも職場に押しかけて個人的な話をされたら、周りの人にも迷惑がかかるし、言い方は違っても帰ってもらうもん。当たり前の常識ある対応だよ、私が非常識なだけなんだから……)世羅の冷たい拒絶はショックだったが、彼の対応は当然だと理解していた。私は、来た道を今度はゆっくりと歩いて帰っていく。都会だが駅から少し離れたところにあるこの大学は、緑豊かで穏やかな雰囲気があり、日頃、時間に追われて目の前にあることに取りかかる生活をしている私に、「少し立ち止まって全体を見渡すように」とアドバイスしてくれているようだった。「陸と離れたらゴールじゃない。ここからがスタートなんだ。この三日間で、今後自分が何をしたいのか、会社をどうしたいのか、しっかりと考えてみよう」スマホに打ち込んでいたが無性に紙に書きたくなり、近くのコーヒーショップに入って、普段使っている手帳に書き込んでいった。私が叶えたいことは、陸の会社、つまり遠藤製薬からの完全な下請け脱却だった。陸の会社との取引単価の変更が叶って待遇は大幅に改善したが、それでも遠藤製薬の売上構成が半分以上を占めている。それではいつまで経っても仕事上で陸の会社との関係は切れない。今回は、陸の父親が真摯に対応してくれたが、代表が代わったり、ましてや陸が経営の中心に戻って嫌がらせを受けたりしたら、うちの会社はまた窮地に陥ってしまう。そうならないためにも、陸の会社との関係を少しずつ薄めていき
last updateLast Updated : 2025-11-12
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50.不意打ち

美月side依存度を下げるために出来そうなこと、頭の中に思い浮かべることを、ノートに図や目的を書きながら形にしていく。(新規取引先の開拓は、今人員を増やしてやっているから取組済み……と。あとは、下請けの下請けではなくて、直接販売元と取引出来たらいいのよね……)『ニッチ市場への参入』、『発注システムの外販』など思いついたことは、可能性や実現性が不透明なものでも一旦は書き出して整理することにした。世羅に会いに大阪に来たはずなのに、全国展開しているカフェで今後の会社の経営について真剣にノートに殴り書きをしている自分がなんだか可笑しかった。でも、今まで誰かに指示されて、誰かの言われた通りのことしか出来なかった時に比べたら、会社のことを考えるのは、何十倍、いや何百倍も面白くワクワクしている。陸との婚約で、自分の思考や心を失ったような気分になったからこそ、今こうして思い浮かべたことを更に考えてカタチにしようとすることはとても楽しかった。目の前のカップとお皿が空になっても勢いは止まることはなく、すぐさまホテルの部屋に籠って続きをひたすら書き、ネットで商品を調べたり中小企業の成功事例などを探した。うまくいくかは分からないけれど、今、この状況に満足せずに上を目指してもがき続けていたいと思った。私は、ここで満足して止まってい
last updateLast Updated : 2025-11-13
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