美月side「そう、だったんですね」「ええ。明日、すべて片付けてくる予定です。でも、それだけのために来るのは気が重かった。あなたが連絡をくれて良かったです。名古屋に来るのが少し楽しみになりました」「そんな……」「変な話をしてしまってすみません。せっかくの料理が冷めてしまいましたね。いただきましょうか――――――」世羅は、何事もなかったかのように気丈に振る舞い、ナイフで一口大に切って上品に口へと運んでいく。世羅の笑顔が無理をしているように見えて切なかったが、なんと言葉をかけていいか分からず、私も静かに料理を口に運んだ。世羅が抱えていた深い孤独と闇を理解すると同時に、そんな大切な決戦の前日に私と会うことを選んでくれたことに、言葉にできないほど感謝していた。私たちは、傷つけられた経験と孤独という、周りが知ることのない深い共通点で繋がっている。「あなたが退職したと連絡をくれた日、私はあなたの行動力に感激したんです」「感激、ですか?」メインディッシュの和牛のヒレを食べていると、世羅が透き通った声で私に話しかけてきた。私が世羅に感激することはあっても、世羅が私に対してそのような感情を持つなんて不思議で仕方なかった。
Last Updated : 2025-11-29 Read more