陸が嵐のように駆け込んできた。包帯でぐるぐる巻きにされた湊の右腕を見て、彼は大袈裟にため息をついた。「うわ!湊!ひでえ怪我だな!」湊はそれが陸だと分かった。事故の知らせを聞いて、すぐに潮崎市から飛んできたに違いない。彼は弱々しい笑みを浮かべた。「平気だ、死にはしない。腕が折れただけだ、しばらく養生すれば治る」陸は椅子をベッドの横に引き寄せ、座った。表情が少し微妙になる。「聞いたぞ、朝霧静奈を守ろうとしてこうなったんだって?」彼は湊を見つめ、歯がゆそうに言った。「湊、お前もやるねえ。女一人のために命までかけるとは」湊は枕にもたれ、事故の瞬間に静奈を庇った時のことを思い出した。眼差しが柔らかくなる。「ただの女じゃないからな」「そうだな、ただの女じゃない……」陸は小声で呟いた。彰人に結婚を決意させ、湊にここまで惚れ込ませ、命懸けで守らせる……自分の最も親しい二人の友人が揃って彼女にやられている。確かに、ただ者ではない。陸はふと、最も重要な問題を思い出した。彼は声を潜め、湊の耳元に顔を寄せ、心配そうに尋ねた。「彰人の奴……勘づいてないよな?」湊の瞳が暗くなった。「もう知られたよ」「はあ?!」陸は目を丸くし、思わず声を張り上げた。人に聞かれるのを恐れ、慌てて口を押さえる。「あいつの妻が好きだってバレたのか?!で……その……殴り合いにはなってないよな?」彼が一番心配しているのは、二十年来の親友同士が一人の女のために反目し合うことだ。湊は彼の慌てぶりを見て、逆に笑ってしまった。「もしあいつが殴りかかってきたとして、今の俺に反撃する余地があると思うか?」陸はハッとした。湊は手術を終えたばかりで、腕も上がらない状態だ。湊はドアの方を見つめ、静かな声に真剣さを滲ませた。「あいつは面白くないだろうな、間違いなく腹に据えかねているはずだ。陸、お前行ってやってくれ。俺には介護士がいるから心配いらない」陸は数秒迷ったが、頷いた。「分かった、彰人のところへ行ってくる。お前はゆっくり休め」実は彼にも、今の彰人の心情は容易に想像できた。自分の妻が他人に想われていると知って、怒らない男はいない。相手が他人なら、半殺しにして諦めさせれば済む話だ。だがよりによって
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