金縁眼鏡をかけて目が雪乃を捉えた。表情に変化はなかったが、一瞬の真剣さを雪乃は見逃さなかった。「そこに座れ」謙は短く命じた。「詳しく話せ」このむっつりスケベめ、静奈の名前が出た途端にこれだ。雪乃は密かに白目をむいた。向かいの椅子にゆっくりと腰を下ろす。今日の買い物の出来事、特に静奈の謙に対する評価を事細かに報告した。謙は万年筆を持つ手を止めた。声に感情の色はなかったが、微細な部分に関心が滲み出ていた。「本当にそう言ったのか?」「当然よ!間違いないわ!」雪乃は力強く頷き、身を乗り出して断言した。「謙兄!脈ありよ!静奈のあんたに対する印象、かなりいいわ!彼女と長谷川との腐れ縁さえ断ち切れば、絶対にあんたの番が回ってくるって!」謙はすぐには答えなかった。ただ口元に極めて小さな笑みを浮かべた。機嫌は良さそうだ。雪乃は好機と見て、にんまりと手を差し出した。「謙兄、これだけアシストしたんだから、功労賞として何かあってもいいんじゃない?前に約束した車はどうなったの?忘れたとは言わせないわよ!」謙は上機嫌だったため、余計なことは言わず、引き出しから車の鍵を取り出し、正確に彼女に投げ渡した。「くれてやる。ガレージにあるぞ」「ありがと!」雪乃は鍵を受け取り、興奮を隠せなかった。あのすぐ故障するオンボロ車とも、これでおさらばだ!以前から謙のガレージにあるスポーツカーを狙っていたのだ。どうせ彼は乗らないのだから、これからは自分のものだ!「謙兄、安心して!この最強のアシスト役がいれば、静奈を落とすなんて朝飯前よ!静奈が私の義姉になったら、私にも豪邸買ってよね!」「にも?」謙はその言葉を鋭く捉えた。眼鏡を押し上げ、レンズ越しに彼女を見る。「何の豪邸だ?」雪乃は深く考えず、大奥様が彰人に金を出させて静奈に別荘を買った話を漏らしてしまった。謙は静かに聞いていた。節くれだった指が無意識に机を叩く。表情からは何も読み取れない。しかし、冷たい眼鏡の奥で、瞳が深く光り、絶対に手に入れてやるという決意の光を放った。翌日の午前。静奈は臨床データの最終確認のため、センター病院を訪れた。医療スタッフとの打ち合わせを終え、帰ろうとした時だった。廊下を通ると、高い帽子をかぶっ
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