**** テレビの画面を漫然と眺めていた和彦に、部屋に戻ってきた賢吾がおもしろがるように話しかけてくる。「先生はスポーツに興味がないタイプかと思ったが、野球が好きなのか?」 数瞬、なんのことかと思った和彦だが、賢吾とテレビの画面を交互に見て、ああ、と声を洩らした。テレビでちょうど流れているのは、プロ野球の結果だ。視線はテレビに向けていながら、内容が一切頭に入っていなかった。「そういうわけじゃ……」 ちょっと考え事をしていたと言いかけて、口ごもる。賢吾が向かいの座椅子に座ったので、和彦はテレビを消した。「どうした、先生?」 短く息を吸い込んでから、和彦は思いきって用件を切り出した。「――そろそろ、戻ろうと思っている。あっ……、あの、マンションの部屋のほうに」 賢吾は表情を変えなかったが、両目にいくらか鋭い光が宿ったように見えたのは、気のせいではないだろう。 賢吾の部屋で、二人で過ごすことに馴染み始めたところで、和彦がこんなことを言い出し、怒らせてしまったのだろうかと思ったが、次の賢吾の発言を聞き、そうではないと知る。「鷹津にたっぷり慰めてもらったあとだと、俺と一緒に過ごすのが心苦しくなってきたか?」 和彦は咄嗟に返事ができなかった。このとき胸を過ぎったのは、賢吾に対する後ろめたさと恐怖だ。 目に見えて和彦の顔色が変わったのだろう。賢吾は軽く息を吐き出すと、自分の傍らを手で示す。その動作の意味を察し、和彦はのろのろと賢吾の隣へと移動した。 賢吾の片手が伸ばされ、ビクリと身を竦める。もちろん、賢吾が暴力を振るうはずもなく、優しく髪を撫でられた和彦は、視線を伏せつつ問いかけた。「怒ったのか?」「先に質問したのは、俺だと思うが」 賢吾の口調は柔らかだが、ちらりと視線を上げた和彦は、寒気を感じた。賢吾は、無表情だった。こういうときの賢吾は、和彦の心の奥底まで容赦なく浚い、本音を引き出そうとしてくる。 和彦と男たちの奔放な関係に賢吾が寛容なのは、いざという
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