「もちろん、あんたの背中にあるから、だからな」「……俺は先生に、よほど嫉妬深い男だと思われているのか」 ぼやき気味に呟いた三田村がおかしくて、声を洩らして笑っていた和彦だが、その間も手は動かし続けていると、今度は三田村の目の色が変わり始める。 三田村の変化を目の当たりにして、ゾクゾクするような興奮が和彦の中を駆け抜ける。ふと、外で三田村に言われたことを思い出した。 和彦が突然体を起こしたため、何事かという顔で三田村も倣おうとする。すかさず、肩を押さえて止めた。「どうした――」「三田村、うつ伏せになってくれ」 一瞬、物言いたげな様子を見せた三田村だが、和彦が何を求めているのか察したのだろう。素直に従ってくれる。 和彦は、露わになった三田村の背の刺青をじっくりと眺め、てのひらを押し当てる。そして、顔を伏せた。 繰り返し何度も背に唇を押し当てているうちに、最初はリラックスしていた三田村の体に変化が起こる。肌が再び熱を帯び、ときおり筋肉がぐっと強張るのだ。自分には穏やかな物腰で接してくれる男の、隠しきれない荒々しさが表れているようで、愛撫を加える和彦の体も熱くなってくる。「くすぐったいな……」「なら、ひどくしていいのか? 確かぼくに、手酷く扱われたいと言っていたな」「いや、俺じゃなくて――」 うろたえる三田村を無視して、肩先に噛みつく。甘噛みというものではなく、歯形がつくほどしっかりと。「……痛そうだ」 自分がつけた歯形を眉をひそめて見下ろした和彦は、悪ふざけが過ぎたと反省しながら、今度は舌を這わせる。虎の刺青を丹念に舐めているうちに、三田村の息遣いが次第に荒くなってくる。そんな三田村の背に覆い被さっていると、まるで自分が猛獣使いになったような、奇妙な錯覚が和彦を襲う。 今にも鎖を引き千切りそうな虎を、無謀にも自分の体を使って抑えつけているのだ。太い首を一振りしただけで振り落とされ、やはり太い前足に押さえつけられる姿まで、容易に想像できる。ただし、和彦が想像の中で感じるのは痛みではなく、快美さだ。
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