「信じられるか……。ヤクザが口にする言葉なんて」「ヤクザだって、形式は重んじる。特に、総和会が絡むときはな。あそこは、十一の組の守り神みたいな顔をしているが、裏を返せば、過干渉の疫病神みたいな面もある。だからこそ、先生には先に、長嶺組の加入書に名前を書いてもらう必要があった」 賢吾の話を聞いて、数日前、千尋が言っていたことを思い出した。あのとき千尋は、和彦が総和会に『召し上げられる』という言葉を使った。今の賢吾の話は、そのことに関わりがあるのかもしれない。「先生が、実は長嶺組と縁を切りたがっていると知って、さっき事務所で会った藤倉が、食えない顔をしていたぞ。今頃、ほくそ笑みながら総和会に連絡を取っているかもしれない」「……総和会の加入書に先に名前を書いたら、どうなってたんだ」「総和会の幹部の誰かのオンナにされたかもな」 和彦が眉をひそめると、賢吾はニヤリと笑う。「消耗品扱いだろうな。それなりの報酬はくれるだろうが、少なくとも自由はない。部屋に閉じ込められたうえで、ただ仕事をさせられる。痛いのは嫌いだと言っても、暴力も振るわれることもあるだろうし」「その言葉のどこまでが、本当だろうな……」「ああ、用心深いのはいいことだ。長生きできる確率が少しだけ高くなる」 指に唇を割り開かれ、すでに気力を使い果たした和彦は、賢吾を見上げたまま素直に口腔に含む。これは賢吾なりの、〈オンナ〉の服従心を試す儀式のようなものなのだと思い始めていた。 舌を刺激されてから、上あごの裏を指の腹で擦られると、ゾクゾクするほど敏感に感じてしまう。和彦の反応から察したのか、賢吾は低い声をさらに低くして言った。「ただ、お前ならわかるだろう。――今、感じるセックスを与えてくれているのは誰か、ってことは」 和彦が目を見開くと、満足したように賢吾は口腔から指を引き抜く。しかも、和彦の唾液で濡れた指をこれみよがしに舐めた。和彦の体の奥で、淫らな衝動が蠢く。 賢吾はさらに何か言いかけたが、携帯電話の呼び出し音が響いた。ドアを開けたまま部屋の外で待っている組員のも
Terakhir Diperbarui : 2025-10-29 Baca selengkapnya