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第17話(40)

「どこにでも着ていけばいい。そのために、落ち着いたデザインのものを選んだんだ。大事に仕舞い込まれるより、使い込んでくれたほうが、贈った人間は喜ぶ」 話しながら賢吾の手が、毛皮を撫でる和彦の手の上に重なる。「先生は自分から、あれが欲しい、これが欲しいと滅多に口にしないからな。周りの男たちが気を利かせて、いいものを身につけさせないと。なんといってもこれから先、組関係の人間と顔を合わせる機会が多くなる」「どういう意味だ」「――総和会会長が、個人的に先生と会った話は、もうこの界隈で広がり始めている。今のうちに先生に取り入っておこうと考える奴がいても、不思議じゃない」「たったそれだけのことが、どうして広がるんだ。というより、誰が広めるんだ」「さあ。総和会の中もいろいろと利害が入り乱れて、毎日、情報戦だ。それが大事な〈オヤジさん〉のことともなると、誰も彼も聞き耳を立ててるぞ」 澄まして答える賢吾の横顔を、和彦はじっと見つめる。和彦と守光が食事したことを知っているのは、何も総和会内部の人間だけではないと思ったのだが、口に出すのはやめておいた。賢吾に会話を導かれているような気がしたからだ。「あまり……ぼくを厄介なことに巻き込まないでくれ。長嶺組という組織だけでも、ぼくにとっては大きいんだ。それが総和会ともなると、想像がつかない」「いろんな種類の凶暴な魚が泳ぐ、でかい水槽だと思えばいい。一応の棲み分けはできているが、気を抜くと――」 賢吾の腕が肩に回され、引き寄せられる。唇に賢吾の息が触れた。「食われる。だからこそ、力を持つ魚の勢力下にいるのが安全だ」 賢吾の囁きと眼差しの迫力に、和彦は気圧される。賢吾の内に潜む大蛇が、ゾロリと身じろいだような気配を感じた。「……そう、なのか……」 和彦の怯えを感じ取ったのか、賢吾はおどけたように肩をすくめる。「さあな。俺は総和会の人間じゃなく、長嶺組の人間だ。ただ、オヤジはそのでかい水槽の中で、あれこれ企んでいるようだがな」「本当に、長嶺の男は怖い」「オヤジの
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第17話(41)

 料亭の座敷で守光から言われたことは、できることならすべて、冗談にしてしまいたかった。賢吾に伝えて、何かしらの現実味を帯びる事態を和彦は恐れている。 それでなくても和彦は、すでにある厄介事に巻き込まれつつある。 困惑する和彦とは裏腹に、賢吾は楽しそうだが――。「そういえば先生は、南郷の怖さも体験したんだったな」 できることなら、南郷に〈絡まれた〉出来事も報告したくはなかったが、鷹津の部屋で一晩過ごすに至った経緯を話さないわけにはいかない。賢吾への隠し事は、一つでも少ないほうがよかった。「……一応、あんたに報告はしたが、大したことじゃないんだ。ただ南郷さんは、ぼくみたいな存在が物珍しかったんだと思う」「男を骨抜きにする、性質の悪いオンナの存在が?」 和彦が睨みつけると、賢吾は低く笑い声を洩らす。 すぐに賢吾の腕から逃れようとしたが、肩にかかった手に力が込められる。どうやら和彦を離す気はないらしい。それどころか、頭を引き寄せれる。仕方なく和彦は、賢吾の肩に頭をのせる。「まったく、わがままなじいさんのせいで、クリニックの開業を祝う予定がズレた」「別に……、普通でいい。あんたや千尋と関わってから、何かと祝い事を体験させてもらっているんだ。どうせ祝うなら、開業一周年とか、そういうのにしてくれ」「――一周年でも五周年でも、もちろん十周年だろうが、好きなときに祝ってやる」 パッと頭を上げた和彦は、うろたえながら賢吾を見つめる。一方の賢吾は、ひどく機嫌がよさそうだ。「今の生活にすっかり馴染んだな、先生。クリスマスツリーを飾っているときにもポロリと洩らしていたが、ヤクザに囲まれての生活が、当たり前になってるだろ?」 ささやかな意地を張るように賢吾を睨みつけた和彦だが、すぐに諦める。「……それがあんたの、望みなんだろ」「先生は、長嶺組にとっても、長嶺の男たちにとっても、大事な存在だからな。去られるわけにはいかない。だからといって、狭い檻に押し込めたままってのは、俺の趣味に合わない。しなやかな獣ってのは、思いき
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第17話(42)

 守光も同じようなことを尋ねてきたなと思い、和彦は探るような視線を賢吾に向ける。父子が示し合わせて、あえてこんな質問をしているのではないかと思ったが、大蛇を潜ませた賢吾の目を見ていると、そんなことはどうでもよくなった。「ああ……。いままで生活してきたどの場所より、居心地がいい」 和彦の返事を聞くなり、賢吾は運転席の組員に短く指示を出す。あらかじめ打ち合わせをしていたのか、具体的な言葉はなかったが、それでも組員には十分通じたらしい。「先生、約束の時間まで少し余裕があるから、寄り道をしていくぞ」「それはかまわないが、どこに……?」 賢吾は、口元に薄い笑みを浮かべただけで、答えてくれなかった。 もっとも和彦は、三十分ほど車が走り続けたところで、自ら答えを出していた。 なんといっても、和彦の実家がすでに前方に見えている。「――一度、佐伯家というものを自分の目で見てみたかったんだ」 和彦の手を再びきつく握り締めながら、そんなことを賢吾が言った。 車は、佐伯家から少し離れた道路脇に停まる。和彦は顔を強張らせたまま、白い壁が一際目立つ、瀟洒で立派な邸宅をじっと見つめる。そんな和彦の顔を、賢吾は冷静な目で見つめていた。「あまり、懐かしいという顔をしないんだな」 賢吾の言葉に、思わず苦笑を洩らす。「こんなところに連れてきて、ぼくが佐伯家に帰りたがっているのか、確認したかったのか?」「あの家は先生の実家だ。帰りたいと思っても、咎められないだろ」「……その口ぶりだと、ぼくが実家に顔を出したいといえば、許可してくれるみたいだ」「かまわんぞ。先生がゆっくりしている間、俺は自分の仕事を済ませてくる」 余裕たっぷりに答える賢吾に鋭い視線を向けて、和彦は首を横に振る。「まだ、会いたくない……。ぼくは、自分の家族が苦手なんだ」「そうだろうな。自分の兄貴と出くわしただけで、あれだけ憔悴してたんだ。――只事じゃない」 どんな家庭だったのかと聞かれるかと
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第17話(43)

 佐伯家は相変わらず、自分がいなくても順調に動き続けているようだ。そう思った和彦は、淡い笑みを唇に湛える。自分だけが除け者にされているという感情はなく、むしろ安堵のようなものを覚える。「――……はっきりした。ぼくは、家族と会う気はない。少なくとも今は、会う必要を感じない。あんたに隠れて、佐伯家と連絡を取って助けを求めたりしないから、安心してくれ」「先生にその気があったら、とっくにそうしているだろ。その点は、俺は心配なんてしていない。ただ、先生と佐伯家の関わりについて、興味があっただけだ」「興味も何も……、ぼくが、佐伯家の規格から外れているという話だ。向こうも、同じことを思っているはずだ」 和彦が実家の建物を見つめていると、ふいに賢吾に髪を撫でられた。「先生は、物腰が柔らかくて優しげな人間に見えるが、ある部分じゃ、ヤクザよりよっぽど冷徹かもな。一番厄介な肉親への情を、自分の中ですっぱり切り分けている気がする」「……どうだろう。あの家にいると、自分がひどく冷めた人間に思えることはあったけど、一人暮らしを始めて外の世界を知ると、よくわからなくなった。ただはっきりしているのは、兄に会って動揺したのは情のせいじゃないということだ」 情を感じたのはむしろ、家族に対してではなく、長嶺組や長嶺の男たちに対してだ。英俊と会ったときの凍りつくような感覚を思い出し、和彦はそっと眉をひそめる。好きとか嫌いとか、そういう感覚で自分の家族は捉えられない。ただ、関わりたくないだけだ。 こう思うこと自体、やはり冷めたいのかもしれないと、なんの後ろめたさを覚えるでもなく和彦は考える。「冷めているかもしれないが、先生の本質は、情が深い。多情さと多淫ぶりで男を骨抜きにしながら、甘やかしてくれる。俺にとって――長嶺の男にとっては、先生が佐伯家の規格から外れていて、ありがたいがな」 髪に触れていた賢吾の指先が、スッと頬をなぞる。耳元に顔が寄せられたかと思うと、官能的なバリトンがこんなことを囁いてきた。「こんなヤクザから感謝されても、嬉しくないか?」
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第17話(44)

 首を傾げて返事を待つ賢吾の顔をまじまじと見つめてから、とうとう和彦は笑ってしまう。実家を見せられ、なんの嫌がらせかと思ったが、そうではないとわかった。 賢吾は、和彦の心の内を見たかったのだ。今の生活をどう感じているか、和彦が本当に佐伯家を忌避しているかどうか。もちろん、それだけではないだろう。受け取り方によっては、これは恫喝にもなりうる。ヤクザの組長に、実家の場所と状況を把握されているというのは、ある意味で恐怖だ。 賢吾が声をかけ、車が走り出す。実家前を通り過ぎるとき、スモークフィルムの貼られたウィンドー越しに眺めてはみたが、和彦の中で懐かしいという感情が込み上げることはなかった。それどころか、門扉を開けて家族の誰かが姿を現すのではないかと、少し緊張する。 すぐに実家は見えなくなり、肩から力を抜いた和彦はシートに体を預ける。賢吾は何も言わず、再び手を握り締めてくれた。** 賢吾にとって、〈仕事で出かけるついで〉に和彦をドライブに誘うというのは、単なる口実だったのだろう。 書類に目を通したところで和彦は視線を上げ、テーブルの向かいに座っている賢吾を見る。スーツから、ラフなセーター姿へと着替えは済ませてはいるものの、やっていることは、仕事だ。さきほどから膝の上にノートパソコンを置き、熱心に何か読んでいるかと思えば、ときおり携帯電話で、和彦の知らない案件について誰かと話している。 その様子から、賢吾が決して暇を持て余しているわけではないとわかる。それでも午前中いっぱいを使って和彦を外に連れ出してくれた。賢吾なりに、クリニック開業までの労をねぎらってくれたと考えるほうが自然だ。 再び書類に視線を落として署名をしていると、なんの前触れもなく賢吾が言葉を発した。「――結果としてよかったかもな」 驚いて顔を上げた和彦が見たのは、賢吾が携帯電話の電源を切っているところだった。どうやら、もう仕事の電話をする気はないらしい。「えっ……?」「クリニック開業祝いの約束を、オヤジに取られたことだ。おかげでこうして、先生とゆっくりできる」「ぼくの休みを潰しただろ」「どう
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第17話(45)

 勝手な言い分だと思ったが、あながち間違ってもいないので、反論できない。それに、本宅で過ごす時間は嫌いではなかった。 和彦は鼻先を掠める香りに気づき、視線をある方向に向ける。応接間の一角には、華やかなスペースができていた。クリニックの開業祝いに贈られた胡蝶蘭たちだ。寒さも直射日光も避けられる場所が、長嶺の本宅にはたくさんある。その一つが、この応接間というわけだ。 和彦も組員から育て方を聞いて、恐る恐る鉢の一つの世話を始めたところだった。 書類すべてに署名を終えると、賢吾が組員にコーヒーを運ばせてくる。書類をまとめてテーブルの隅に置いた和彦は、さっそくコーヒーにミルクを注いだ。「先生、明日もクリニックは休みなんだから、本宅に泊まっていったらどうだ」 さりげなく賢吾に切り出され、コーヒーを混ぜた和彦はちらりと視線を上げる。返事は決まっているとばかりに、賢吾は薄い笑みを浮かべていた。「……ついこの間、たっぷり世話になったばかりだと思うんだが……」「いいじゃねーか。うちの連中も、先生を気に入ってるんだ。メシを食わせたり、花の世話を教えたりしてな。男所帯のこの家も、先生がいるだけで空気が柔らかくなる」「男のぼくが加わっても、男所帯に変わりはないだろ」 ぼそっと指摘すると、賢吾は機嫌よさそうに声を上げて笑う。和彦はそんな賢吾につられるように、笑みをこぼしていた。 こうしてのんびりと過ごしていると、つい数時間前に実家を見たという現実が、どこか夢の出来事のように感じられる。もっとも、家族と出くわしでもしていたら、こんなふうに落ち着いてはいられなかっただろう。 ただ、いつまでも佐伯家と音信不通のままではいられない。 和彦は、思わず賢吾にこう問いかけた。「ぼくはこの先、実家とどう接していけばいいんだろう……」「先生と佐伯家次第だ。互いに干渉しないという要望が合致すれば、円満に過ごせる。衝突するなら――そうだな、俺の養子になるか? そうすれば先生は、佐伯の人間でなくなる」 咄嗟に反応できない和彦に対して、賢吾はニヤリと笑い
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第17話(46)

「頼むから、部屋の外でそんなことを冗談でも言わないでくれ。ここの組員たちに睨まれたくない」 ヤクザの組長からこんなことを言われると、冗談とわかっていながらも心臓に悪い。ただ、憂鬱さに捕らわれそうになった気持ちは、賢吾のその冗談でふっと軽くなっていた。 コーヒーを啜った和彦が何げなく視線を上げると、賢吾がこちらを見つめていた。そして、自分が腰掛けているソファを指さした。こちらに座り直せと言いたいのだ。わずかにうろたえた和彦だが、結局、賢吾の指示に従う。 案の定、賢吾の隣に座った途端、肩を抱かれて引き寄せられた。 賢吾の大きな手が、ワイシャツの上から和彦の肩先を撫でる。最初は背筋を伸ばしていたが、手の動きに促されるように、和彦はゆっくりと賢吾にもたれかかった。「……仕事、しなくていいのか?」「急ぎの仕事なら、もう片付けた。今日、先生とデートするためにな」「何言ってるんだ――」 内心でうろたえながら視線を上げると、賢吾が返してきたのは、熱を帯びた強い眼差しだった。この瞬間、和彦の胸の奥で妖しい衝動が蠢く。 甘い危惧を覚え、反射的に体を離そうとしたが、肩にかかった腕にがっちりと押さえ込まれて動けない。 耳に熱い息がかかり、和彦は小さく身震いする。そのまま賢吾の唇が耳に押し当てられた。「あっ……」 濡れた舌先が耳の形をなぞる一方で、油断ならない手にワイシャツのボタンを外されていく。和彦は微かに声を洩らすと、耳朶に軽く噛みつかれる。疼きが背筋を駆け抜け、たまらず賢吾の膝に手をかけはしたものの、完全に身を任せるまでにはいかない。 和彦は応接間のドアに視線をやる。ドア一枚隔てた向こうでは、組員たちが行き来する気配がするのだ。「ここは落ち着かないか?」 おもしろがるような口調で賢吾が言い、きつい眼差しを向けながらも和彦は頷く。 和彦の羞恥心を煽ることで性的興奮を覚える傾向がある賢吾だが、珍しくあっさりと手を引いた。もちろん、行為をやめるためではなく、場所を移るために。
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第17話(47)

** 客間に連れ込まれると、布団を敷く間もなく畳の上に押し倒され、和彦は裸に剥かれる。獣が襲いかかるように、覆い被さってきた賢吾は容赦なく、和彦の肌に愛撫を施し始める。 寒さで鳥肌が立った肌を熱い舌でじっくりと舐め回され、痛いほど強く吸い上げられて、鮮やかな鬱血の痕を残される。 期待で凝った胸の突起を口腔に含まれたとき、和彦は深い吐息をこぼして仰け反っていた。濡れた音を立てて執拗に突起を舐られ、吸われたかと思うと、歯を立てられて引っ張られる。「うっ……」「先生、足を開け」 傲慢に賢吾に命令され、和彦はぎこちなく従う。羞恥はあるが、身を捩りたくなるような興奮のほうが勝っていた。その証拠に、和彦の下肢に視線を遣った賢吾が、唇の端を持ち上げるようにして笑う。 敏感なものを無遠慮に握り締められ、一瞬息が詰まった。「寒い思いをさせて可哀想だと思ったが、こっちはもう、熱くなってるようだな」 握ったものを手荒く扱かれて、和彦は首を左右に振って反応するが、寸前のところで声を堪える。そんな和彦を、賢吾はおもしろそうに見下ろしてきた。「遠慮せず、声を出したらどうだ」「……うる、さい。ぼくの勝手だろ」「確かに、先生の勝手だな。だったら俺も、勝手にさせてもらおう」 和彦はのろのろと片手を伸ばして、賢吾の頬に触れる。「いつもは勝手にしてないような、言い方だな」「してないだろ。なんといっても俺は、紳士だ」「どの口が――」 ここで賢吾に唇を塞がれた。口腔深くまで舌を差し込まれ、唾液を流し込まれる。息苦しさから、和彦は賢吾の下で軽くもがいていたが、口腔で蠢く舌に刺激されているうちに、体の奥で肉欲の疼きを自覚する。そうなると、もう賢吾に支配されたも同然だ。 指を濡らさないまま、内奥の入り口をまさぐられ、柔な粘膜を擦り上げられる。痛みを予期して体を硬くするが、和彦の体を知り尽くしている賢吾の指は、手荒なくせに傷をつけるようなことはしない。 内奥の浅い部分に指を含まされ、和彦は腰を揺らす。じわりと広
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第17話(48)

ところで、佐伯家の人間は、先生の性癖を把握しているのか?」「……性癖?」「こうして男と寝ているってことだ」 和彦は眉をひそめてから、ふいっと顔を背ける。「わからない。知っていたとしても、面と向かって指摘されたことはない。――ぼくが誰と寝ようが、少なくとも父は、それを言う資格はない」「興味をそそられる言い方だな」 内奥から指が引き抜かれ、衣擦れの音がする。少しの間を置いてから、熱く凶暴な形が内奥の入り口に押し当てられた。「あっ……」 狭い場所をゆっくりと押し広げられ、太いものを呑み込まされていく。和彦は間欠的に声を上げながら上体を捩り、下肢を支配される苦しさと、うねるように押し寄せてくる熱い感覚に煩悶する。「男と寝ているという事実を知っていたとしても、先生のこんな姿は想像もつかないだろうな。肌を上気させて、誘うように腰を揺らして、真っ赤に色づいた粘膜を捲り上げながら、男のものを懸命に受け入れている――」 繋がった部分を指で擦られて、和彦は上擦った声を上げる。両足をしっかりと抱えられて腰を突き上げられると、内奥深くで重い衝撃が生まれる。一瞬あとにじわじわと広がるのは、狂おしい肉の愉悦だ。「あっ、あっ、ああっ」「お高くとまった官僚一家に、今みたいな色っぽい姿を撮った映像を送りつけたら、一発で縁が切れるかもしれないぞ」 乱暴に数回突き上げられて、賢吾とこれ以上なくしっかりと繋がっていた。ふてぶてしく息づく欲望は力強く脈打ち、内から和彦の官能を刺激してくる。「……面倒事を隠すのは、得意なんだ、ぼくの家族は。……それに、刺激したところで、あんたの得になるとは思えない」「佐伯家と縁を切らして、憔悴する先生を見なくて済むなら、それだけでも俺にとっては得だと思うが?」 本気で言っているのかと、じっと賢吾を見上げた和彦は、すぐに笑みをこぼす。「大蛇の化身みたいな男が、ずいぶん優しいことを言うんだな」「先生に骨抜きだからな、俺は」 賢吾の手が、両足
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第17話(49)

 喘ぐ和彦を、賢吾は真上から見下ろしていた。いつもなら両腕を伸ばして賢吾にしがみつき、背の大蛇を思うさま撫でるところだが、今日はそれは叶わない。賢吾はパンツの前を寛げただけで、セーターを脱いですらいないのだ。 どうして、と思ったとき、前触れもなく内奥から賢吾のものが引き抜かれる。手を掴まれて引っ張り起こされた和彦は、わけもわからないまま畳に両手を突き、腰を突き出した羞恥に満ちた姿勢を取らされる。そして今度は、背後から貫かれた。「あっ――……」 強く内奥を擦り上げられ、その衝撃で畳の上に精を迸らせてしまう。前のめりに崩れ込みそうになったが、賢吾の腕に引き止められ、乱暴に腰を突き上げられた。「うっ、あっ、待って……くれ。少し、待って……」 和彦は前に逃れようとしたが、両腕で抱き寄せられた挙げ句、胡坐をかいた賢吾の両足の間に、繋がったまま座らされていた。和彦は背を弓形に反らし、下から突き上げられる苦しさに呻き声を洩らす。しかしその呻き声は次第に、甘さと妖しさを帯びたものへと変化していた。 緩やかに腰を揺らしながら賢吾の両手が、和彦の胸の突起と、精を放ちながらもまだ力を失っていない欲望を愛撫してくる。「わかるか、先生? 先生の尻が、絞り上げるように締まっている。……口ではわがままは言わないくせに、こっちのほうは、とんでもなくわがままだな。与えても、与えても、いくらでも欲しがる。今まで、誰かに言われたことはないか?」 笑いを含んだ声で賢吾に淫らな言葉を囁かれ、和彦としては振り返って睨みつけたいところだが、些細な動きで快感を逃してしまいそうで、それができない。「あんた以外に、誰がそんな恥ずかしいことを、言うんだっ……」「このほうが、先生も興奮するだろ。――ああ、それと、もっと先生が興奮する演出を用意してある」 賢吾が何を言っているのか、快感に霞んだ頭では理解できなかった。意味を問おうと唇を動かしかけたとき、賢吾が〈誰か〉に向かって言葉を発した。「――入っていいぞ」 和彦は体の正面を
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