All Chapters of シャンデリアの舞う海へ: Chapter 1 - Chapter 10

17 Chapters

0話 ステップ 第一幕

 0話 ステップ 私の隣には貴方がいる。それは永遠と続くものだと思いながら、彼とのダンスを楽しんでいた。私は体を彼に預けるとフフッと微笑みながら、見つめる。彼は私より若い、それでも私とのダンスを選択してくれた事が嬉しい。 「リオン」 「──ん?」 私の言葉を待ちながら、ステップを踏んでいる私達。そんな二人を遠目から見つめてくる彼女の視線が痛い。きっと私がリアンを独占している事が許せないのだろう。 現実はミシャを選ばず、私の手をとった。それが答えであり、私が彼女に勝った証明の一つ。 まぁ? 私が彼を支配しているからミシャの元へ行けないんだけどね。 嬉しそうに彼女の悔しそうな表情を思い浮かべながら、言葉を紡いでいく。 「私をダンスの相手に選んでくれてありがとう」 「……あぁ」 「今日の貴方、とても素敵ね。いつもより輝いてる」 「……そうか?」 「ええ」 彼は困ったような顔をしながらも、私の言葉に声に答えてくれる。その度に満たされていく心の中。表面的に出さないようにしないと、と自分を戒めながら、ふんわりと笑顔を作っていく。 リオンと初めて出会ったのは二年前のこの日。このダンス会場で彼を見つけたの。華奢な体に赤い髪、その間にふんわりと隠れている金色に光る髪。変わった髪色をしている子ね……それが彼の第一印象。本来なら自分より年下の子なんて興味がなかった。 私の運が悪かったのか、色々な意味での経験不足な男ばかりだった。だからきっとリオンも同じだと思っていたの。 ──もう、二年経ったのね キラキラ輝く、天井に敷き詰められているシャンデリア達が微笑みながら「あの時」へと戻してくれるの。  第一幕 私は視線を彼からシャンデリアへと注ぎ、ホウッとため息を吐く。週末になると開かれるこのダンス会場。ここには色々な立場の人達が集まり、ひと時の癒しとして出会いとダンスを楽しんでいる。 自分の意思で来た訳じゃないのに、何故だか天井から零れ落ちそうなシャンデリアを見る事が楽しみになっている。お父様が「結婚」の二文字を出して、ここに来ている訳だけど、そんな気は起きなかった。 「綺麗」 シャンデリアはまるで海のようで幻想的な絵画を見ているように感じた。私はその光景に目を奪われていると、声をかけてくる人がいた。 「シャデリーゼ様ですか?」 私はフッと我
last updateLast Updated : 2025-10-15
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第二幕〜第四幕

第二幕 ──お嬢様   その言い方がなんだか含みもあって、そこでもカチンときそうになった。それでも|ここ《・・》はダンス会場なのだから、罵声を浴びせる訳にもいかず、堪えてしまう。 リオンはそんな私をよそに、サッと手を伸ばした。ふんわりと私の手に重なるとふふっ、と微笑みを漏らす彼を見て、なんて悪魔かしらと思ってしまう程、ある意味似合っている。 「どうしました? お嬢様」 「……その「お嬢様」って止めてくれない?」 「どうしてですか?」 私達は手を合わせ、体を寄せ合いながらステップを踏む。正直ダンスが得意ではなかった。しかし日頃の練習の成果もあり、ここまで踊れるようになった。 以前の私ならリオンの言葉に返答なんて出来なかっただろう。 (練習してよかったわ……) 私達がステップを踏めば踏む程、ドレスが揺れている。まるで見えない力に引き寄せられるかのように、雰囲気と空間に身を任せていく。 世界にどっぷりと浸かる、その言葉が一番似合うのかもしれない。 「私は「お嬢様」なんかじゃないわ、名前があるのですから」 「それはそれは」 「貴方からかってる?」 「そんな事ありませんよ?」 私とリオンの視線がバチッと合う。彼はニッコリと微笑み、一方私は苦笑いしか出来ない。 「そんな顔していると楽しめるものも、楽しめませんよ?」  顔と顔が近すぎて、彼の吐息が私の耳を掠める。 ──ドクン。 最初から正直印象が良くないリオン。なのにそんな彼の不意打ちに反応してしまう自分がいて戸惑う。 「っつ……」 なんだか悔しくて、恥ずかしいと思った瞬間だった。第三幕 「恥じらう姿も可愛らしいですね」 「は?」 「そんな言葉使いはよくありませんよ?」 隠したくても隠す事が出来ない感情の色。顔に出てしまった事を後悔しながらも、彼の姿をチラッと確認する。奇抜な髪色だけど、凄く綺麗な子。見た感じ私よりも年下なのは明白だ。 彼の言う通り「楽しむ」のが一番なのかもしれないと思い、今までの彼の言動をなかったモノのように割り切る。それがいい。きっと…… そう思いながらも、少し気が抜けてしまったのだろうか。私は少しよろけてしまいそうになる。  「気を抜いてはいけませんよ」 そう呟きながら、よろけそうになった私の身体をサポートし、元の体制に戻す彼。私は咄嗟に
last updateLast Updated : 2025-10-15
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第五幕〜第七幕

第五幕 自分のペースで進みたいのに、リオンがそれを許さない。正直彼の事なんてどうでもよかった。どうせ目立ちたいだけ、そう思って変な目で見てただけだった。 ──それなのに。 私の身体をしっかりサポートしながら、余裕のある笑みで私を見つめるリオン。その視線が熱くて、痛くて、頬が赤くなってしまいそうになる。 視線から逃れようにも、密着度が高すぎだ。変なプライドで先ほどのように体制を崩してリオンに迷惑をかけるのも嫌だ。本来なら主導権を握るのは私なはずだった。 エスコートをされる前に自分が優位に立つ事で、安心をしていた部分もある。リオンはどうだか分からないけれど、他の男性からすると、私みたいなタイプはめんどくさいと思う。 突き放す事で、どうにか回避出来ると思ってたのが甘すぎたのかもしれない。 「何を考えているのです?」 「へ?」 「顔に出ていますよ?」 「は、はあ?」 「先ほど「楽しむ」と言った言葉は偽りだったのでしょうか」 私が他事を考えている事に気付いていたリオンは|わざと《・・・》落胆したように演技をし始めた。彼からしたら、私の反応を見る為にしただけのようだったが、そんな事に気付く事が出来ない私は、内心「マズイ」焦り始める。 「楽しんでいるわ」 「本当ですか?」 「勿論よ。じゃなくとダンスに対して失礼でしょう?」 「そうですよね。シャデリーゼ様のような素敵な方がダンスを冒涜するような真似しませんよね……僕の勘違いだったのかもしれません」 ──うっ……。 真っ直ぐ向けてくる言葉には悪意があるように感じて、ない。純粋に思っている事を口にしているだけみたいだ。私はリオンの様子を伺いながら、余計な事を考えるのはやめようと心に誓った瞬間だった。 第六幕 今までロクに殿方と踊った経験のない私は二曲目で疲れてきた。リオンの手から逃げようと何度も試みたけど、なかなか離してくれなくて困るのが本音だ。 最初、このダンス会場に来た頃は、色々な方に声をかけられていた。しかし私はお父様の言いつけの通りに来ていただけで、誰かとダンスを共有する事なんて、興味がなかった。 一応講師がついていたので、ある程度は踊る事は出来る。だけど、どうしてもこの空間に馴染めなかったのだ。 私とリオンの姿を見ている人達から、色々
last updateLast Updated : 2025-10-15
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第八幕~第十幕

第八幕  テラスに着いた私達は夜風に当たりながら、ふうと一息を吐く。少し喉が渇いたなぁと思いながらも、この場所から離れるのがおしくて、留まってしまう。 そんな私に気付いていたように、グラスを二つ手にし、戻ってくるリオンの姿が目に入った。 「何処に行ったのかと思ったわ。自分から誘っておいて、逃げたのかと勘違いしちゃったじゃない」 「そんな事しませんよ、僕は」 「……知ってる」 さっきまでリオンに翻弄されていた私はもういない。 「どちらがいいですか?」 にっこりと微笑みながら目線をグラスに落とす。別々の飲み物を持ってきたようだ。一つは綺麗なブルー、もう一つは情熱のレッド。 私の好みは「ブルー」だ。まるで海を表現しているような美しさに惹かれてしまう。だからそっと、ブルーの色のカクテルに手を伸ばした。 「こちらがいいわ」 「では」 「ありがとう」 レッドのカクテルはリオンの髪色とよく似あっている。私はそんな事を考えながら、コクリと乾ききった喉を潤していく。見た目はドロッとしているのに、アッサリとした口当たり。見た目との違いに驚いてしまうけど。これはこれで素敵。 「同じ種類のものにしてもよかったのですが。シャデリーゼ様が好きそうなカクテルだと思ったので、違う種類をお持ちしてよかったです」 「まるで、私の好みを知っているって言い方ね?」 「ま……まぁ」 「誰から聞いてきたのかしらね」 ほんのりと顔が赤く染まっていくリオン。私は意地悪がしたくて、指摘してみたけど「お酒のせいです」と交わされてしまった。 「そういう事にしておきましょうか」 第九幕  二人で談笑をしている私達を遠くで見つめているのはミシャ。リオンに近づきたいのに近づく事が出来ない歯がゆさを抱えながら、ため息を吐いた。 「あんな笑顔、見た事ない…&hellip
last updateLast Updated : 2025-10-17
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タイミング〜3アップ

タイミング いつの間にか寝てしまっていた。私はムクリと起き上がると、昨日お風呂に入ってない事に気付く。気を張っていたのと、お酒がまわっていたので疲れたのかしら。 この事がお父様に気付かれたら、|また《・・》怒られる。私も一応令嬢だから、そういう所はきちんとしなさいと叱られた所で、今日だ。まぁ自室にも簡易的なお風呂があるのだからいいのだけど…… 私には専属のメイドがいる。いつも私の生活や体調管理をしてくれているルビー。私とルビーは年が近い。今年30になった私の二つ上になる。 昔は優しかったのに、婚期を逃してしまった私に対してお父様と同じように性格の改善を要求し始めたのだ。私は自分の性格を好んでいるし、男性の為に変えるつもりもないから、大変。 令嬢の中で、年が近い子達は皆結婚している。タイミングを逃した私を心配しているようで、色々な縁談が来るようになった。 何度も何度も逃げ続けている私に対し、怒ったのはルビーとお父様。正直、お父様は怒りを通り越して呆れているようだが、ルビーは辛抱強く、叱ってくれている。 (まぁ……私が悪いんだけどね) そんな事を考えてもキリがない事くらい、私だって理解している。過去は戻ってこないのだから、今の現状でどう動くかが重要。 「んー」 考える事に疲れた私は、両手を上にあげ、背伸びをする。そしてまだ誰も起きていない時間帯なのをいい事に、お風呂に入る支度をした。1アップ お風呂のドアを開けると、水が張られている事に気付いた。そしてそこには一枚のメモが貼られている。私はネグリジェを脱ぎ、そのメモへと手を伸ばした。 <いつでも入浴出来るように水を張っています。後は自分で調整してください> 筆跡を見るとルビーの字だ。私は見抜かれていた事に、肩を落としため息を吐く。最後に小さな文字で、書かれていた言葉を見つめながら── <隠そうとしても無駄ですからね> 綺麗な文字でそう書かれていた。ああ
last updateLast Updated : 2025-10-17
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4アップ〜6アップ

4アップ ルビーとの気まずい空間が続き、変に疲れてしまった。何を言っても丁寧に返されてしまうから、何も言えなくなった私は無言でいるしかなかった。ルビーも何か考え事をしていたようで、会話を続ける気がないようにも見えた。 私は癒しを求めるようにフラリと自室を出た。お茶が欲しい。そこまで知識はないけど、私はお茶好きで有名。自分でも理解している。それほどお茶を愛しているのだ。 「フランス……いないかしら」 フランスは、執事だ。お茶を入れるのが上手くて、何かある事に彼の元へ行くのが習慣になっていた。呼び鈴を鳴らしてくれれば、こちらから行きますと何度も言われたが、それじゃ意味がない。 屋敷を歩くのも癒しの一つになっているから、楽しめる。まるで逃げているフランスを見つけるゲームをしているよう。彼はいつも上手く隠れているから、中々の暇つぶしになる。 「おや。どうした? シャデリーゼ」 「げっ……お父様」 一番会いたくない人に遭遇してしまう事もある。それは運が悪かったと思うしかないのだが、どうしても言葉や態度に出てしまうのだ。 「「げっ」とは何だ。父に言う言葉か?」 「いえ。そのような事はありませんわ。お父様がお屋敷にいるとは思わなかったので……」 忙しいお父様が屋敷にいる事自体が珍しい。それもまだ昼間。何かあったのかしらと首を傾げてしまったが、ハッと我に返り、体制を元に戻した。 「今日は来客があるのでな。お前こそ何をしている」 「……フランスのお茶が飲みたくて彼を探しているのです」 フランスに用事があると言う事は|また《・・》気に入らない事があったと言う事。それに気づいたお父様は頭を抱えながら、言葉を落とした。 「何か嫌な事があったのだな。お前は……少しは自分と言うものを理解す──」 「説教は夜にしてください。私はフランスに用事があるのですから」  私はお父様の言葉を遮って、自分の言葉を無理矢理被せた。今説教を受けるのなら、いつものように夜受ける方がいい。昨日は私があんな
last updateLast Updated : 2025-10-17
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7アップ〜10アップ

7アップ 私達がティータイムを楽しんでいる時、お父様は来客してきた方と客室で話をしていた。応接室を私達が使用しているから、こちらを選んだようだ。ここは客室なのだが、基本的にお客を持て成すのは応接室と決まっていた。 「すまないね。狭くて……」  困ったように話をかけるお父様。今、娘が使用しているから、ここしか場所がなくてね、と苦笑しながら椅子に座った。 「この部屋も美しいではないですか。狭くもないですし」 応接室に比べたら狭い、しかし一般的には広い方なのかもしれない。来客の男はお父様の心を汲みながら、腰をかけた。 「そう言ってくれるのなら、よかったよ。気を遣わしてすまないね」 私の前でのお父様とこの男の前での態度は明らかに違う。娘には厳しく、口うるさいのだが、他者から見たら、少し気弱に見える。 「しかし君から連絡が届いた時は、驚いたよ。しかも娘の事を聞きたいと言われた時には度肝を抜かれた」 「グール伯爵がそのような事を言われる事に、私も驚きですが」 「ははは。すまん、つい」 二人はルビーに用意させたコーヒーを楽しみながら、話に華を咲かせた。ルビーの入れたコーヒーは、フランスに比べれば味や風味は落ちるのだが、そこら辺のメイドよりは腕がある。基本はフランスに淹れてもらっているのだが、私が独占している時は、いつもこんな感じ。 正直、私に対してお父様は、かなり甘いと思う── 「それで、娘の何が聞きたいのかな?」 「シャデリーゼ嬢の好きな色を聞きたいと思いまして……」 好きな「色」を聞きたいと言い出した男の言葉に、驚きを隠せないお父様。きっと何か意図があって聞いているのだと思うのだが、手紙でもよかっただろうに、と言った。 「どんな環境で生活しているのかも拝見したかったのもありますね」 「ほう。そんなに私の娘の事が気になるのかい?」 これは、もしや、と思いながら、探るように会話を紡いでいく。お互いがお互いを探り合っている感じがする。それなのに一切の緊
last updateLast Updated : 2025-10-18
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婚約の申し出〜3カウント

婚約の申し出 リオンはどちらかと言うと分かりやすい挑発をするのに、クベルト伯爵はやんわりと日常の会話の中に混ぜ会話を作っていくタイプだ。そう考えたら経験が物語っている。 そこまで長い時間いた訳じゃないのに、緊張のせいで長く感じた。でも緊張はあったけど、疲れは感じない。クベルト伯爵が気を使ってくれたからだろう。そう考えたら、大人だなぁと思う。 リオンと比べるつもりはなかったけど、同じ顔をしているせいか少し比べてしまっている。リオンはリオンで、伯爵は伯爵なのに。そういう所、私って子供だな、って実感したりして。 私も30歳だし、大人なのに、同じ対応が出来るかと言えば正直、自信がない。だから本当に尊敬出来る方だと感じた。 「シャデリーゼ、入っていいか? 少し話がある」 部屋の外からお父様の声が聞こえてきた。私は自分からドアに近づき、ガチャとドアノブを回し、迎えた。お風呂上りなのか、髪を下ろしている。いつものお父様と違う印象で、新鮮に感じた。 「どうしました? お父様」 「失礼する」 「どうぞ」 私は化粧台の椅子を用意すると、そこにお父様を座らせた。話があると言っていたけど、どんな内容なのかしら。私はベッドに腰をかけ、お父様が話を切り出すのを待っている。 ──ゴホン お父様は咳払いをすると、覚悟を決めたように話し始めた。 「クベルト伯爵の事、どう思った?」 「どう思ったとは? 素敵だと思いますよ」 「そうか……」 緊張しているのだろうか。いつものお父様の威厳を感じられない。私はお父様が何を言いたいのか分からずに、待っているのだが、痺れを切らして、こちらから切り出す事にした。 「どうしてクベルト伯爵が来たのですか?」 「お前の様子を確認したかったようだ」 「何故?」 「クベルト伯爵のご子息とダンス会場で会ったのだろう? どうやら感触を確認したかったようだ」 感触? 私の何を知りたかったのかしら。お父様は遠まわしの言い方
last updateLast Updated : 2025-10-18
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4カウント〜7カウント

4カウント あの時のダンス会場の時のドレスとは違う雰囲気のドレスを選ぶ事にした。色々試着したけれど、自分の好きな色でそろえるのって素敵だな、と思い、その提案に乗る事にした。私一人では決められなかったから、ルビーに相談していたのだけど、本当に助かったわ。 私は自分の好きな色の「ブルー」のドレスを試着し、鏡で確認してみる。濃いブルーとは違って、私が選んだのは淡いブルーだ。装飾も落ち着いているし、ドレスの裾の部分にバラの刺繍があしらわれている。 「素敵です「お嬢様」これならリオン様も喜ばれますね」 「そうかしら? 恥ずかしいわ」 「照れている「お嬢様」も見れるなんて、今日はいい事づくしです」 ここまでテンションの上がっているルビーを見るのは初めてかもしれない。今まで他の男性とデートをする時も、見繕ってもらったけど。いい顔をした記憶が一切ない。私が選んできた方々がどちらかと言うと、好かれるタイプじゃなかったから、そこは目を瞑るわ。 「リオン様は、今までお付き合いされてた方々と天と地の差ですね」 「……そこまで言われると」 「実際そうじゃないですか。今までロクな方々ではなかったですよ?」 ルビーにそこまで言われると、まるで私の男を見る目が皆無みたいになるじゃない。まぁ、それだけリオンの事を気に入っているのだろうけど。少し傷つくわ。 悪気はないだろうから、いいのだけどね。 「髪のセットも出来ましたし、これで後はお屋敷に向かうだけですね」 「ええ」 「馬車の用意もしています。少し時間が早いかもしれませんが向かいますか?」 「そうね」 時間ギリギリになったり、遅れるよりは早めに出て余裕を持った方がいい。私はルビーに馬車の用意を任せて、その間だけのんびりとした空間を満喫しようとした。 こういう時こそ「お茶」が飲みたくなるのだけど、そこまで時間はないから無理だろう。私は窓から溢れる自然の風景を楽しみながら、待つ事にした。5カウント
last updateLast Updated : 2025-10-18
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8カウント〜10カウント

8カウント 私達が一緒にいる事なんて知らない彼女は、自室で寝転んでいた。ミシャの屋敷からリオンの屋敷へ行くのは近い。歩いていける距離だ。元々、幼馴染の二人は自然と遊ぶ事が多くなっていった。ミシャはリアンの二つ下になる。今年17でこれから女性としての魅力が増していく時期だろう。 「ねぇ、クロウ。凄く暇なんだけど遊びに行っちゃダメ?」 「リオンの所か?」 「うん。ダメかなぁ?」 クロウはミシャの様子を見る為に彼女の自室に訪れていた。ダンス会場での出来事をきっかけに自分がミシャを支えないと、と思う事が増えたみたいで、近くに寄り添う事が増えていった。 一方、リアンの態度をよく思わなかったクロウはこうやって抜け出さないように監視もかねて、傍にいる。何度か抜け出そうとしたミシャだったが、クロウの監視から逃れる事は難しく、どれも失敗に終わった。 「あんな事があったのに、それでもリアンに会いたいのか……」 「仕方ないじゃない、好きなんだもの」 「お前もいつまでもリオンに依存するのはやめろ。あいつもいい年ごろだ。恋の一つや二つくらいする」 相変わらずクロウの発言はミシャの心を逆なでする。ムゥと頬っぺたを膨らましたミシャは駄々っ子のように、暴れながら我儘放題。クロウはそんなミシャを見ながら、頭を抱えている。 「クロウがお付きで行けばいいじゃない、それよ」 「私がそれを許すと思うか?」 「私が我儘言えば、いつもなんだかんだ聞いてくれる。それがクロウだもの」 ふざけたようにウィンクをする彼女の発言を聞かなかった事にしたいクロウは耳を塞いだ。 「私は何も聞いていない」 「何よ、それ」  クロウは個人的にリアンを会わせたくないのもある。しかし血の繋がりはなくても妹だ。どうしても甘やかしてしまうクロウでも、今日だけはリオンの屋敷に行かす訳にはいかないと自分に言い聞かせた。 クロウだけは知っているのだ、私とリオンが会っている事を……9カウント
last updateLast Updated : 2025-10-19
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