翔吾は彩葉の方に背を向けていた。本来は優しげなその瞳が、今は光を吸い込む闇のように、底の見えない深淵と化している。「どこだ?」「やはり社長の読み通りでした。性懲りもなくあちこち逃げ回って数日、また『オーシティ』に顔を出しました」翔吾は首を傾けて、凝った肩と首をほぐした。「手は出させてないだろうな?」弘明は声を落とした。「社長の命令なしには、監視するだけで捕まえていません」彩葉はダウンコートの襟を掻き合わせ、翔吾の凛々しい背中を見つめた。しなやかで強靭な体、完璧な黄金比率。黒いスラックスの下に隠れた長い脚は、引き締まって力強い。どこもかしこも限りなく完璧に近く、見惚れるほど美しい。彼女は目を伏せた。あの災難のような結婚から抜け出して、彼女は気づいたのだ。この世界は蒼真だけが傑出しているわけではなく、至る所に美しいものがあると。かつての彼女は、愛のためにすべてを捨て、自ら牢獄を作り、蒼真こそが自分の世界だと思っていた。だが実際には、蒼真は彼女の世界なんかではなかった。彼女の監獄だったのだ。「今夜、動いていい」翔吾は怠惰な口調だったが、その目は冷たく、恐ろしかった。「すぐに、プライベートジェットを用意しろ」「社長自ら向かわれるのですか?」「ああ」弘明は驚きを隠せなかった。小林のようなクズ野郎、社長がわざわざ出向く必要があるだろうか?自分が行って簡単に片付けられるのに。まるで牛刀をもって鶏を割くようなものだ。「俺が到着する前に、手下に伝えろ。まだ手を出すなと」翔吾は指を鳴らした。カチカチと乾いた音が響く。「俺に始末させろ」弘明は真剣に頷いた。「かしこまりました、社長」……夕方、蒼真は最後の書類にサインを終えたところで、颯が慌ただしく入ってきて報告した。「社長、井上課長から連絡がありました。新しい手がかりが見つかったそうです!」蒼真の暗い瞳に、ようやく一筋の光が宿った。「早く言え」「警察が交通監視カメラで撮影したナンバープレートから、犯人が運転していた黒いセダンを見つけました」颯の表情にはやや興奮が、そしてそれ以上に焦燥が滲んでいた。「高速道路脇の茂みの中で発見されました。発見時、車内には誰もいませんでしたが、車内から犯人の指紋と数本の髪が採取されま
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