All Chapters of 聖女を信じて悪役令嬢を陥れ続けたら、断罪されたのは私でした: Chapter 71 - Chapter 80

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ついてきたロータス

【アプリル視点】 「結構来たわね」 数時間は歩いただろうか。ちょっと休憩していた。 もう学院の建物はすっかり見えなくなっていた。 それにもう戻れないけれど。「はぁ……サフィーは干からびていないかしらね」 廃都には地下水があるとはいえ、心も病んでいくあの場所なら、そこまで時間があるとはいえない。 早めに行かないと。「……アプリル様」「あら?」 誰かが叫ぶ声がする。 どうしたのかしら。「アプリル様! アプリル様!」 声の方向を見てみると、そこにはロータスがこっちに向かってきていた。 メイド服じゃなくて私服姿で。「ちょっと、ロータス!? 何でここまで……!」 明らかに旅をする格好をしていて、まるでわたくしについていこうとしているような……「あ……あたしも行きます! アプリル様を一人には出来ません!」 急いで駆けつけたからか、息切れをしていた。 いや、何でここまでわたくしを追ってくるのかしら。「ロータス、仕事があるんじゃないの!?」「辞めました! アプリル様と一緒に行きます。もう学院には辞表を出しましたので」 行動が早すぎる。 思いつきでしていいものじゃない。「そこまでして……」「学院での仕事を推薦してくれたトパーズさんには、申し訳ないですが……今のあたしにはアプリル様が最優先です!」 どこまでわたくしの事が好きなのかしらね。 もう色々と不義理をしようとしているから……「……分かったわ。でも、一つだけ約束して。わたくしがこれから向かう先に、決して目を背けないで」 サフィー
last updateLast Updated : 2025-11-07
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廃都からの再開 アプリルからの真実

【アプリル視点】  数日後、わたくし達は廃都に着いた。 砂丘を越えたとき、空気が変わった。 遠くに、石の街が見える。 屋根は崩れ、塔は折れ、窓の穴から風が抜けていた。 それでも、どこかで”呼吸”を感じた。 砂に覆われたはずの街が、まだ生きている。 きっと、彼女がそこにいるから。「ここが……廃都……」 ロータスが呟く。 その声に、風が応えた気がした。 まるで街そのものが、来訪者を迎えているように。「サフィー・プラハ」 廃都の中央部に、彼女は居た。 ボロボロの衣服にくすんだ金髪。顔も疲れ切っている。「あ、アプリル……」 疲労によるものなのか、声が涸れ気味。「着きましたね……アプリル様……」 ロータスもここまで歩いてきたから、疲れていた。 彼女って本当、体力があるのね。「アプリル・ブラチスラバ! お前のせいで私は破滅したんだ!」 わたくしを見るなり、サフィーは目を血走りながら指さして叫んだ。「サフィー……」 ここまで来ても、彼女は悪者を演じようとしていた。 彼女なりの筋なのかもしれない。「お前もよ、ロータス! お前が破滅に追いやったんだ!」「やっぱり……」 ロータスにも指さした。この様子を見て、演技じゃないって思ってしまっているのかも。「何でこんな場所に来たのよ!? わざわざ私を笑いに来たの!?」 風が止んだ。 崩れた柱の影がゆっくりと伸び、わたくし達を二つに分ける。「笑ってよ、笑いなさいよ。殿下と結ばれるはずだったのに、現実は廃都へ追放になった私を……」
last updateLast Updated : 2025-11-08
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廃都の響き

 風が、崩れた壁の隙間から吹き抜けた。 砂の音が途切れるたびに、心臓の鼓動がはっきり聞こえる。 この沈黙に耐えられなかったのかもしれない。 だから私は、ようやく口を開いた。 そう、私は告発状を書いてから、アプリルを守るために動いた。聖女様に従って、アプリルを断罪にさせていた、本心を偽りの仮面で隠して。 自らがヒドインになることで、彼女を守れると思ったから。 かつて見ていたざまぁ系の転生ヒドイン破滅小説。 転生したヒロインが悪役令嬢に冤罪を仕組んで、バレてヒロイン自身が破滅する。悪役令嬢は無罪放免になる。 そんな小説を見ていたし書いていた。 知っていたから、やってみた。 で、本当に成功しちゃった。私はヒドインとして破滅した。「本当にサフィーさんは、演技だったんですね」「あはは……」 乾いた笑いが廃都にこだまする。 私達は近くで座れそうな場所で、座っていた。とはいえ、こんな場所だから座ったところで汚れるだけなんだけれど。「全く、愚かでしかありませんわ。自らの身を犠牲にしてまで、わたくしを守るなんて……」「こうするしかなかった。中途半端に承認欲求が強くて、グルナ様に従っちゃった馬鹿な私には」 ヒロインとして王子と結ばれたかった。 転生前にサフィーを自身と結びつけて、夢見て憧れていた。 実際になって喜び、ハッピーエンドを目指していた。 ヒロインとして、王子と結ばれるという思いを胸に。 そんな私に聖女様は、次々と王子と一緒になれるという甘い蜜を与えて、やがて逃れられなくしていた。「もしかしたら、廃都へ追放されるのではなく、民衆の前で首が飛んだかもしれませんし、下手をすれば死んだ方がマシといえる事になったんですのよ」「それでも……良かった。アプリルを守れるなら」 夢のように私が二度目の破滅に追いやってアプリルが死ぬくらいなら、そっちでも。 よく小説で見
last updateLast Updated : 2025-11-09
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覚悟の日

 舞台の証明がまぶしかった。 あの光の下に立てるのは、たった一人だけ。 いつも袖の影にいる私は、そこに立つ子を見上げながら、拍手を送る側だった。 でも次こそはーーそう思っていた。「次こそは主役になるの?」 同じ演劇部の春江鈴鹿と話していた。 今度の舞台では、女子が主役になるから。「うん、もちろん!」 私はそのオーディションに備えていた。 次こそ私は主役として、一番輝くために。 今まで脇役や裏方ばっかりだったから。「やっぱり凄いね。やる気マンマンで」 鈴鹿は感心して私を見ていた。 彼女も一度主役をやったりしているけれども、普段は脇役や裏方をやったりしている。 色々と出来るんだよね、鈴鹿って。「そりゃあ、演劇部に入ったからには、主役にならないと」 一番輝くのは主役だからね。「応援しているよ。まあ、こっちも参加するんだけどさ」「絶対に取るから」 私はそう意気込んでいた…… 演劇部員として。 でも……「あのさ……佐奈、ちょっといい?」 文芸部員の高月華怜がやってきた。 焦っているように見えている。 どうしたんだろう。「華怜、どうしたの?」「佐奈……急な話で悪いんだけれども、文芸部に入ってくれない?」「文芸部に……!?」 本当に急すぎる話。私、結構演劇部に入って長いんだけれども。 しかも、今のやりとりを聞いていたよね。「実は部員数が足りなくて……このままだと、文芸部は廃部になっちゃうの……」「そんな……」 華怜が楽しんでいる部活。 確かに目立つような場所じゃないから、部員
last updateLast Updated : 2025-11-10
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草鞋の先で

「佐奈、文芸部との掛け持ちになったって聞いたけれど、本当なの?」 数日後、六花がさっそく情報を聞いて話しかけてきた。 ちょっと悪い感じで。「本当。掛け持ちになったんだ、私」「残念ね、主役になる佐奈が見たかったんだけれども」 期待していたのかな。 でもそんなつもりはない感じだけれども。皮肉を言っているようにしか感じない。 六花も主役を狙っているけれど、なれていないから。「仕方ないよ。あの子の部活が廃部になっても、私が主役になれる保証は無いから」「そうね。佐奈が主役になるとはいえないから」 ちょっと私に反発しているから、そんなことを言ってくる。 彼女も彼女でフラストレーションが溜まっているから、仕方ないかな。「六花……そういえば、台本を無視して顧問から注意されていたけれど、そこは直した方が良いよ」「そんなの関係ないでしょ」「まぁ、そうだけどね」 ちょっと言い合っちゃった。でもすぐに落ち着く。 だって、六花に対して、そこまでの気持ちは無いからだと思うけれどね。「とりあえず佐奈、頑張ってね。文芸部」「うん……」 それからも私は演劇部の部員として、裏方や脇役などをしていった。 だから、多少なりとも演技力がついていったのかな。 新しく入部した文芸部の部室は、放課後の光でいつも少しだけ金色に見えた。 演劇部の舞台のような喧騒はなくて、ただパソコンのキーボードを叩く音、鉛筆の音、ページをめくる紙の音だけが響いていた。 静かだけれど、寂しくはなかった。 華怜がそこにいて、机の向こうから微笑んでくれたから。 それだけでも、私は掛け持ちにして良かったと思う。「佐奈、今度の部誌に載せる短編、できた?」「うん、もうすぐ……」 パソコンに書きつけた文字を見ながら、私は小さく息を吸った。
last updateLast Updated : 2025-11-11
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廃都を出る日

 今、私はそれが発揮されたため、廃都に追放された。 廃都に風が抜けていく。それをサフィー・プラハとして感じていた。 でも……今も思っている。「私……本当に中途半端……」「中途半端……ですか……?」 あんな裁定の場で、演技をしていたとはいえ、アプリルを断罪しようとして…… 私自身がもっと優しかったら、告発状なんて書かなかった。どんな事があろうと、真っ向から聖女様と反発した。 アプリルを守った。 でも……結局私は……「殿下と一緒になる幸せに酔いしれて……グルナ様に従って、アプリルを断罪しようとした……」 だからこそ、私はヒドイン。 憧れのサフィーを私が思っている最悪のバッドエンドにしてしまった。 偽りのヒロインにしてしまった。 悪女なのよ。「サフィーさん……」 私は両手で顔を覆って、涙を流した。 こんな私でも涙はまだ出るのね……「グルナ様を信じ続けたから……私は……私は……」 涙は止めどなく出続ける。 まるで私がヒロインであったかのように。 でも、あんなことをした私がヒロインであってはいけない。「でもサフィー、貴女は本当に見るべきものを見失っていなかった」「わ、私が……?」 そんなの……もし見失っていなかったら、こうなっていない。 どうしてアプリルはそう言えるのかしら。 だって、だって、私は……「もしも貴女が見失
last updateLast Updated : 2025-11-12
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砂漠の道

「ねえ……」「どうしたんですの?」 砂漠を歩き始めて少しして、私はアプリル達に声をかける。「改めて……アプリルにロータス、ありがとう」 二人に感謝を。ここまでしてくれるなんて……「いいえ。感謝は私の方ですわ。サフィー、ありがとう」 風は吹いていなかったから、はっきりと聞こえていた。 一歩ごとに、足裏の砂が沈む。 それはまるで、過去の罪を一粒ずつ踏みしめていくようだった。 砂の熱が皮膚を焼いても、痛みは不思議と心を冷ますばかり。 苦しいはずなのに、歩くたびに何かが軽くなっていった。 それから一歩一歩、私達が歩いていった足跡は風で消えていく。でもそれが、もう廃都が私の居る場所ではないのを示していて、砂漠を抜けることへの躊躇を消していた。「これって何日も歩くの?」「勿論ですわよ。王国側から廃都に行くのさえ、何日も掛かったのですわ」 無茶苦茶時間かかるじゃん。 でも、それくらいの距離が無いと、廃都を簡単に抜けられちゃうか…… 「そっか……」 だからこそあの廃都は必要だったんだ。 もう誰も居ないけれど。「暑いね……」「仕方ないですわ。水分には気をつけなさいよ」「うん……」 すぐに飲み干しちゃったら、後が辛いけれどね…… 限られているのだから。 風が止むと、世界の音が遠ざかる。 その沈黙の中に、三人の息づかいだけが響いていた。 いつの間にか、敬語の響きが柔らかくなっている。 主従でも罪人でもなく、ただの”旅の仲間”として言葉が届く。 それがこんなにも救われることだなんて、思いもしなかった。「足元には、サソリとかもいるかも知れ
last updateLast Updated : 2025-11-13
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クリスタリア学院のグルナ

【グルナ視点】  鐘の音が三度、遠くで鳴った。 その響きは、これまでになく静かで、どこか優しかった。 けれど、その静けさの奥で、何かが目を覚ます音を確かに聞いた。 祈りを終えたわたしは、聖堂の高窓から差し込む光を見上げた。 ーーサフィー・プラハ、廃都へ追放。 ーーアプリル・ブラチスラバ、学院を辞職。 報告の言葉が、まだ頭のどこかで反芻されている。 サフィーの暴走で順番はおかしくなったけれども、結局は同じになった。 そしてそのたびに、心の奥で何かが緩んでいく。 ……やっと、終わった。 そう思った瞬間、胸の奥から小さな息が漏れた。 この長く続いた騒動も、もう終わりだ。 先に断罪するはずだったアプリルが辞めたことで、同じ事になったのだから。 これで王都には平穏が戻る。 わたしは祈りを果たした。罪も絶たれた。 誰もが救われたはず。「もう、誰も……罰しなくていい」 呟いた声は、誰に向けたわけでもなかった。 独り言だけれども、空気が優しく返してくれる気がした。 陽光が頬を照らし、涙がこぼれそうになった。 わたしは、初めて心から安堵したのだ。 けれどーー その時。 高窓の外から吹き込んだ風が、蝋燭の火を揺らした。 炎の影が壁に長く伸び、その形がふいに”誰かの笑み”のように見えた。『終わった……ですって?』 静かな声が、頭の奥を撫でた。 あの、聖女様の声。 けれど、今夜のそれはいつもよりも冷たく、低かった。 その声は、祈りの聖女ではなく、観客のいない劇場で響く演出家の声のようだった。 わたしの中の静寂を、演技のように切り裂く。「……聖女様?」『どうして、そんなに安らいでいられる
last updateLast Updated : 2025-11-14
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隣国の街

「ここが隣国の街ね」「初めての場所よ」 私達は砂漠を抜け、草原をしばらく歩いていると、小さな街に着いた。 石畳に叩く馬蹄の音。 焼き菓子の甘い匂い。 風に混じる人の声。 石畳の大通りに店舗や露天が並んで、さまざまな人が行き交っている。 それら全部が、ここが”生きている世界”なのだと教えてくれる。 久しく聞かなかった賑わいに、胸が少しだけ痛くなった。「そうですね! 結構賑わっています」 街中を歩いていくと、行き交う人の中に紛れているような気持ち。 まるでモブ。ヒロインと悪役令嬢だったなんて、信じられないくらいに。「さて、これからどうしようかしら」「宿屋に行くのはどうでしょう? ここまでずっと砂漠を歩いてきましたから!」「それがいいかな」 確かに身体も服も汚れてきたので、ここで一旦洗いたい。 私達はこの街の宿屋へ向かう。「いらっしゃいませ」「三人ですが行けますか?」「大丈夫ですよ」 空き部屋があったから、私達は泊まることに。 そこそこ大きめの部屋でふかふかのベッドがあった。 たらいで身体を洗って、これまでの汚れを落としていく。「気持ちいい……」 私についていたもの、それが垢と一緒に落ちていくように感じられた。たらいの水が手のひらを伝って流れていく。 指先から、廃都で積もった砂や涙や罪が、一緒に溶けていくようだった。 冷たさが肌に沁みるたび、心が少しずつ軽くなっていく。 それから、汚れてしまった服を洗っていく。 これまで持っていた服……どうしようかと思ったけれども、それも洗うことにした。 ボロボロになっていたのに、捨てることは出来なかったから。これまでの私であるのだから。 舞台衣装みたいだけれど。「やっぱりサフィーさん、洗ったらとても綺麗ですね!」
last updateLast Updated : 2025-11-15
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この街での朝

 翌朝、私は鳥の鳴き声と鐘の音で目を覚ました。 久しぶりに気持ちよく眠れて、気分良く目覚められた。  窓を開けると、陽光が石畳を照らし、街はもう動き始めていた。 パンを焼く香ばしい匂いと、露天の呼び声が混じり合っている。 昨日までの砂漠の熱と静けさが、まるで遠い夢のように。「サフィー、起きてますの?」 アプリルが髪を纏めながら声を掛けてきた。 その仕草に、以前の悪役令嬢……貴族令嬢としての気品がまだ残っている。 でも今は、それを隠すように淡いグレーの旅服を来ていた。それにずっとあのメイド服っていうのもおかしいから。 ロータスだって、アプリルと似たような感じの服装をしていた。「うん。今日は仕事を探す日、だもんね」「そうです! あたし、掲示板を見ておきます!」 ロータスは朝から元気だった。 宿屋の前の広場には、働き手を求める張り紙が並んでいるらしい。 私達は軽く朝食を取って、宿を出た。 街の空気は、温かいパンの香りと、少しの埃の匂い。 行き交う人の声がまぶしくて、思わず目を細めた。「……こんなに賑やかなの、久しぶり」 私は誰も居ない廃都で、一人ぼっちだったから。 孤独のままの生活を。「そうね。あの学院以来かしら」 アプリルの笑みは、その思い出を薄くするように柔らかかった。 あの”断罪の舞台”で見た微笑みとは違う。 人を裁くためではなく、共に生きるための光を宿した笑みだった。 掲示板の前には、旅人や労働者が集まっていた。 木札には、給仕、裁縫、倉庫整理、教会清掃など、いくつも仕事が並ぶ。 期間も日雇いから数ヶ月以上など、様々。「どうしようかな?」「出来そうなのはありますが、短めしか無いですね……」 ロータスも悩んでいた。 この街はそこそこ大きいかもしれない
last updateLast Updated : 2025-11-16
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