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隣国の街

last update Terakhir Diperbarui: 2025-11-15 11:00:00

「ここが隣国の街ね」

「初めての場所よ」

 私達は砂漠を抜け、草原をしばらく歩いていると、小さな街に着いた。

 石畳に叩く馬蹄の音。

 焼き菓子の甘い匂い。

 風に混じる人の声。

 石畳の大通りに店舗や露天が並んで、さまざまな人が行き交っている。

 それら全部が、ここが”生きている世界”なのだと教えてくれる。

 久しく聞かなかった賑わいに、胸が少しだけ痛くなった。

「そうですね! 結構賑わっています」

 街中を歩いていくと、行き交う人の中に紛れているような気持ち。

 まるでモブ。ヒロインと悪役令嬢だったなんて、信じられないくらいに。

「さて、これからどうしようかしら」

「宿屋に行くのはどうでしょう? ここまでずっと砂漠を歩いてきましたから!」

「それがいいかな」

 確かに身体も服も汚れてきたので、ここで一旦洗いたい。

 私達はこの街の宿屋へ向かう。

「いらっしゃいませ」

「三人ですが行けますか?」

「大丈夫ですよ」

 空き部屋があったから、私達は泊まることに。

 そこそこ大きめの部屋でふかふかのベッドがあった。

 たらいで身体を洗って、これまでの汚れを落としていく。

「気持ちいい……」

 私についていたもの、それが垢と一緒に落ちていくように感じられた。

たらいの水が手のひらを伝って流れていく。

 指先から、廃都で積もった砂や涙や罪が、一緒に溶けていくようだった。

 冷たさが肌に沁みるたび、心が少しずつ軽くなっていく。

 それから、汚れてしまった服を洗っていく。

 これまで持っていた服……どうしようかと思ったけれども、それも洗うことにした。

 ボロボロになっていたのに、捨てることは出来なかったから。これまでの私であるのだから。

 舞台衣装みたいだけれど。

「やっぱりサフィーさん、洗ったらとても綺麗ですね!」

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