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278 チャプター

この想いをゴーカートのスピードにリンクさせて――25

☆☆☆ 背後から強く打ちつけられる衝撃に耐えながら、橋本は呟かずにはいられなかった。「くっ…こんな姿でいるのを誰かに見つかったら、マジでやばい……」 上半身はハイヤーの中。下半身はスラックスと下着を膝でキープしている橋本に、宮本が後ろから覆いかぶさっていた。「陽さんのナカ、めちゃくちゃ熱くなってる。外でしてるから?」「そんなの知らねぇよ…うっ、雅輝だっていつもよりデカく…なってる、だろ」「だって興奮する材料がありまくりで、すっごく気持ちがいいですよ!」 橋本のワイシャツの裾から手を入れ、触れ慣れている突起をいきなり弾く。「ヒッ!」「締めすぎ〜〜! 陽さん、俺だけイっちゃう」 橋本の躰に触れた分だけ、ナカが締まることがわかっていても、たくさん感じさせたい欲求に宮本は素直に突き進む。空いてる手で橋本の肉棒を握りしめ、ゆっくり上下させて刺激を与えた。「くぅっ! こ、れ以上ぉ、俺を…感じさせてっ、おかしくし、な…ぃでくれ」「陽さんの声、すごくエロい。手の力を強めたら、もっとエロいのが聞ける?」「バカなこと…言ってんじゃ、ねぇよ。一緒にっ、い、イキたくない…のか?」 掠れた声や敏感になってる躰の具合で、橋本が達しそうになっていることがわかっているからこそ、自分もそれに合わせなければと必死になった。さっきから橋本が感じるたびにナカを締め続けるため、いつ暴発してもおかしくない状態なのが、宮本としてはつらくもあり、嬉しくもある。「陽さんに合わせてイキたいんだけど、俺が先にイっちゃうかもしれない」「は? な、んで……」 橋本が首だけで振り返りながら、宮本の顔を見つめた。余裕のあるような面持ちはそこになく、眉間に深いシワを寄せて、腰をちまちま動かす姿がそこにあった。「なんでなんて言わないでほしいよ。陽さんめちゃくちゃ名器なのに」「そんなこと言われても――」「う〜〜っもうダメ、我慢できない!」 宮本は橋本自身を掴んでいる手と腰の動きのストロークを、一気にあげた。いきなり与えられる強い刺激で橋本があっけなく達すると、宮本も前後させていた自身を引き抜き、外に向かって絶頂する。アスファルトに滴る卑猥な音で、宮本がイったことを橋本は知った。「おい雅輝、これ……」 諸事情により両手が塞がっている宮本に、橋本はボックスティッシュを見せて、使うように促し
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この想いをゴーカートのスピードにリンクさせて――26

宮本は無言のままティッシュを数枚引き抜き、汚れている両手を拭う。その間に橋本も同じように下半身の処理をし、身支度を綺麗に整えた。「雅輝悪いな。気を遣わせて……」「へっ?」「ハイヤーでしないって言ってる俺の事情を尊重して、こんな形でシたんだろ?」「はぁまあ、そんな感じですけど。それでも結局ハイヤーでいたしちゃったことには、変わりないと思います」「俺からキスして雅輝を焚きつけたんだから、気にすることなかったのにな」 橋本はティッシュを握りしめる宮本の手からそれを奪って、車内にあるゴミ箱に捨てる。「気にするに決まってるでしょ。このあと俺たちは別々に帰るんだし。家じゃないんだから、きちんとナカの処理ができない状態の陽さんのことを考えたら、こうなることは必然だった」「雅輝……」「陽さんとしては、俺がナカでイってほしかったんだろうけど、自分だけ気持ちよくなることは!」 言い終えないうちに、橋本が宮本に抱きついた。「それでも俺は、おまえにめちゃくちゃにされたかったんだ。愛してるから」 橋本が耳元で囁いた愛の告白に、宮本の躰がふたたび熱を帯びる。「陽さん、煽らないでくださいよ」「煽りたくもなるって。俺と一緒じゃなきゃ走らないなんて、雅輝が言うとは思わなかったんだ」 宮本は橋本の躰を、強く抱きしめ返した。他の部分に触れてしまうと場所をわきまえずに、手を出してしまいそうになったから。「俺としては、当たり前のことを言っただけなのに」「しかも俺に隠し事をしてまで、ここに通うなんて。妬いてほしかったのか?」「そんなことないですよ、本当に……」 橋本の耳元で囁かれた言葉は、宮本らしくない感じのものだった。焦りや困ったふうを感じさせるそれに、橋本は微苦笑しながら口を開く。「一応、浮気の心配くらいしたんだけどな。もちろん、おまえが襲われるという前提で」「は?」 予想をしていなかったセリフに宮本は驚き、強く抱きしめていた腕の力を抜いて、橋本の顔をまじまじと見つめる。「雅輝の性格を考えたら、どう考えても襲われるほうのリスクが高い。だって車のことを真剣に考えてるおまえの顔やインプを走らせてる姿は、なかなかの男前なんだぞ!」 少しだけ上目遣いで、宮本のことを熱く語った橋本。普段は語られることのない言葉の連続に、宮本は何度も瞬きを繰り返す。(陽さんってば
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この想いをゴーカートのスピードにリンクさせて――27

「おまえの魅力的なところを垣間見た佐々木さんが、手を出す可能性を考えなかったのかよ?」 真剣なまなざしを直で注がれた宮本は、じわじわと顔を赤くした。「よよっ陽さんってば、さっきから褒めすぎです。俺はそんなにイケメンじゃないのに。それに佐々木くんは、れっきとしたノンケなんだから、俺を襲うなんてありえませんよ」 自分の照れを隠すように言葉を重ねた宮本に、橋本の追撃が止まらない。「俺の目に映るおまえは、充分にいい男だって。手を出したくなるくらいにな」「手を出すぅ!?」 橋本にどんな手を使われるのかまったく読めない宮本は、慌てて両手をバンザイしながら腰を引いた。しかしながら橋本の両腕が上半身に絡みついているため、離れることができない。「雅輝、逃げるなよ」「逃げたくもなります。陽さんってば、俺を食う気満々でしょ……」「だって足りねぇしな、当然だろ」「足りないと言われましても、むぅ……。ここじゃあいろいろ制限があって、陽さんを満足させることができないというか」「へぇ、なるほど。だったらここじゃないどこかなら、俺を満足させるナニかをいたしてくれるっていうのか?」 橋本のまなざしから見えないなにかを感じて、思わず息を飲む。そのせいで問いかけに、すぐに答えられなかった。頬を朱に染めた状態で、口元をもごもごさせる。「雅輝の顔、すげぇかわいい。俺から襲ったら、もっとかわいい顔が見られるのか?」 言うなり、ちゅっと耳朶を甘噛みされた。橋本の熱い吐息が耳穴にかかって、背筋がぞわっとなる。「うっ、うわぁっ!」 まったく色気を感じさせない声を宮本があげたというのに、ひとことも文句を言わず、意味深な笑みを浮かべた橋本の片手が、宮本の尻にやんわりと触れた。「ひゃぁっ!」 両手をあげて、されるがままでいる宮本に、橋本は「まったく……」と冷めたセリフを言い放ち、深いため息を大きく吐いた。注がれるまなざしに熱っぽさはまったくなく、むしろ冷凍庫の冷気を感じさせるような冷たいものを顔面に浴びた。「へっ?」 突然変異した態度の意味がわからず、宮本が素っ頓狂なリアクションをしたタイミングで、橋本の手が尻をぎゅっと抓った。「いっ! 痛い痛い!」「危機管理能力なさすぎ! もう少しくらい抵抗しやがれ!」「テイコウ?」 宮本は抵抗の意味も理解できずに、アホ面丸出しを表すよ
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この想いをゴーカートのスピードにリンクさせて――28

「いいか、雅輝。こういうときは迷うことなく、抵抗しなきゃいけない場面だろ! このまま襲われてもいいのか?」 目を釣りあげて自分を叱る、橋本の顔はかなり怖いものだったが、宮本としてはかなり嬉しさを感じる瞬間だった。自分の身を案じてこんな場所で卑猥なレクチャーをわざわざする橋本の優しさに、涙が滲みそうになる。「雅輝、どうして笑っていられるんだ。俺は心配して、こうして身をもって教えているんだぞ」 笑っていても滲んだ涙が流れそうになったので、慌てて両手で拭い、湿気ったその拳を握りしめながら豪語する。「ほかの人ならいざ知らず、陽さんに誘われて抵抗するなんて、全然頭になかったです!」「……俺に掘られてもいいのかよ?」 少し間を置いたあとに告げられたセリフを聞いて、宮本は迷うことなく大きく頷いた。「だって当初の予定では、俺が陽さんに食べられるハズだったんですよ。今更そのことについて、文句や抵抗なんてものはありえません」 キッパリ言い切る宮本に、橋本は額に手を当てながら首を垂れた。「あ~なんか心配損した。無駄すぎるだろ、俺の行動……」「無駄なんかじゃないですよ。むしろ愛が深まったと思います」「愛が深まった……だと?」 宮本が満面の笑みで告げると、橋本の頬が一気に赤く染まった。俯いていてもわかるくらいに顔を赤らめる恋人に、背中を向けてお尻を突き出しながら説明する。「陽さんが俺を想う気持ちが、すごく伝わってきました。これからここで、掘られてもいいと思うくらいに」「まっ、雅輝、いきなりそんなことを強請るとか、なにを考えてるんだ」「ここから別々の車で帰るのは寂しいなぁとか、明日仕事あるけどさっきの続きがしたいなぁなんてことですけど?」 橋本は無言のまま宮本の背中に抱きつく。「えっ?」「雅輝、あのさ……」 耳の傍で語られる橋本の声は、どこか戸惑いを感じさせるものだった。「なんですか、陽さん」 橋本の気持ちを察して、前を向いた状態で返事をした。恥ずかしがり屋の恋人が思ったことを口にできるように、宮本なりの配慮だった。「俺も同じ気持ちでいるから……。このまま別々に帰ったあとで、俺の家に来ないかと」「陽さんってば明日朝早くから仕事があるっていうのに、俺を誘っているんですか?」
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この想いをゴーカートのスピードにリンクさせて――29

優しい配慮をした分だけ意地悪を口にした宮本の躰を、橋本はぎゅっと抱きしめる。早く抱かれたい気持ちと一緒に焦った想いを加算して、両腕に力を込めた。「誘うに決まってるだろ、クソガキが! 愛しているんだぞ、俺の事情なんてクソくらえだ」 静まり返った駐車場に、橋本の怒鳴り声が妙に響き渡った。照れ隠しやら自身の事情を含んだそのセリフを聞いて、宮本はニヤけながら顔を振り向かせる。耳まで赤く染めた恋人の顔が、すぐ傍にあった。「だったら、さっさと帰りましょう。明日のことはまたあとで考えるとして、とりあえず1秒でも早く陽さんを抱きしめたい」 言いながら橋本の左手に触れる。宮本の指先にお揃いのリングの感触が伝わった瞬間、躰から両腕が外された。「雅輝、ここから競争な」「へっ?」「『俺の車がデコトラだから、陽さんよりも遅くなっちゃいました』なーんていう言いわけは聞きたくないから。無駄に俺を待たせると、なにもせずに寝ることになるかもしれないぞ!」 呆気にとられる宮本を尻目に、橋本は素早くハイヤーに乗り込み、エンジンをかけた。宮本の目の前から黒塗りのハイヤーが消える前に、慌ててデコトラの運転席のドアに手をかける。自分がデコトラに乗り込む前に、さっさと発車させた橋本を恨まずにはいられない。「陽さんってばハイヤーが身軽だからって、このタイミングでここぞとばかりに、バトルを持ち出すとか、マジで鬼畜なんですけど……」 宮本は半泣きしながらも、いつも以上にデコトラを飛ばした。そのおかげで橋本をあまり待たせることなく、行為に及ぶことができた。これにより宮本の運転スキルが、ぐんとあがった瞬間になったのだった。愛でたし愛でたし!
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宮本の抱きつき方

そのときの宮本の抱き着き加減で、いろんな欲求を判断している橋本。 凭れかかるように躰をくっつけるときは、すごく眠い証拠。力仕事がハードだった日は、こんな感じで躰をくっつけたあとに、橋本に抱きつく。大きな躰をよいしょと抱えて運び、ベッドに横たえた後で眠りにうまく誘うべく、頭を何度も優しく撫でた。 橋本を後ろから囲むように、優しく抱き締めるのは、仕事で失敗して落ち込み、子どものように甘えているとき。愚痴を引き出すために「どうしたんだ?」と先に話しかけるのが、宮本の落ち込みを軽減させる働きをする。 抱きつく腕の力加減が少し力強くて、いつも以上に密着度が高い場合は、誰かに嫉妬しているときだろうか。 仕事の関係上、たまに宮本のデコトラと黒塗りのハイヤーが出逢うことがある。お客様に無償のサービスをほどこす橋本を宮本が目の当たりにした日は、大抵こんな抱きつき方をした。 首元に顔を埋めて鼻息を荒くし、橋本の香りをここぞとばかりに堪能しているときは、性的に興奮しているときだった。 当然ここから、容赦のない責めをはじめる合図にもなっている上に、これをしている宮本は、抵抗する橋本を解放する気は一切ないので、上記にあげた抱きしめたときの状況判断をしようとしても、まったく意味をなさない。 仕方なく…いや喜んでその身を、橋本は宮本に提供するのだった。愛でたし♡愛でたし
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春待ちのはなれ亭 プロローグ

僕は母の食堂〈はなれ亭〉でカウンターを拭きながら、客たちを眺めるのが好きだった。 昼のざわめきが落ち着く午後3時。味噌汁の湯気が立ちのぼるたびに、店の空気がやわらかくなる。22歳の大学生にとって、ここは勉強の合間に呼吸を整える場所みたいなものだった。「いらっしゃいませ」と声をかけると、ふっとお客さんの表情がほどける。その瞬間が、たまらなく嬉しい。 最近、気になる人がいる。社員証の文字で名前を知った――彼は花沢友則さん。〈はなれ亭〉の近くの会社に勤めている。 最初は背の高いイケメンと一緒に来ていたけれど、ある日を境に一人で来るようになった。 髪はきれいに整っているのに、スーツの襟に少しだけ皺が寄っていて、どこか疲れて見える。注文を待つ間、湯気の向こうで静かにまぶたを伏せるその横顔が、どうしても気になった。 放っておけない――というより、見ていると胸の奥がざわつく。花沢さんが箸を置いて「ごちそうさま」と小さく笑うだけで、なぜだか1日が明るくなる気がした。 今日も、いつもの時間にドアの鈴が鳴る。厨房から顔を上げると、やっぱり彼だった。僕はすぐに声をかける。「いらっしゃいませ! いつもの味噌汁定食でいいですか? なんか、元気なさそうですね」 花沢さんは少し驚いたように目を瞬かせてから曖昧に微笑み、それから小さく頷いた。(やっぱり、何かあったんだ。数週間前までは、あのイケメンと笑い合っていたのに――)「お待たせしました。お熱いうちにどうぞ!」 彼が座るカウンターに味噌汁定食を運びながら、僕はそっと隣の席に腰を下ろした。閉店間際で他の客はいない。母さんも奥で帳簿をつけている。 花沢さんは箸を手に取って、ぽつりとつぶやいた。「いつもありがとう。ここの味、すごく落ち着くんだ……」 その声が、ほんの少しだけ震えて聞こえた。だからこそ、僕は小さく笑って答える。「それは良かったです。僕、遠藤拓海って言います」 「あ、俺は花沢友則。……拓海くんは見た感じ、大学生くらいかな?」 「はい。大学4年です」 「そっか。だったら、就活で忙しいだろ?」 彼が僕に興味を示してくれたのが嬉しくて、思わず図々しく訊ねてしまった。「僕の就活の話よりも、花沢さんのことが気になります。最近、一人で来てるけど……何かあったんですか?」 その瞬間、箸先でつまんでいたサバ
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第一章 出会いと傷の影

友則さんから語られる話は意外なほど淡々としていたが、言葉の端々に滲む痛みを僕はどうしても聞き逃せなかった。 話によると元恋人のイケメンは、会社の本店にいる指導係だった先輩で、2年間付き合っていたそう。最初は男同士の関係を隠しながらも、幸せだったらしい。 けれどある日、「彼女と結婚する」と突然告げられ、二股だったことを知ったのだという。「バカだよな、俺。あの人を信じてたのに……」 そう呟いた友則さんの笑みは、痛々しいほど壊れかけていた。僕は味噌汁のおかわりを注ぎながら、そっと相槌を打つ。「そんなヤツ、クズだよ、クズ! 友則さんみたいな優しい人が、なんでそんな目に遭うんでしょうね。でも、ここに来てくれてよかった。僕、話を聞くのが好きですから、遠慮せずにいつでも来てください!」 友則さんは一瞬きょとんとして、それからふっと瞳を細めた。「……ありがとう、拓海くん」 先ほどまでとは違う明るい声に、ちゃんと僕の名前が乗っていた。それだけで胸の奥がじわりと熱くなる。 22歳の僕にとって、会社員で年上の彼は遠い大人の世界の人。それでも彼が見せた寂しげな笑顔がどうしても気になって、頭から離れなかった。 数日後、友則さんはまた店に来た。仕事帰りのスーツ姿でネクタイを緩め、少し疲れた顔でカウンターの端に座る。僕はすぐにいつもの定食を下準備して、さりげなく隣に腰を下ろした。 母さんが奥から「拓海、手が空いてるなら皿洗いして!」と声をかけてくるけど、聞こえないふりをして友則さんに話しかける。「今日のおすすめは、母さんの特製豚汁だよ。友則さん、豚汁好き?」 「うん、それをお願いしようかな。最近、寒くなってきたし」 外では秋風が窓を揺らし、店内の湯気がやわらかく漂っている。友則さんが注文した豚汁定食を配膳してから、他愛のない会話を交わした。 広告代理店での忙しい日々、僕の大学生活、そして「食堂を継ぐか迷っている」という話――。「拓海くんが下町の味を守るの、すごくいいと思う。俺、こういう場所が好きだよ」 その微笑みが嬉しくて、思わず見惚れてしまう。けれど話の最中、時折ふっと遠くを見るような目をするのが気になった。きっと、まだ元恋人の影が残っているんだろう。 だから僕は、わざと明るい口調で話題を変える。「友則さん、週末に近くの公園で紅葉を見に行きませんか?
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第二章:深まる絆と葛藤

あの雨の日を境に、友則さんの来店頻度が少し増えた気がする。週に四回は顔を見せてくれるようになった。 僕としては嬉しいけれど、母さんはすぐに気づいてからかってくる。「拓海、あの友則さんって人、最近よく来るわね」 朝の仕込みを手伝いながらそう言われ、僕は慌てて首を振った。「彼は、ただの常連さんだってば!」 でも、本当はバレバレだ。友則さんのことが、気になって仕方ない。あの寂しげな目、優しい声、傷ついた心。全部ひっくるめて、僕が守りたいと思ってしまう。 次の来店日、彼はいつものようにカウンターに座った。僕は日替わり定食を運びながら、自然にその隣に腰を下ろす。「今日もお疲れさまでした。仕事、大変ですか?」 ネクタイを緩めながら、彼は少し照れたように笑った。「まあね。月末締めでいつもより忙しいよ。でも、ここに来るとほっとするんだ。拓海くんの笑顔のおかげかな」 冗談めかしてるけれど、目は本気で優しい。28歳の大人なのに、そんなこと言うなんて反則だ。胸の鼓動が、また一段と早くなる。 会話が途切れた瞬間、僕は思い出したように口を開いた。「あの、週末に紅葉を見に行きませんか? 近くの公園、今が見ごろなんです。僕、友則さん好みのお弁当を作りますから」 「いいの? 俺みたいな年上と一緒で、退屈じゃない?」 「退屈なわけないですって。むしろ、楽しみです」 僕の勢いに押されて、彼はふっと笑った。年下の僕がリードしている――その感覚が少し誇らしい。 日曜の午後。秋の陽射しはやわらかくて、公園の木々は赤や橙に染まり、風が吹くたびに光をまとった落ち葉がひらひらと舞った。 カジュアルなシャツ姿の友則さんは、仕事の顔とは別人みたいに穏やかで、少し若く見える。「わあ……これ、全部拓海くんが作ったの?」 ベンチに弁当を広げると、彼が目を丸くする。その表情を見るだけで、胸の奥がじんわり温かくなった。 2人で弁当をつつきながら話していると、不意に彼が遠くを見るような目をした。「この前、元カレから結婚式の前撮りの写真がスマホに送られてきてさ。笑ってるのに……どこか冷たくて。それを見た瞬間、胸が痛んだんだ」 友則さんは、僕より5歳以上も年上。その分だけ、大人の痛みを知っている。僕よりずっと多く傷ついてきただろう。 そっと箸を置き、僕は勇気を出して彼の手を包んだ。
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第二章:深まる絆と葛藤2

*** 友則さんが来て、店が閉店間際になった頃。僕は、ずっと胸の奥にしまっていた言葉をようやく口にする決意をした。「友則さん、すみませんが少し残ってもらえますか。……話があるんです」 暖簾を下ろしたあと、静まり返った店内で僕たちは向かい合った。母さんは奥で休んでいる。今、この空間にいるのは僕と彼だけ。 緊張をひた隠して意を決し、友則さんの肩に手を置いた。驚いたように目を瞬かせる彼に、まっすぐ言葉をぶつける。「僕、友則さんの支えになりたいんです」 「……支え?」 「年下の僕じゃ頼りないかもしれません。でも、傷ついたままでいる友則さんを、放っておけないんです」 その一言で何かを察したのか、友則さんの視線がゆらゆら揺れた。その後まぶたが静かに伏せられて、沈黙が落ちる。拒まれたのかと思って、胸がひどく締めつけられたが、それでも言葉を続けた。「……だったら、どうして公園でのキスを受け止めてくれたんですか?」 問いかける物言いが、少し強いものになった。「そ、それは……驚いて、つい……」 「でも友則さんは、あの時拒まなかった。だから僕……あの続きがしたいんです」 耳元に顔を寄せてそう囁くと、彼の呼吸が微かに乱れた。触れそうで触れない。逃げ場のない距離をわざと作ったのは僕。けれど強引に逃れようとしたら、力ずくで逃げることもできる。「拓海くん、俺たち――」 二の句を彼が探す前に、僕はそっと唇を重ねた。深くでも激しくでもなく、想いを伝えるように静かに。 繊細なキスに友則さんの体がぶるりと震え、やがて力が抜けて僕の腕に寄りかかる。(……この感じ。年下の僕がリードするの、なんか癖になる――) スラックスからワイシャツを引き出し、手のひらを下に滑らせ、感じるように肌を直接撫でる。伝わってくる温かさと滑らかな肌を指先が捉えた。友則さんが「んっ……」って小さく甘い声を漏らしただけで、僕の興奮が頂点に達する。 そのまま彼をカウンターに押しつけ、スラックスのベルトを緩めた。「ちょっ、何を!?」 「友則さん、僕にまかせて。癒してあげる」 カタチの変わった彼を手に取り、優しく扱く。途端に友則さんの息が荒くなって、恥ずかしそうに僕の肩に顔を埋める。「拓海くんダメ、だよ……あっ!」 僕はそのまま跪いてそれを口に含み、ゆっくり丁寧に動いた。友則さんの過去の傷
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