「え?」 驚きというより、理解が追いついていない戸惑いの色が浮かんでいる。 記憶がないという事実は、こんなにも簡単に、 私たちの間に深い溝を作ってしまうのだと、改めて突きつけられた気がした。 私は小さく息を吸い、喉の奥に溜まった言葉を押し出す準備をした。 「あの人は、私の友達じゃないんだってば」 あの人の顔を思い出すだけで胸がざわつく。 友達なんて、そんな軽い言葉で片づけられる関係じゃない。 「それじゃあ一体…」 湊さんの声は、本当にただの疑問だった。 私は小さく息を吸った。 「…本当は、なにか覚えてるんじゃないの」 私は視線をそらした。 心がざわざわして落ち着かない。 湊さんがあの人と話していた姿が、頭の中で何度も再生される。 「まさか、」 湊さんの声がわずかに揺れた。 その揺れが、私の心をさらにかき乱す。 「その割には、仲良さそうに話してた」 そう言った瞬間、自分の声が思ったよりも尖って聞こえて、胸の奥がひやりとした。 湊さんを疑ってるわけじゃない。そんなこと、少しも思っていない。 ただ、不安なだけ。 湊さんに伝えたい気持ちは、いつもうまく形にならない。 「それは、彩花ちゃんの友達だって言うから。彼女の名前は参加者リストにも無かったし、それを信用するしかなくて」 湊さんの言葉を聞いた瞬間、胸の奥がひやりと冷えた。 参加者リストに、名前がなかった…? 参加者リストに名前がないのに、どうしてあの人はあそこにいたのか。
Huling Na-update : 2026-02-20 Magbasa pa