格好のつかない告白だった。いつもの余裕のある笑顔で押し切られるより、ずっと胸に響いてしまう。私は彼のシャツをそっと掴んだ。 「輝くん……」 「栞」 名前を呼ばれるだけで、背筋が痺れる。 彼はゆっくりと顔を寄せ、私の耳元に唇を寄せた。 吐息がかかる距離。彼の体温が、私の体温と溶け合っていく。 「また教えてくれる? 今度は、俺にも分かるところから」 「……うん。でも、奏くんにはちゃんと謝ってね」 「分かってる」 輝くんが苦笑する。私も一緒に謝ろう。そう決めると、ようやく少し笑えた。 輝くんが私の額へ自分の額を軽く当てた。 「頼むよ、先生」 「生徒さんも、分からないところは聞いてください」 笑った拍子に鼻先が触れそうになり、二人で顔を離す。窓に映る私たちは、さっきまでの険しい顔をしていなかった。 翌日、奏くんには二人で謝った。彼は聞き終えると眼鏡を押し上げ、「俺を教材にするな」とだけ言った。返す言葉がない。◇ それから数日後。 静寂に包まれた図書館の空気は、どこか古い紙とインクの匂いが混じり合っていて、私の心を落ち着かせてくれる……はずだった。 机の上に置いたスマートフォンの画面が暗くなるのを、私はぼんやりと見つめていた。画面に残っていたのは、天王寺輝――私の彼氏であり、学園の王子様――からの、謝罪のメッセージ。 『ごめん、急に父さんに呼び出された。今日の勉強会、行けそうにない』 短く簡潔な文面からは、彼がどれほど急いでいるか、そして申し訳なく思っているかが伝わってくるようだった。私は小さく息を吐き出し、誰も見ていないことを確認して、机に突っ伏した。 「うぅ……輝くん……」 付き合い始めてから、二人きりで過ごす時間をどれだけ楽しみにしていたか。今日のために新しいノートも買ったし、昨日から気合を入れて予習もしていたのに。 でも、輝くんの家――天王寺家は、日本有数の財閥だ。彼が背負っているものは、一般庶民の私には想像もつかないほど重くて大きい。わかってる。わかってるけど……。 「……寂しい、なぁ」 ぽつりと漏れた本音は、空調の低い駆動音にかき消された。 いけない、いけない。こんな時こそ、腐女子としてのスキルを発動させなければ。 私は顔を上げ、頬をパンパンと両手で叩いた。彼氏に会えない時間は、
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