All Chapters of ようこそ万来堂へ!〜先輩から教わった接客技術で看板娘、がんばります!〜: Chapter 71 - Chapter 80

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71食目・『総料理長、渾身の一品』

「万来堂・総料理長が持参した料理だ。出来立てでは無いのが生憎ではあるが、とくとご賞味あれ――『アグニード・ステークトゥーナ』」 そう言って封が開けられたのは、『万来堂』と書かれたお洒落な箱。 きっとテイクアウト用のものなんだと思うけど、中に入っていたのはストゥーナの花が添えられた大きな塊だった。  ただ、塊の見た目は真っ黒で、一目見ただけでは料理が失敗してしまったようにしか見えない。 でも、箱を開けた瞬間から香りが爆発したように香ばしく、そしてストゥーナの甘い香りも一緒に鼻に抜けて、口の中は一瞬にして涎で溢れた。「ルシー、座りましょう?料理長のショーが始まるわよ」「あ、はい……!」 エリザさんに言われて席に座る。 すると小さく口角を上げたイードさんは箱が入っていた包みの中から銀色のナイフを取り出し、塊に当てた。 ――ぽろ。 それは鱗が剥がれたように、黒い塊の一部が剥げていく。 それを皮切りにイードさんがナイフで塊を削ぐ度、ぽろぽろと何かが外れてその姿が見えた。 お肉だ。 中から茶色のよく焼けたお肉が見えてきた。 全貌が見えてくると、イードさんは塊を薄くスライスしていく。 端の1枚を落とすと外は焦げ茶色なのに中は血の色に近い赤を見せている。 それは一瞬生であるのを疑いたくなるほど。 でも、すごく綺麗で芸術品みたい。 思わずごくりと喉が鳴った。 「今回の料理はエクレテス地方、ストゥーナ畑で育ったエクレテス牛のヒレ肉を使用しています。 エクレテス牛はストゥーナから出た茎や草の部分を食事に多く使用し、肉自体にもストゥーナ独特の花の香りがあります。 が、今回は更に実の殻を肉にまとわせることで更なる風味をつけ、そして最初は高温で焼き付け、あとは余熱で中を熟成させることによって神秘的とも言える赤を作り出します」 それは本当にショーみたい。 1枚1枚スライスしながら、私とお母さんのお皿にお肉を乗せていく。 実際
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72食目・美味しいごはんとデザート

「んうぅぅぅぅ〜〜、美味しい……!!」 後から出てきた付け合わせ。 それは黄金芋を限界まで濾して、牛乳と混ぜて作ったもの。 私の前の世界ではマッシュポテトと呼ばれるもの。 フォス=カタリナでは基本となる芋料理で、スープの元にもなる。 それをアグニード・ステークトゥーナで巻いて食べると、黄金芋のずっしりとした味と食感に染みた肉汁が混ざり合って身に染みる、それこそ言葉も溶けてしまうような美味しさになった。 これこそ究極の美味しさ!と言わんばかりの衝撃を受けているのだけど、でも私の短い人生では究極に美味しい料理だと思う。 こういう時、どんな言葉で表すのが正解なんだろう。 それすらも出てこないけど、転生しなくても出会いそうにない美味しさである。 それだけは理解できた。「ええ、本当に美味しいわ。……どう?イード。満足してる?」「……こう言ってはなんだが、餌付けをしてる気分だ。ルシェットはその、何を食べてもこうなのか……?」「あら、ルシーにも一応料理によって笑顔の差はあるわよ。それとリアクションにもね」「そうなのか……」「えっ、そうなの?」 エリザさんの言葉に私までつい反応してしまって、エリザさんはくすくすと笑う。 でも私も自覚なくて、やっぱりこの世界の料理は美味しいものばっかりだなって思った。 また一口食べると、最初の衝撃が今でも味わえる。 お肉の赤身は時間が経って火が入ったように落ち着いてきたというのに、まだまだその美味しさは健在だ。 そうして再び美味しい食事に舌鼓を打っていると、何か考え込むイードさんが私に顔を向けた。 「ところでルシェット、一つ聞きたいことがある」 じっと向けられた視線にどきりと心臓が跳ねる。 「は、はい!なんでしょう?」「ルシェットのスキルを見たが、『ヘビースマイル』……
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73食目・母娘の『ストゥリア・パンケーキ』

 「たっぷり寝かせたから良い感じに膨れ上がっているわ!軽く混ぜて、焼いていくわよっ」 エリザさんはフライパンに火の魔法を当て、温める。 そこにバターを乗せたら溶かしながら全体に広げた。 「じゃあルシーちゃん、お願い」「はいっ」 少し緊張でドキドキとしながら、おたまで生地をすくってフライパンへと注ぐ。 どろりとしながらもゆっくりとフライパンに乗った生地は綺麗な円を描いた。 綺麗な卵色の表面は時間をかけてゆっくりと火が通っていく。 その証拠に少しずつ泡が表面に浮かんで、ぽつっと消えた。「さ、ひっくり返すわよ」 エリザさんはにまりと笑うとフライ返しを持って、生地の下に差し込む。 最初は少しずつ、何度か繰り返すと生地がフライ返しの上に乗って、エリザさんははフライ返しを持ち上げた。 そしてくるんと反転。 すると、途端にぶわりと花の香りが辺りに充満して、薄茶色の綺麗な生地に焼き上がっていた。「ルシーちゃん見て、上手くできたわ」「わあ、すごく美味しそうです!」 微笑むエリザさんが生地焼きに集中し始めたら、次は私の番。 お皿を準備して卵を割って、卵黄と卵白に分ける。 そして全力で卵白を泡立てた。「完成よ。2枚目に行くわね」「はいっ」 エリザさんは1枚目の完成品を皿に乗せると2枚目を焼き始めた。 その間私は必死に卵白を泡立てて、泡立ってきたら卵黄を入れて、今度はさっくりと混ぜ合わせていく。「エリザさん、どうですか?」「うん、良い感じ。そのままそっちに乗せてくれる?」「分かりました」 エリザさんに言われるがまま、出来立ての生地に泡の部分を乗せていく。 エリザさんの方は生地をひっくり返して、私は次の準備を始めた。「もうできるけど、用意はどう?」「ばっちりです!」「じゃあ乗せるわね」 慣れた手つきでエリザさんは2枚目の生地を上に重ねる。 そしてその
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74食目・夫婦の時間

 私達もパンケーキを食べて、しばらくの談話をしたわ。 ルシーちゃんのお仕事、それから私の近況とルシーちゃんとの出会い、イードは万来堂ではどのように過ごしているのか、とか。 気になることはいっぱい。 だって私はずっと家で独り、大人しく過ごすだけなんだもの。 私が気になることを深々と聞いて答えてもらっただけだけど、とても有意義な時間だったと思うわ。 でも時間は長く取れなくて、お仕事で疲れてるし明日もお仕事があるルシーちゃんには、先にゆっくりと休んでもらった。「イード、まだ時間はあるかしら?」 再び帰り支度をしようとするイードに手に持った瓶を掲げて声をかける。 するとイードは目を見開いて準備の手を止めた。 「……いいのか? いい酒だろう、取っておかないのか?」「私が貴方と飲みたいの。だめ?」「だめではない。だが、確認はするべきだろう?」「全く、イードって本当にお硬い人ね」 本当は貴方の為に準備したのよ、なんて言えるわけもなく。 「帰る前に付き合って」と言って秘蔵の果実酒の栓を抜く。 漂う酒気の中に甘酸っぱい果物がふわりと香るお酒をグラスに注げば、深い赤色の液体のでありながら奥すら見通せる大人だけの世界が見えた。「どうぞ」「ありがとう」 注いだグラスを渡し、2人で掲げる。 昔はこうして一緒にゆっくりと飲む時間も無かった。 それほどイードが忙しそうにしていたのもあり、私も子供欲しさに余裕がなくなっていっていたのもあり。 お互いの気持ちが離れていく感覚が、今や不思議にさえ思える。「それにしても、知らなかったわ。自分の仕事をわざわざ娘に見せたくてこんなことをするなんて、ね。貴方も案外子供が欲しかったの?」「子供に対しての欲は……どうなのだろうな。だが、俺を父として見てもらうのならば、俺がどういう人間であるかをルシェットに知ってもらう必要があった。またお前みたいに泣かれてもかなわんからな」「あらあら。と
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75食目・記憶の食事

「おはようございます」「あら、ルシーちゃんおはよう」 昨日は眠たさが勝ってしまって、ご飯を食べた後先に寝かせてもらっちゃった。 起きた時にはイードさんもいなくて、エリザさんはいつものように優しい笑みを浮かべて朝ご飯の準備をしていた。「~♪」 ……あ、またエリザさんが鼻歌歌ってる。 なんか、少しだけ上機嫌みたい。 何かあったのかな?「ルシーちゃん、今日の朝ごはんは何が良いかしら?」「えっと、うーん……」「あんまり思いつかないかしら?前の世界で食べた好きなもの、とかでもいいのよ?」 好きなもの? 前の世界では何食べてたっけな……。 あ、そういえば食べてみたいものがあったな。「私、あったかいおにぎりを食べてみたいです!」  この世界にはおにぎりはなかったみたい。 お米を使う料理だって教えたら、ご飯は炊いてくれたけど日本ほどもちもちしてないご飯だった。 でも粒は大きめで、きらきら光ってるくらい綺麗。 カルスキュラも多分おんなじお米だけど、味や香りが強くてそこまで気にならなかったのかも。 これはこれで新たな発見だ。「さて、炊けたけど……どうやって作るのかしら?」「このちっちゃいボウルに一握り分のご飯を入れて、手に塩をかけてぎゅっぎゅってします」「て、手に直接塩を!?」「あ、ちゃんと濡れた手じゃないと手にご飯がくっついちゃいますよ。……あ、でもこのご飯はどうなんだろう……?」 エリザさんが準備してくれたのは月塩と呼ばれるもの。 透明な水晶みたいな石は月の欠片と呼ばれてて、厳密には魔素の塊なんだって。 これが塩の味がして、塩の役割をしてるみたい。 普通に海岸で採れるみたいだけど、なんだか不思議。 この月塩を削ったものを
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76食目・『おにぎり』

「わぁ……!えっと、いただきます……!!」 エリザさん製の異世界おにぎりを手に持つ。 強く握られてるはずなのに日本のおにぎりとあまり変わりなくて、崩れないように気を付けながら三角の頭を食べてみる。「はぐっ……」「どうかしら?」 もぐもぐしてると、エリザさんがじっと顔を覗いていた。 更に不安になったのか、「……あんまり美味しくなかった?」なんて声をかけられてしまった。「あっ、大丈夫です!美味しいです!」「……本当?」「ほ、本当です!昔食べたのより美味しいです!」「それはいくら何でも過剰じゃないかしら……?」「いえ、そんなことはなくて……――」 美味しかったのは事実。 私が感じたのは、温かいおにぎりってふわふわなんだなって感じたことと、塩かお米が違うからちょっと違う感じがしたのと、で……多分ちゃんと笑顔が出せなかったんだと思う。  私のお母さんは、忙しい人だった。 お父さんも仕事で殆ど家を開けてて、お母さんも仕事人間だから、一人の時間が多かった。 その間は勉強とか、友達と遊んだりとかで外食ばかり。 家に帰ってもコンビニやレトルトのご飯ばかり。 朝ごはんだって、ラップがされたおにぎりが置いてあるだけで起きた頃にはお母さんはもういない。 冷え切ったおにぎりが置いてあるのを喉に流して学校に行くだけだった。 だから……初めての温かいおにぎりを食べたことで、前の世界はどんな味だったんだろう、とすら思う。 懐かしくはない。 ただ、気になっただけ。「ルシーちゃん?」「…………エリザさん、私……この世界が好きです。人もご飯も温かくて
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77食目・朝のお仕事

『お母さんだから』 エリザさんの言ったその言葉が、頭の中で繰り返される。 単身赴任のお父さんと、朝から夜までお仕事をしていたお母さん。 二人とも忙しくて、休みの日でも駆り出されて家を出ることがあって、私はいつも一人だった。 でも、私には友達がいた。 時間潰しの塾にも生徒がいて、喋れる仲間がいた。 だから寂しくないし、そんなもんだって思ってた。 それが普通で、当たり前だと思ってたんだ。 でも、それは違ったみたい。 『お母さんだから』 温かいご飯と、エリザさんからぎゅってされた感覚が今でも残ってる。 こっちに来てからの生活が染み付いてきてる。 そこでふと過去を思い返すと……戻る気にはならなかった。 今のこの生活が、楽しい。 眩しい世界で美味しいご飯と、優しい家族と、楽しいお仕事と、私にお仕事を教えてくれる綺麗な先輩達。 あと、初めてできた友達のネリーさんも。 そう思ったら……私のこれまでの生活は、どれ程人気がなくかったんだろう、と思う。  家を出てお仕事に、街並みを見渡しながら歩き進めてたら横路に伸びる路地裏があった。 あれは、これまでの私。 あの物静かで少し暗い雰囲気は、私。 今はそこから飛び出して、広い世界を歩いている。 そんな錯覚さえする。「……今はこうして街の中を歩くだけでも楽しい」 思ったことを呟いて、朝の喧騒の中を歩く。 商店街は朝から賑わっていた。 「おはようございます」「あ、ルシーちゃんおはよ!」 店に入って更衣室に行くと、既に着替えを終えて整えているエラさんがいた。 今日も明るくて元気そう。「エラさんおはようございます!いつも早いですね……!」「そうかなぁ?そんなもんだよ。でね、朝のお仕事なんだけど――」
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78食目・効率よく!掃く!掃く!掃……んん?

「おや、ルシーさん、どうされました?」 声がかかって振り向くと、白銀の髪が少し跳ねた青年が立っていた。 挨拶はまだちゃんとしたことはないけど、流石に二日も連続で見てるから私は知ってる。 いつもお会計を担当しているお兄さんだ。「あっ、おはようございますっ!えっと、エラさんからお掃除をお願いされたんだけど、どこからどう拭こうか迷っちゃって……」「ああ、なるほど。フロア掃除を頼まれたんですね。でしたらおすすめのやり方がありますよ――」 それからにこりと優しい笑みで受けた提案。 私はほうきを握ってフロア掃除を始めた。 「お、お邪魔します……!」 ボックス型になった会計スペースに足を踏み入れて、ほうきでささっと掃いていく。 会計担当のお兄さん・エキレックスさんから教えてもらった通りに、最初は会計スペースを掃いた。 一段上がったこの場所は、特に目立った汚れはないような。 それでも綺麗に掃いていくのが掃除である。 それから段差を降りて、入口周辺。 扉の前からテーブルに至るまでのスペースに周辺のゴミをかき集めていく。「んー……んん?」 入口だからだろうか、それともセレンさんがいつも座っているスペースから少し遠いから? 集めていくと埃や土のようなゴミが集まってきた。 お客さんが順番待ちをするウェイティングスペースも少し汚れてるみたい。 中々掃除が行き届かない場所だもん、きっと仕方がないよね。 それから窓の下やテーブルの下を履いていく。 しばらくするとほうきの毛先に攫われて、きらりと何かが光った。「うん?……こ、これは……!!」 拾い上げたら鈍く銅色に光る円盤が。 銅貨。銅貨がある。「え、エキレックスさん!銅貨、銅貨拾っちゃいました!」「あ、お金落ちてた?当たりだね。きっとお客様が落としたものかも。これからもお金見つけたら会計スペースに置いといてくれる?」「わ、わかりました……!」 び、びっくりした……。 お金が落ちてる事があるんだね。 食べ物の欠片とか、髪の毛とか埃をさっきから見るけど、こういう物体が落ちてるとは思わなかったな……。 それから更に掃除を進めていって、もうすぐカウンターテーブル。 端っこの会計スペースから始まって壁沿いにぐるりともうすぐ半分ってところかな。 すると今度はきらりとこれまた光物
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79食目・ちょっとした準備も

「あの……私、まだこっちの世界の言葉を書けなくて……」「…………あー、そうだった!ごめんごめん。じゃあ僕が書いておくから、詳細教えてくれる?」  この世界の言葉はまだ読めるだけ。 それを伝えると、エキレックスさんは謝罪しながらもさらさらと書類に書いてくれた。 ピアスを預かってもらって、いざ掃除の続きへ。 落とし物を見つけてからカウンターテーブルまで吐いていくと、今度は食べ物がそこそこ落ちてる事に気付いた。 「わあ……」  コーンのような黄色い粒、細く長い葉物。 多分サラダ系を運ぶときに転げ落ちたのかな? カトラリーやコップを収納した棚の下の隙間からはお箸やフォークが出てきた。 準備をする時に落としちゃったのかも。 それから多分きっと伝票であろう紙の切れ端。 入口と違って大き目なゴミが目立つだけに、何があったのか自然に想像してしまう。 「カトラリー系は全部洗い場に置いて行ってね」「はぁい」  気付いたエラさんに指示を貰って洗い場へ。 それから更にこの洗い場まで掃いていくと、「おはようございます」と声が聞こえた。 厨房に顔を向ければラリエーヌさんとセレンさんがやってきた。 どうやら今日はヴィラさんがお休みのようだ。 「おや……おはよう、ルシー。今日はフロア掃除を教えてもらってるのかい?」「セレンさんおはようございます!そうなんです。入口から掃いてきたんですけど、面白いですね!いろんな物拾っちゃってます!」「まあ……僕の力ではフロア全体を清掃することはできないからね。漏れがあるのは仕方ない。
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80食目・いざ、3日目

「ん、しょっ……と!セレンさん、多分全部掃けたと思います!」「毎日コーティングしてるんだし、清掃なんて大体でいいんだよ。君も真面目なことだね。――清掃」  手を広げたセレンさんがスキルの名を呼んで力を発動させる。 私が集めたごみはふわりと浮き上がって、またセレンさんの背後に飛んでいく。 よく見るとセレンさんの後ろに薄っすらと見えた魔方陣のようなものに吸い込まれていくように見えた。 何度か見ているけど、相変わらず見慣れることはなさそう。 「えっと……ありがとうございます」「これもボクの仕事だからね。ボクがいなければ魔道具の塵取りが使われるところだけど、まあ出番まで休んでいればいいさ」  セレンさんはゆっくりと椅子に座り、相変わらずモップにもたげる。 片足が椅子に上がって、いつもの姿勢になった。 そんな姿に私は一度ほうきを片付けてセレンさんのもとに戻る。 「セレンさんのモップは特別な物なんですか?」「いや、これはただのアイデンティティ。こんな背がバカ高くて不愛想な男が接客なんてしたら、お客様がビビッて食事にならなくなる。回転率も悪くなる。だからってただの清掃係に回っても、このまま何もなく座っていたらお客様は気になるだろうね。それならこうしてモップを持って、『何かがあった時の為の清掃係』として居た方が気にならないだろう?動かないのは何かがあった時だけだって把握してもらえる」「なるほど……」「飲食店で『清掃係』なんて名前でボクを雇ってもらえるのはこの店くらいだよ」  ふぅ、と息を吐くセレンさん。 その表情はどこか憂いがあって、何とも言えない気持ちになってしまった。 「朝礼!」  そこにエラさんの声が響いて、
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