今日から文化祭に向けて劇の準備が始まった。まだ全体で合わせた練習はせず、各々台本に向き合っていた。部活がある人以外はみんな残っていて、それだけ大事な行事なのだと実感した。 「難しい……」 「どこが?」 私がポツリと言葉をこぼすと、隣にいた蓮がすぐに反応して、私の台本を覗き込む。私は指でとあるセリフの部分を指さした。 「あー……そこか」 「蓮はどんな感じで言う?」 蓮は実際にセリフを読んでくれた。自然と蓮の手が動いていたため、演技が得意なのだろう。あまり見たことのない姿に新鮮さを感じた。読み終わって蓮がこちらを窺うように見る。私は感謝を伝えて台本に向き直った。 「なるほど」 そんなこんなで蓮は何回も練習に付き合ってくれる。私は数回頷き、台本にメモをした。 「陽菜ー」 「ん?」 すると、衣装係である志織に声をかけられる。 「衣装のサイズ測るから来てー」 「はーい」 私は台本を置いて立ち、蓮の方に視線を向ける。 「ちょっと行ってくるね」 「おう、いってらっしゃい」 蓮は手を振って送り出してくれる。優しい笑顔に心の奥が温かくなった。 サイズを測り終わり、蓮の元へと駆け足で戻る。 「ただいま」 「おかえり」 私は蓮の隣に腰を下ろした。私が一人で台本を読んでいると蓮が言葉をこぼす。 「ちょっと合わせてみるか?」 「いいけど、まだ覚えてないよ」 「見ながらでいいから」
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