「あなたみたいに温かい環境で育った人なら、そういうことも簡単に言えるよね」玲奈は相変わらず柚香のことが好きではなかったが、その口調は以前よりずっと穏やかになっていた。「でも私みたいに、そもそも選ぶ自由すらなかった人間は、どうやって自分を救えばいいの?」柚香が答える前に、玲奈は続けた。「私だって、いい仕事を見つけて親から逃げようと考えなかったわけじゃない。でも無駄だった。どこへ行っても、あの人たちは必ず私を見つけ出す。本当に見つからなかったら、私のいる街まで来て、親族訪問中に行方不明になったって警察に届け出て、警察経由で私に連絡させるの。いろんな方法を試したけど、一度も逃げ切れなかった」あんな家庭から逃げられないとわかっていたからこそ、彼女は遥真と柚香の間に割って入った。浮気相手なんて大嫌いだった。けれど仕方なかった。あの日、柚香が助けた相手が、よりによって遥真だったのだ。「あなたには選択肢があったよ」柚香ははっきりと言った。「本当に?」玲奈は何にも興味がなさそうな目をしていた。「もしあんなことをしていなかったら、私たちは一生友達でいられた」柚香は本心からそう言った。「私はあなたがあの息苦しい家庭から抜け出せるよう手伝ったと思うし、あなたが得意な分野で輝けるよう応援したと思う」玲奈は小さく笑った。柚香には、その笑いの意味がわからなかった。「無理だよ」玲奈は今までになく率直だった。「初めて会った時から、私はあなたが嫌いだった。温かい家庭も嫌だったし、何事にも執着しないその考え方も嫌だった」柚香は過去を振り返った。決定的な亀裂が入る前まで、二人は仲のいい友達だったはずだ。「私はあなたとは友達になれない。一緒にいるだけで、この世の不公平さを思い知らされるから」玲奈は胸の内をすべて吐き出した。「みんなが必死に頑張って手に入れるものを、どうしてあなたは簡単に手に入れられるんだろうって、いつも思ってた。正直に言うと、あなたは本当に運がいい」その言葉には、隠しきれない羨望が滲んでいた。柚香は否定しなかった。母は若いうちから、自分のために衣食住に困らない温かい未来を用意してくれた。成長する過程でも、母と弘志はたくさんの愛情を注いでくれた。自分は幸せな子どもだったと思う。遥真とのことや、その後に起きたあれこれも
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