「でも、さっきのは……」柚香は、自分の気持ちをどう表現していいのかわからなかった。「気にしなくていいわ」安江は娘の考えていることをひと目で見抜いた。自分の娘なのだから当然だ。「妄想が激しくて頭がおかしい人よ。ただ都合よく使われているだけの雑用係だと思っておけばいいのよ」「うん」柚香はそれ以上何も言わず、頷いた。大人同士のいざこざには、やっぱり口を挟まないほうがいい。母の経験も能力も、自分とは比べものにならないほど上だ。だから母が選んだ道なら、柚香はいつだって応援する。「さあ、私の自慢の娘、ぎゅっとさせて」安江が両手を広げる。その目には優しさと温もりが滲んでいた。柚香は一瞬きょとんとする。次の瞬間、安江がそっと彼女を抱きしめた。温かなぬくもりに包まれた瞬間、柚香は少しだけ呆然とした。――自分は、母の自慢の娘なんだ。「このところ大変だったわね」安江の腕の中は温かかった。あちこち飛び回っていた娘を思うと、心配でたまらなかったのだ。「これからはちゃんと休みなさい。あんまり自分を追い込みすぎちゃだめよ」口にはしなかったけれど、気にしていなかったわけではない。大切に育ててきた娘が、外の世界で数々の苦労を経験しているのを見れば、胸が痛まないはずがない。そして同時に、和雄がどうしてあそこまで目的のためなら手段を選ばず、娘である自分を追い詰めることができたのか、ますます理解できなくなった。けれど、今はもうそんなことは重要ではない。彼女にはもう、何より大切な家族――柚香がいるのだから。「うん」柚香は素直に頷いた。「僕もぎゅーする!」陽翔が小走りで入ってきて、小さな手を二人に向かって伸ばした。くりくりした大きな目が愛らしい。柚香と安江は顔を見合わせて笑い、陽翔を抱き上げた。家族三人、幸せそうな笑顔に包まれ、部屋の中は温かな空気で満たされた。十分後。柚香はその幸せな輪の中から、半ば追い出されることになった。机の前で、陽翔がパソコンを指差しながら安江に尋ねる。「おばあちゃん、ここがまだちょっとわからないんだ。さっき何回もやってみたけど突破できなくて」「じゃあ教えてあげる」安江は陽翔の隣に腰掛け、キーボードを軽快に叩いた。「このバグはかなり奥に隠れてるの。まずここを潰してから先に進みましょ」陽翔
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