「暇つぶしなら、毎日あの子に会いに行く必要なんてないだろ?」雅人は疑うような視線を向け、その言葉をまったく信じていない様子だった。「結婚なんて考えてないって本人も言ってるじゃない。そんなに口を出してどうするの」玲子がすかさず口を挟む。「修司がどんな性格か、あなたもよく知ってるでしょ?小さい頃から今まで、私たちが心配するようなことなんて一度でもあった?」「朝倉家との縁談もまだ進めていることを忘れるな」雅人が釘を刺す。修司は淡々と答えた。「分かってる」雅人はさらに尋ねる。「朝倉家のお嬢さんのことは好きなのか?」修司の表情は変わらない。「そこまで接点がないので、好きかどうかは何とも言えない。ただ、安心して。きちんと整理するよ」「お前に一つやってもらいたいことがある」雅人は本題に入った。「それができたら、お前の恋愛には口を出さない。あの若手女優とのことも何も言わない」修司は少しも動じなかった。この家で長く暮らしていれば、会話の至るところに罠があることくらい嫌というほど分かっている。「家のために力を尽くすのは当然だ」非の打ちどころのない返事をしながら、「何をすればいいのか、聞かせて」と言った。「遥真が離婚のときに柚香へ渡した財産を取り戻せ」雅人は、あれほどの財産をあっさり渡したことを思い出すたび腹立たしかった。「それと、陽翔の親権も久瀬家に戻すんだ」このところ、耳に入る噂話があまりにも多かった。陽翔は幼い頃から久瀬グループの次期後継者として育てられてきた。そのため、業界では彼が久瀬家にとってどれほど重要な存在か誰もが知っている。それなのに今では、「久瀬家ほどの家柄が子どもの親権すら取れなかった」と陰で囁かれている。そんなことでは、自分の面目が立たない。何としてでも、あの財産も陽翔の親権も取り戻さなければならない。「それは遥真たち二人の問題だ。俺が口を挟むべきではない」修司は遥真から言われたことを忘れていなかった。よほどのことがない限り、彼とはできるだけ関わらず、衝突も避けるつもりだった。「二人だけの問題じゃない」雅人は言い聞かせるように続けた。「この件は、もう久瀬家の名誉にまで影響している」修司は黙ったままだった。遥真と敵対する気はない。そんなことをしても、自分には何の得もない。「もしやり遂げたら、次
Read more