スピーカーモードの通話が切れると、ようやくその場は静かになった。健太が自分から説明する。「常和さんが電話してきたのは、たぶん承輝さんのほうで何かあって、父親に泣きついたからだと思います。社長の計画が分かるまでは、こっちから何も言わないほうがいいでしょう」「たぶん、こっちに来るよ」柚香がそう言うと、健太はごく自然に返した。「でも、ここがどこなのかも知らないでしょう」柚香はぱちりと目を瞬かせる。確かに、その通りだ。柚香はスマホを手に取り、母に無事だと連絡しようとした。神崎家を出てからこんなに時間が経っているのに、まだ帰っていないのだから、きっと母も心配している。「柚香さんのお母さんには、数時間前に社長から電話で話してあります」健太は彼女が開いた連絡先を見て、何をしようとしているのか察し、自分から言った。「相手を警戒させないために、少し時間を置いてから来てもらうよう伝えてあります。時間的にも、もうすぐ着く頃ですよ」そう言い終えたちょうどその時。安江と昭彦が到着した。柚香が川へ転落したと聞いてからというもの、安江はずっと気が気ではなかった。こうして無事に目を覚ました姿を見て、ようやく胸をなで下ろす。ひとしきり体を気遣ったあと、安江は尋ねた。「どうして川に落ちたの?」遥真から聞かされていたのは、柚香が川へ転落して意識を失ったことと、帰るのは少し遅くなるということだけだった。どうして川に落ちたのか、どこで落ちたのかまでは聞かされていなかった。「ちょっとした事故だよ」柚香はこれ以上心配をかけたくなくて、軽く答えた。「もし誰かにわざと車をぶつけられて川に落とされたうえ、川の両岸に何十人もの殺し屋が待ち伏せしてたことを『ちょっとした事故』って言うなら、確かに大したことじゃないですね」まるで人の気持ちなど考えないような口調で、慎吾が淡々と言った。安江と昭彦は同時に眉をひそめる。安江が低い声で聞く。「殺し屋?」昭彦も続けた。「車をぶつけられた?」慎吾はここまでに起きたことをすべて話した。一つ一つの細かな出来事も、どれほど危険な状況だったのかも、一切省かなかった。ただ、戻ってきてから黒幕を問い詰めたことだけは話さなかった。慎吾にとって、安江と昭彦は確かに社長の両親だ。だが、昭彦は黒崎家の人間でもある
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