杏奈は、竜也の顔を見るたびに、さっき彼が不機嫌そうな顔で使用人に自分を物置に閉じ込めさせたことを思い出してしまうのだった。すると、彼女は顔から血の気が引き、恐怖に震えた。杏奈は数歩後ずさると、警戒心をあらわに竜也を睨んだ。「何をする気?」杏奈の怯えた様子を見て、竜也の胸にチクリと痛みが走った。どうやら、本当に彼女を怖がらせてしまったらしい。そう感じた竜也は口調を和らげ、杏奈に優しい眼差しを向けた。「さっきのことは俺が悪かった。もう二度と、お前を屋根裏に閉じ込めたりしない」だが、杏奈は彼の言葉を信じようとはしなかった。「出ていって!」しかし竜也は部屋を出ていくどころか、杏奈に向かって二歩、歩み寄った。「お前とは離婚しない。この中川家から出ていくことも許さない。あの男とのことなら、水に流してやる。これからもお前は俺の妻だ。よく考えてみろ。手足が不自由なお前が、この家を出て一体どこで暮らせるっていうんだ?」杏奈は鼻で笑った。「私がこんな体になったのが、一体誰のせいなのか、あなたがいちばん分かってるはずよ」それを聞いて竜也の顔がこわばった。まさか、こいつ……全部知っているのか?そう思うと彼の心に、一瞬の動揺が走った。「何を知っているっていうんだ?」「竜也、さっさと離婚届を出しにいこう。財産なんていらない。浩の親権も譲るわ。とにかくあなたと別れたいの!これからあなたと真奈美がどうなろうと、私の知ったことじゃない!」そう言われると竜也の心にあった動揺は、たちまち怒りへと変わった。これまでずっと杏奈を騙し通せてきたのに、彼女が一夜にして真相を知るはずがない。そうだ、こいつはただ嫉妬しているだけなんだ。竜也は冷たい顔で言った。「杏奈、何度言えばわかる。俺と真奈美はただのダチだ。そんなことをいつまでも棚に上げて、しつこいぞ。真奈美はずっと夫に一途なんだ。お前みたいに、外で平気で男を作る女と一緒にするな」そうか、彼のなかでは、自分はそういう女だったのね。「あなたがどう言おうと、私は絶対にあなたと離婚するから」そんな彼女の態度に竜也は完全に逆上した。「いいか、杏奈。離婚するもしないも、お前が決めることじゃない。それと、この中川家の屋敷から一歩でも外に出るな。もし破ったら、外にいるあ
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