鈍く乾いた音が病室に響き、杏奈は思わず気絶しそうになった。「ぐっ――!」思わず息を呑み、円香の腕をバシバシと叩く。「あ、円香!首が、首が折れそう!」「ああっ、ごめん!」円香は慌てて手を離した。「だ、大丈夫!?お医者さん呼んでこようか?」「大丈夫……」杏奈は痛む首をゆっくりと回した。「ちょっと筋が鳴っただけ。どうってことないわ」「あの……ごめん」円香は頭を掻いて、ばつが悪そうに、へへっと笑った。「気にしないで」杏奈も、つられてくすっと笑い声を漏らす。円香の不器用で乱暴な抱擁のおかげか、胸の奥底に澱のように溜まった暗い感情が、少しだけ軽くなった気がした。二人がそんなやり取りをしていると、不意に病室のドアをノックする音がして、大地が部下を一人連れて入ってきた。その顔つきは、どこか疲労の色が濃かった。「森口警部」杏奈は姿勢を正して声をかけた。「捜査の方は、どうなりましたか?」大地はすぐには答えず、まず杏奈の目をじっと見て、ふっと表情を和らげた。「だいぶ視力が回復してきたみたいですね。私の顔も、ちゃんと見えているようで安心しました」「まだ少しぼんやりしていますけど、なんとか人の顔の判別はつくようになりました」杏奈が手短に近況を伝えてから、本題へと切り込んだ。「今日、容疑者の男が亡くなったと聞いたのですが……捜査に支障は出ているのでしょうか?」「はぁ……」その話題に触れた途端、大地は深く重いため息をついた。「あの男が死んだことで、藤本家へと繋がる決定的な手がかりが潰えてしまいました。状況証拠から強い疑いはあっても、一から調べ直すには莫大な時間がかかります。それに……」一度言葉を切り、大地は悔しげに目を伏せた。杏奈に対して顔向けができないとでも言いたげに、声が重く沈む。「我々が次の手を打つ前に……事件が『終わって』しまったんです」「終わった?」杏奈は怪訝に眉をひそめた。「どういうことですか?まさか、真犯人が見つかったとでも?」「警察の公式発表としては、そういうことになります」大地は苦々しく頷いた。「じれったいわね」円香がしびれを切らして身を乗り出した。「ぐずぐずもったいぶらないで、最初から最後まで一気に説明してくださいよ!」大地は一つ深呼吸をすると、端的に二人へ事の経緯を説明し始めた。要するに、警
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