All Chapters of ゲーム中にモニターに吸い込まれたら異世界を冒険するハメになった: Chapter 41 - Chapter 50

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青年と仲間たちは自己紹介をする2

「そうですね、お互いわだかまりがあってはこの先王都までの旅も落ち着いてできないかも知れません」 沈黙は気にしていなかっただろうクリスティーンだが、思うところがあったのだろう。 こっちは存外というべきかさすがはお姫様と言うべきなのか、なかなか気遣いのできるレディである。「なるほど、では改めて私から。ファンタジア王国騎士団第十七番隊隊長クリス・パークだ。邪悪なウィザードにさらわれたクリスティーン姫救出を任された我が隊だったが、残念ながら……しかし、お前たちの協力で無事に姫を助け出すことができた。感謝する」「じゃあ、右回りとして次は俺が自己紹介しよう。プリーストのライアンだ。そっちの三人は知っての通り、元はそのウィザードの部下としてダンジョンの第三階層の管理を任されていたんだが……王女様の仲間になった方が得かと思って寝返らせてもらった」 寝返ったと聞いて、クリスはあからさまに軽蔑の態度を示す。(融通の効かないやつだな) と、レイトなんかは思うのだけど。「じゃあ次はあたしかい? あたしはアマゾネスヴァネッサ。そいつがいい男だったのと、ちょうど退屈していたんでついてきたのさ。おかげで退屈しないよ」「ファンタジア王国現国王エドワード・ハッセイ8世の末子クリスティーン・ハッセイです。みなさまに助けていただいて、本当に感謝しています」 と、なぜかそこだけ四頭身のクリスティーンがペコリと頭を下げる仕草が入る。 カワイイなこのヤロー。「ええと……世良玲太です。なんて言えばいいかな? 家でゲームをしていたらこの世界に飛ばされて……」「待て待て待て。え? 今、なんて言った?」 と、やっぱり慌てて聞き返すライアンに「家でゲームをしていたらこの世界に飛ばされて」 と、律儀に繰り返すレイトはやっぱり育ちがいいのか?「この世界ってどう言うことだ? 何か? この世界以外に別の世界があるって
last updateLast Updated : 2026-01-26
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青年と仲間たちは自己紹介をする3

「すると、私の倒したウィザードは姫をさらったウィザードではないのか!?」 どこに驚愕しているのか、クリスよ。 そして、クリスに対して何を勝ち誇った顔をしているんだライアン。 それからクリスティーン「ええ。私をウィザードから救ってくれたのはレイトです」 とか、追い討ちをかけてやるな。「まぁ、それはともかく。塔の最上階からダンジョンの最下層に飛ばされて、その地下ダンジョンを探索している間にヴァネッサたちと仲間になったわけだ」 ようやくパーティメンバー全員が知っているところまで話し終わった時、クリスティーンの表情は確信に満ちたものになっていた。「やはり」「王女様、やはりとは?」「これは王家の伝承に語られているのですが、『王国に危機が訪れる時、次元の回廊を越え救世主が現れる』と言うのがありまして、その救世主というのが、レイトなのではないかと」「次元の回廊?」 ヴァネッサ、そこ食いつくとこじゃないと思うぞ。「それが何を意味する言葉なのかは判りませんが、レイトが最初に冒険した洞窟というのが、その『次元の回廊』なのではないでしょうか?」「なるほど。しかし、当事者である王女を目の前にしていうのもはばかられることだけど、王族とはいえ末子のお姫様がさらわれることが王国の危機とは少し大袈裟じゃありませんか?」「いや、そうとも限らん。私は父から姫が光の巫女として誕生したと聞かされている」「光の巫女?」「ああ。女王が姫をご懐妊された際、夢にて光天使が顕れ『この世を照らす巫女を授ける』と告げられたそうだ。その姫こそがクリスティーン姫である」(あー、宿命のヒロイン物語展開ですか。で、俺、救世主系主人公なわけね) ゲームやろうとしてモニターに吸い込まれ、視覚情報がまるっきりゲーム画面なせいか、RPGオタク思考全開なレイトであった。 …………。 四人とも地の文で突っ込んだし、いつもレイトには突っ込んでるから、今回は突っ込んでやらないんだ
last updateLast Updated : 2026-01-27
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青年はむしろTRPGっぽいワイルドキャンプの準備をする1

「しかし、わけも判らず次元の回廊でいきなりモンスターに襲われたにもかかわらず苦もなく撃退するとか、たった一人で島のモンスターと戦って塔の遺跡を冒険するとか、あんた存外勇者だな」 まさにゲーム感覚だったことを考慮に入れても、「次元の回廊」「ハジマリの島」「塔の遺跡」と一人で何度も死にかけながら戦ってきたのだから、命知らずの勇者といわれても「ダヨネー」てなもんだ。「しかも、あたしと出会うまでダンジョンの中、お姫さん守りながら戦ってたんだろ?」 いわれてみればその通り。 その通りすぎてクリスが歯噛みで悔しがるくらいだ。 いやいや、悔しがるんじゃなくそこは感謝を示そうよ。 心が狭いぞ、クリス。「さて、この町を出るとしばらくはモンスターひしめく中を荒野行動だ。明日は旅の準備と休息にあて、明後日出発でどうだろう?」 ライアンの提案にヴァネッサが賛意を示し、クリスも異議はないようだ。 異世界の旅慣れないレイトは意見の言いようがなく、クリスティーンに至ってはお任せします状態だ。 話し合いは終わりとでもいうようにクリスが立ち上がり、ライアンも後を追うように部屋のある二階へ上がっていく。「あたしもベットとやらで寝るのは初めてだからね。楽しみだなぁ」 なんてヴァネッサもほくほく顔で部屋に行った。 もちろん、レイトの視覚情報的にはそんな細かいニュアンスは表現されていなかったけど、なんとなくそんな風に伝わってくる。 不思議だよね。 残った二人の間になんとも言えない沈黙が生まれる。(……気まずい) 相手の表情や仕草が判ればまだ、対処もしようがあるだろう。 けど、四頭身の2Dキャラクターが身動ぎもせず椅子に腰掛けているビジュアルだけでは相手の気持ちが推しはかれない。(困ったもんだ) と、心の中ではつぶやくものの、行動に移さないあたり案外奥手であることよ。 そのままなんとなく時間だけがすぎ、「そろそろ寝ましょうか?」 というクリス
last updateLast Updated : 2026-01-28
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青年はむしろTRPGっぽいワイルドキャンプの準備をする2

 この世界の睡眠は一瞬である。 まぁ、この感覚はどうもレイトだけのもののようだけれど、ベッドに潜り込んだ瞬間から睡魔に襲われ、目覚めた時にはちょうどいい朝になっている。「いいのか悪いのか」「なにを言っているんです?」 独り言が口をついてしまうなんて結構末期だよ、レイト。「あー。いや、独り言」 今日は休息をかねた買い出しの日である。 クリスは護衛と称してクリスティーンに付き添って食料の買い出し、残りの三人は残りの冒険道具の買い出しだ。 クリスは文無し、こちらはダンジョンでたんまりと稼いだ軍資金がある。 あるんだが……「俺たちの金をあてにするとか、王国騎士としてどうなんだ?」 というライアンの愚痴はもっともだ。「金がないってんなら仕方ないだろ」 と、一応優等生じみた弁護をしてみるレイトだって気持ちはおんなじだ。「愚痴ってないでとっとと買い物ってやつをすましちまおうぜ」 こういう時、むしろヴァネッサの方が男前なのは国に縛られていない故か、そもそもの性格か? ともかく準備を整えなければ旅に出られないのだから、どう愚痴ってみても自分たちにとっても必需品に違いなく、ぐちぐちと言いながらも買い物はたんたんとすましていく三人であった。 まずは野営の準備だ。 神殿遺跡からこの町の間で一泊野営はした。 正確には暖をとるのと野生動物を近づけさせないために火を焚いてその周りで寝ただけの単なる野宿だ。 一泊二泊ならそれでもなんとかなるだろう。 しかし、これからの旅路は十日やそこらじゃないらしい。 家や宿のベッドとまではいかなくてもそれなりの睡眠環境を整えなければ、体が参ってしまう。 てなわけで、彼らは雨露をしのぐタープテントを二張り、寝袋と厚手のマントを人数分。 火《ほ》口《くち》やランタンは魔法でどうとでもなるので用意はしない。 魔法様様だなとレイトは魔法のありが
last updateLast Updated : 2026-01-29
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青年はむしろTRPGっぽいワイルドキャンプの準備をする3

 そのほかに彼らはスパイク、ハンマー、かぎ爪、ロープ、日除け頭巾を買った。「ポーションは食料班?」 と、一通り揃えたレイトは指差し確認をしながらライアンに訊ねる。「ポーションはこの規模の町じゃ入手困難だ。たぶん手に入らんよ」「え?」「ああ、状況的にやばいよなぁ」 ライアンもその危機的状況は理解しているようだ。 手元にはHPポーションがレイトとクリスティーンが持っている二つしかない。 MPポーションに至っては0だ。 神殿遺跡の加護とやらで守られたこの一帯でさえ、結構な頻度でモンスターは現れた。 この先ポーションなしで旅を続けられるのか?「なかなかシビアなシナリオだな」 なんて呟いて二人をキョトンとさせるレイトであった。 さて、宿に戻ってくると、店先に騎乗用の馬と二頭立ての馬車が一台停まっている。「な、なんだ?」 と、レイトたちが驚くのも無理はない。 店の中に入ると、クリスティーンとクリスが待っていた。 四頭身の2Dキャラなのになんだか鼻高々な雰囲気を醸し出しているクリスにライアンが開口一番「あの馬はお前が買ったのか?」 と、少々詰問のニュアンスを込めて問いかける。「ああ、姫を歩かせるわけにいかんだろう」「そっちじゃねー」「俺の馬か? 騎士として馬に乗るのは当然じゃないか」 悪びれるでもなくそう言い放つクリスに頭を抱えてしまいたくなるライアンだった。「その金はお前の金じゃねーだろ!」「私のことなら気にしないでください。どうせ王都に戻ってしまえば使い道のなくなるお金です」(確かにそうなんだろうけど……) この世界では世間知らずなレイトも呆れるしかない。 どうやら王国騎士の装備は基本すべて支給品らしい。 中には自分で揃える者もいるらしいが、クリスにいわせれば酔狂以外のなにものでもないのだという。 
last updateLast Updated : 2026-01-30
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青年は考え方の違いに憤懣やる方なく思う1

 この辺りで唯一の安全地帯である町サナリアムを出発するとかろうじて痕跡が判る街道跡をたどって王都へ向かう。 先頭は意気揚々と騎乗するクリス。 その後ろを二頭立ての馬車が進む。 重い荷物とクリスティーンを乗せ、ライアンが口取りをしているが路面状況が悪いのでレイトとヴァネッサもいつでも馬車を押せるように歩いている。 ともすると遅れがちになるその三人を叱咤しながら先を急ぐクリスにいい感情など持ちようのない彼らから、ぐちぐちと文句が口をつくのも仕方ないことだろう。 もちろん馬上の人であるクリスには聞こえようもない。 レイトにとって幸いなのは、従来通り重い装備や個人所有の荷物の負担感も長距離を歩き続ける疲労感も、この世界に来てそれほど強く感じないことだった。 ヴァネッサにしろライアンにしろ、文句を言いつつ足取りはしっかりしている。 ずっと歩いていても歩くペースは変わらない。(こういうところが現実感に欠けるんだよねー) なんて感想が湧くのも当然かもしれない。 モンスターとの遭遇はドラゴンクエストほど頻繁ではなかったが、安心して旅を続けられるほどでもなかった。 フィールドでのエンカウントは、なぜか第三者視点を与えられているレイトにとって不意打ちなどあり得ない。 俯瞰で自分を中心にそれなりの範囲が見えているレイトは敵の接近を容易に把握できるのだ。 他の冒険者には「敵感知能力が優れている」と思われているようだ。 まぁ、特殊能力といえば言えなくもないわけで、ややこしい説明をめんどくさがったレイトは「気配が判る」と雑に説明してやり過ごすことにした。 戦闘は自分の体を動かして行うので、戦ってる感は充実している。 街道跡に出没するのはゴブリンやオーク、ゾンビにスケルトンといったあたりの人型モンスターが多かった。 サナリアムまでの冒険でそこそこのレベルアップを果たしていたレイトにとって、RPGの序盤で馴染みのあるモンスターに遅れをとることはない。 もちろん仲間の冒険者も同様だ。
last updateLast Updated : 2026-02-02
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青年は考え方の違いに憤懣やる方なく思う2

「素直に礼を言えばいいのにな」 と、ライアンが耳打ちするのに苦笑するしかないレイトであった。 湿原を抜けると森林地帯に変わる。 再び出現モンスターはオークやコボルドが多くなる。 それだけならどうということでもないのだけど、オーガ、トロールといった大型のモンスターや群の数が多く出現頻度も高いウルフもいて、なかなか気が休まらない。 救いは野営がなぜか安全なことだろうか? 例によって設営したテントに潜り込むと、一瞬にしてすっきり爽やかな朝になる。 異世界的超回復なのか怪我の程度も軽くなり、MPも完全回復していることが判るので、情緒はないけど安全とバーターなら悪くないと思うレイトであった。 森林を縦断し、草原が広がるようになると、街道が少しずつマシになってきた。「そろそろ王国の勢力圏だ」 と、クリスはいう。「神殿遺跡も王国内じゃないのか?」 レイトの疑問ももっともだ。「人族の国境線の話なら確かに王国領だが、必ずしも実効支配できているとは限らないんだ」「どういう意味だ?」「人族はこの世界で最も数の多い知的生命体で、その人口を誇って国を起こし、広大な領地を主張してはいるが、全ての種族を支配下に治めているわけではない」 この世界には、人族に友好的なエルフ族、ドワーフ族や敵対的なゴブリン族、オーク族などといった知的生命体も多い。 それらの種族はそれぞれに国を持っていたり土着の集落を形成していたりする。 人族の国内にそういった場所がいくつかあって、それぞれがテリトリーを主張しているのだとライアンが補足してくれる。「あー、なんとなく理解できたぞ。つまり、人族の地図の上では領地であっても実際には人が自由にできない場所があるってことだな」 地球にも非人間ほど高度な知的生命体はいないが、前人未到の地や野生動物のテリトリーなど、ままならない場所はいくらでもある。「王国も軍や開拓民を派遣して実効支配地を広げる努力をしているが、なかなかうまく進まないのだ」
last updateLast Updated : 2026-02-03
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青年は考え方の違いに憤懣やる方なく思う3

 レイトに言わせればぶっちゃけ、そこまで土地が必要とは思えない。 道々この世界について聞きかじった限りでも、町や村は大きなものじゃない。 町であっても人口数千人規模だ。 王都でさえ三〇万人だっていうじゃないか。 しかも、隣町まで一日二日とかかるという。 それなら町と町の間に開拓する余地が十分あるじゃないか。 あれか? 版図の大きさを国同士で競ってマウントでも取り合っているのか? そんな王様のプライドを満たすために危険な辺境地へ送り出される開拓民など、たまったものじゃないぞ。 実効支配に失敗したらサナリアムのように棄てられるんだとしたら、そんなの間違っている。 などとレイトはその話を聞いて以降ずっと憤慨していた。「レイト……なにをそんなに憤っているのですか?」 あまりにもカリカリしていたので見かねたクリスティーンが声をかけてきた。 ことは王権のあり方に対する怒りである。 末姫とはいえ王族の直系にその憤りをぶちまけるわけにいかないと、さすがのレイトも躊躇していたのだけれど、末っ子特有の頑固さに折れ、洗いざらい思いの丈を吐露せざるを得なくなった。「それは……」 と、クリスティーンは呟いて悲しそうに俯いてしまう。 しかし、クリスやライアンにはレイトの考えが理解できない様子で「王とは、国とはそういうものではないか」「なにが問題なんだ?」とまったくお話にならない。 ヴァネッサは「土地なんて寝られるだけの広さがあればそれ以上必要ないんじゃないかい?」 なんて、日本人みたいなことを言う。「天下とっても二合半ってか?」「なんだい? それ」「いや、気にしないでくれ」 さすがにレイトだって人が生きていくには食わなきゃいけないこと、より多くの人が食べていくのに広い土地が必要なことは理解している。 しかし、そこは意外と古風な日本男児の気風がある。(足るを知る) 
last updateLast Updated : 2026-02-04
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青年は価値観の違いを認識する1

 ガゼラクトは人口三千人、三分の一の千人が兵士という砦の町だ。 中に入ってまず驚いたのが、2D四頭身が懐かしいくらい粗いポリゴンキャラに変わったことだった。 そこかよ、レイト。(これならまだ2Dだった方がよかった) なんて思ってもしかたなくはある。 なにせヴァネッサの大きなおっぱいが丸みのかけらもない三角錐になってしまっているし、クリスティーンにいたっては女性らしいフォルムを作る努力を放棄したんじゃないかというまな板表現だ。 フィールドも3Dで描画されている。 ワイヤーフレームの壁と天井に囲まれていたダンジョンと違ってパターンこそ少ないもののテクスチャを貼られた街並みは、とりあえず街の雰囲気が楽しめる。 しかし、やっぱり自分の姿を背後から見るTPSで、さらに重力感もなく地に足がついていないブレイクダンスみたいな動きがぎこちなくて、ついつい自分の体を動かすのもそのイメージに引っ張られそうになるから頭を抱えたくなるのもしかたない。 鎧を着た兵士たちはフルフェイスのカブトまで被って個性がなく、道行くモブも類型的でおじさんは典型的なおじさんだし、おばさんもテンプレートのようなおばさんだ。(どいつもこいつも2Pカラーみたいに服が色違いなだけとか、手抜きすぎだろ) などと心の中で悪態をつくのは、レトロゲームオタクではあってもそこは21世紀生まれってことなのだろう。 彼らはここで三泊した。 町についた翌日は八日間の冒険の疲れを癒すための休養日に当てた。 ……のにだ。 クリスは自慢がしたかったのか、クリスティーンを連れて守備隊長や町長のところへ出かけて行く。 クリスティーンは泣き言ひとつ愚痴一つ漏らすことなく公務として受け入れる。「よくできたお姫様だと言いたいよ」「別に、当然じゃないですか? それが王族の勤めでしょう」 ライアンがそういうところを見るとこの世界ではそういうものなのか? なんて「時代と世界が違う」と釈然としないまま納得するしかないレイトである。
last updateLast Updated : 2026-02-05
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青年は価値観の違いを認識する2

「冒険者ライセンス?」「ああ。通常、王国内でモンスターなどから戦利品を得たとしてもそれは王国の財産であるとして、国庫に収める義務がある。しかし、冒険者ギルドに所属する冒険者は国内のモンスターを駆除する報酬としてギルドに利益の二割を収めてあとは私財としていいことになっているのだ」 これまたいかにもRPGな設定だとレイトはクリスから手渡された認識票をしげしげと眺める。「で、俺とヴァネッサとライアンを登録したのか」「ああ」「クリスやクリスティーンは?」 と、問いかけると、クリスティーンがクスクスと笑い出し、クリスは呆れた顔を彼に向ける。「俺は騎士だ。モンスターと戦うのは騎士の義務であって私腹を肥やすためではない」「はぁ、ご立派なことで……で、クリスティーンは?」「馬鹿かお前は。姫に冒険者などさせられるか!」 謎理論である。(じゃあ、ダンジョンでの利益はどうなんだよ?) というもっともな疑問はしかし、ぐっと飲み込むレイトだった。 レイトにもだんだん判ってきたのだ。 この世界の常識が自分の持っている21世紀日本の常識で考えてはいけない問題だってことを。 考慮にいれるなら戦国時代以前の、人の命がとにかく軽かった死生観と「高貴さは強制する」という義務感だ。 クリスはそこに忠実なだけだと解せば、なるほど下々であるレイトたちに尊大でクリスティーンが彼の装備に金を出すのを当然と考えることに理はある。 そして当然、彼はその代償としてモンスターとは積極的に戦うし、命を投げ出してもクリスティーンを守るだろう。 そう考えればクリスに対する嫌悪感も和らぐレイトであった。 とはいえ、クリスティーンを独り占め(と、レイトは感じている)することには嫉妬を禁じ得ない。 翌日の買い出しも、レイトはヴァネッサ、ライアンと出かけることになったのだから、若い男として多めに見てあげて欲しい。 買い物は主に消耗品の補充である。
last updateLast Updated : 2026-02-06
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