数日前に花子が解雇されてからというもの、この家で誰よりも生き生きとしているのは翔だった。以前のように些細なことで癇癪を起こすこともなくなり、率先して琴音の面倒を見るようになっている。両親が仕事で手を離せない今も、翔はテラスを歩き回る琴音のすぐ後ろをぴったりとついて歩いていた。「琴音ちゃん、あんまり遠くに行っちゃだめだよ。この辺で遊ぼうね」琴音は立ち止まり、翔を見上げた。「お兄ちゃん、花子おばちゃんはどこに行っちゃったの?もう帰ってこないの?」「うん、もう来ないよ。すぐ怒るから、パパとママがもう来なくていいって言ったんだ」と、翔は首を横に振って安心させるように答えた。「そっか、よかった!」琴音は嬉しそうに親指を立てた。その愛らしい仕草にくすくすと笑い、翔は琴音の頭を優しく撫でた。彼は琴音を心から愛している。少し離れた部屋の中から、絵理奈はそんな二人の姿を見つめていた。すっかり元の明るさを取り戻した翔の姿に、彼女自身もようやく肩の荷が下りたような気がしている。「あの子、今日はすごく楽しそう。田村さんがいなくなって、本当にホッとしているみたいね」向かいのソファに座っていた瑛司も、絵理奈の視線を追って庭で戯れる子供たちに目を細めた。今の翔の姿を見ると、胸の奥に熱いものが込み上げ、同時に誇らしくも感じる。「翔は本当に強い子だ。これまであいつにどれほどの重圧をかけてきたか、今になって痛感している。すべて俺の責任だ……」「翔くんはただ、あなたのそばにいたかっただけよ。違う?」絵理奈は薄く微笑んだ。瑛司が静かに頷くのを見て、絵理奈はソファの背もたれに体を預けた。ふと、明日が翔にとって大切な日であることを思い出す。数日前から、彼を驚かせるための計画を密かに練っていたのだ。当の本人は明日が自分の誕生日だということすら忘れているらしく、だからこそ夫婦で特別なサプライズを用意することにした。絵理奈は「ねえ」と瑛司に声をかけた。「どうした?」絵理奈は少し躊躇いながら尋ねた。「翔くんの誕生日、盛大にお祝いしなくて本当に大丈夫かしら?せっかくの日なのに、印象に残らないんじゃないかって。あの子、何でも一人で抱え込むタイプでしょう?心の中で寂しがっていないか心配で」「大丈夫だよ、絵理。あいつは派手なパーティーなん
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