空港へ向かう車中、兄妹の間の雰囲気は昨日より幾分和らいでいたが、それでも微妙な沈黙が続いていた。明乃は窓の外を流れていく街並みを眺めながら、複雑な思いに駆られていた。五年ぶりの帰郷に胸が騒ぐ。どんなことが待ち受けているのか、彼女にはわからなかった。明斗は彼女の不安を見透かしたように、「心配するな、家では誰もお前を責めたりしない。父さんも母さんも、ただ会いたがっているだけだ」と言った。「うん」明乃は小さく頷き、少しだけ心が落ち着いた。飛行機が雲を突き抜け、眼下の水南地方は小さなチェス盤のように見えてきた。二時間余りのフライトを経て、弦の塚国際空港(げんのづかこくさいくうこう)に無事着陸した。到着ゲートを出ると、明乃はすぐに迎えの人混みの中に立つ両親の姿を見つけた。五年ぶりに会う父の安藤義男(あんどう よしお)の鬢には白髪が増えていたが、背筋は相変わらずピンと伸び、きちんとした服を着こなし、無表情を崩さぬまま、出口をじっと見つめるその視線だけが、胸中の焦りを物語っていた。母の安藤加奈子(あんどう かなこ)はそれとは対照的で、明乃の姿を見た瞬間、目元を赤くし、足早に歩み寄って娘を強く抱きしめた。「明乃!明乃……やっと帰ってきたのね……ほら、よく見せて……」加奈子は声を詰まらせながら明乃を見つめ、頬を撫でては、「痩せたわね、きっと外でちゃんと食事してなかったんでしょう……」と嘆いた。「大丈夫よ、お母さん。痩せてないわ。最近は二キロも増えたんだから」明乃は鼻の奥がつんとするのをこらえ、笑って加奈子をなだめた。義男も近づき、厳しい眼差しでしばらく明乃を見つめたあと、低く短く言った。「……よく帰ってきてくれた」その一言にすべての感情が込められていた。明斗は傍らでこの光景を見つめ、冷たい印象の口元がわずかに緩んだ。一家は車に乗り込み、安藤家の実家へと向かった。安藤家の実家は西の方の閑静な別荘地にあり、古き良き風情を残した庭付きの別荘だった。車は鉄門をくぐり、緑の木立に囲まれた車道を進み、レンガ作りの三階建ての建物前に停まった。庭の草木は手入れが行き届き、大きな木が枝葉を広げる様は、明乃の記憶そのままだった。「お嬢様、お帰りなさい!」執事の池田(いけだ)さんが笑顔で迎えに出た。彼は明乃が成長するのをずっと見守
Read more