本館で使われるものは、当然ながらすべて最高級の品だ。真由美は名家の出身だし、修も気前が良い。ましてや九条家の実権は今、湊が握っているのだ。本館に住んでいる限り、湊の庇護の下にあるということを意味する。潤と健は、それをあっさり承諾して出て行ったというのか?真由美は笑って、葉月の手を軽くポンポンと叩いた。「まあそう心配しないで。潤はこれから家庭を持つのよ。翔くんもお見合いしてるし、家を分けるのは当然のことよ。そうしないと、将来、翔と潤のお嫁さんたちが来た時に、肩身の狭い思いをさせてしまって、外聞が悪くになるでしょ?」確かに、その通りだ。だが、葉月はどうしても腹の虫が治まらなかった。「敏さんも同意したの?」「もちろんよ。反対する理由なんてないじゃない」葉月は下唇をきつく噛み締めた。控え室では、麗がメイクの真っ最中だった。ただの婚約式なので、それほど高価なドレスは用意しておらず、白いイブニングドレスを一着選び、あとはメイクを施すだけだ。真由美はバッグから一対の耳飾りを取り出し、麗に手渡した。「私と修からのお祝いよ。結婚式の時には、代々伝わる翡翠のバングルもあげるわね。翔と潤、二人の嫁に一つずつ。確か今は、葉月さんが預かっているはずよね?」麗は愛想よく微笑んだ。「ありがとうございます、真由美おば様」真由美がバングルのことを口にしなければ、葉月もすっかり忘れているところだった。今言われてようやく思い出した。確かに、対になったバングルがあった。だがずっと昔に、ギャンブルの借金のカタに取られてしまっていたのだ。今さら出せるわけがない。葉月はハハハと愛想笑いをしてごまかした。「そうそう、結婚式の時に渡すわね」麗は「ありがとうございます」とだけ言った。しかし、葉月からはそれ以上何も言葉が続かない。真由美と修でさえ婚約お祝いを用意したというのに、潤の実の母親である葉月が手ぶらで来たというのか?婚約式に招かれた客でさえ、相応の祝儀くらいは包んできているというのに。真由美は葉月が黙り込んでいるのを見て、息子の婚約者と水入らずで話がしたいのだと思い、自分がここにいては邪魔になるだろうと気を利かせた。「私、ちょっと用事があるから。二人でゆっくり話してちょうだい」そう言っ
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